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6章 第30話 恋

次回は12月5日投稿予定です。

「な!!?」

 アクイラに突き飛ばされた星辰は起き上がると、その惨状に驚愕(きょうがく)した。


「ぐ、グハッ」

 アクイラの腹部にはクスカの爪が突き刺さり貫通(かんつう)している。


「姉様!」


「アクイラの奴……」

 その様にウルラは叫び、ルベルは歯軋りした。二人も一瞬何が起きたか理解出来なかった。


「ふん」

 クスカは伸ばした爪を元に戻し、アクイラを汚い物を払うかの様に突き飛ばした。


「グアッ!」


「な、アクイラ!」

 アクイラは星辰のいる方向に飛んできたため、星辰はサイコキネシスで衝撃をやわらげながらアクイラん体で受け止めた。

 そして、ゆっくりとアクイラの体を地面におろし、上半身のみ抱きおこす様に腕で支えた。


「ウグ、ガハッ!」

 アクイラは口から血を吐いた。腹部の傷は深い。


「なんでこんな無茶を……」

 星辰はアクイラの傷をヒーリングの能力で治癒しながらアクイラを見つめた。


「お、お前が死ぬところを見たく無かった……。ただ、それだけ……」

 アクイラは息も絶えだえに星辰を見つめた。


「僕なんかのために……ごめん」

 星辰の目から涙が(こぼ)れてきた。


(く、あいつが言っている様に、ヒーリングの効果が薄い。僕よりヒーリングの力が強い、ニーナを起こして治癒してもらうか? ダメだ……。決定的な治癒にならない。ソフィーさんのファミリアなら手術する能力ならもしかして……。でも、この傷の人間をテレポーテーションしても大丈夫なのか?)


「あ、アタシなんか、べ、別に気にすんな……。が、ガハッ。こ、ここから逃げろ星辰……。お、お前だけなら……」

 言いながら、アクイラはまた血を吐いた。


「もう、喋らなくて良いよ! これ以上は……」

 その時、星辰の唇はアクイラの唇によって塞がれた。


「急に何を……」

 アクイラが星辰の唇から自分の唇をはなすと星辰は呆気に取られた様にアクイラを見つめた。


「突然ごめん。だ、けど、もう、最後みたいだから……」


「最後って、何を言ってるんだ! 君が死ぬ訳ない!」


「せ、星辰……。好きだったよ、お前の事。か、あ、や、やっと言えた……」

 そう言うとアクイラは微笑んだ。


「アクイラ……」


(ニーナ、お前言う通りだったな。こんな事ならさっさと告白するんだった……)

 アクイラはニーナをチラッと見ると目を閉じた。体の力が抜けた様になっている。


「アクイラ!」

 星辰が声をかけるがアクイラは目を覚さない。


「姉様!」

 その様子を見てウルラが叫び声をあげる。


「ふん。くだらない」


「なんだと!」

 不意に声をあけだクスカを星辰は(にら)んだ。


「なんで小僧を助けたのか、少し興味があって話を聞いていたが恋だの、愛だのくだらないな」


「くだらない? くだらないだと!」


「そうだよ。そんなことで他人を(かば)って死ぬなんてくだらない」


「まだ、まだアクイラは……」

 アクイラの心臓はまだ止まってはいない。


「ヒーリングが効きにくいだろう? 傷が治らないなら、その内死ぬさ。コルム以外は殺すつもりだったから順番が変わってしまった」

 クスカはそう言うとニタッと笑った。


「やっぱり、アクイラとウルラを利用していたのか?」


「利用と言うか遊びだよ。どっちにしろ終わったら殺すつもりだったのさ」


「お前と言うやつは!」


「そんなに(にら)むなよ。怖いじゃないか。まあ君を殺して、終わりにしよう。ヒーリングをかけている君が死ねば、その小娘めもその傷で死ぬ。それで終わりさ」


(アクイラが死ぬ? いや、死なせない!)


「死なせるかよ!」

 その時、星辰の髪の毛が銀色へと変わった。


「銀髪……。コルムの夢に出てきた男……」

 ウルラは妹のコルムが言っていた夢の話を思い出した。アクイラとその恋人と思われる銀髪の男との夢の話を。


「髪の色が変わったからなんだと言うんだ? そんなことなど……。ん?」

 やれやれと言わんばかりのクスカだったが、何か様子がおかしい事に気づいた。


「あれは、アクイラの傷が治って……」

 驚いたことにアクイラの傷が治っていく様をルベルは確認することが出来た。


「な、なんだと。馬鹿な……。何が起きている! いいや面倒だ。このまま、二人共ひねり潰してくれる!」

 クスカが星辰たちに近づいてきた、その時。クスカは何者かに殴られ吹き飛ばされた。


「ぐ、グアはあああ。い、一体何が……。ぐうう、ん? あ、あれは?」

 クスカは驚きで目を見開いた。


「あれはレグルス?」

 破壊されたはずのレグルスが修復し立っていた。ウルラも一瞬、何が起きたの分からなかった。


「あの文字は? 確か、この国の字で『恋』だったか?」

 ルベルがレグルスの胸の文字を確認した。

 確かにレグルスの胸には『恋』の文字が写されていた。




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