6章 第27話 黒い塊
次回は11月14日前後に投稿予定です。
「竜に変身した?」
その巨軀に星辰は目を見張った。
(この野郎、変身型の宇宙人だったか! しかも竜型とは……)
その巨体を忌々しげにアクイラは睨んだ。
「変身型の宇宙人は決して少ない訳では無いが……」
「こんな竜になる宇宙人は少ない?」
「そうだ。俺も初めて見る。銀河ではドラゴニールと呼ばれる。だが、こいつがドラゴニールだったとは……。ちっ、可能性の一つとして考慮すべきだった」
星辰の問いに答えたルベルは、そう言うと自分の唇を噛んだ。
「まあまあ、そう卑下する事は無いよ。ルベル君。仕方ない事だ」
クスカは得意げにルベルに話しかける。
「銀河連邦警察は人口的にドラゴニールを生み出そうとした。その実験で生まれたのが私だ。こう見えても銀河警察には感謝しているのだよ。私にこんな力を与えてくれた事に。私の感覚からすると、多少醜いのが少々癪だがね」
「ち、相変わらずベラベラとうるさい野郎だ」
得意げに自分の事を話すクスカにアクイラはイラつきながら悪態をつく。
「まあまあ、いいじゃないないか。少しだけ付き合ってくれても」
そう言うとクスカは自分のそばで気を失っている男を右手で掴んだ。腕も成人男性を掴めるほどの大きになっている。
「う、な、なんだ。俺はいったい? う、うわあああ!? ば、化け物?」
クスカに掴まれた男は衝撃です意識を取り戻し、叫び声をあげた。
「なんだ。何をするつもりだ?」
その様子にルベルが怪訝な顔をした。
「まさか……。やめろーーー!!」
星辰の制止も虚しく男はクスカの大きく開いた口へと放り投げられた。
「う、うわああああああああぁ!!」
放り投げられた男の絶叫が響き渡たる。次に聴こえたのは咀嚼音と共に人間の肉と骨が砕ける音だった。
「うっ……」
「なんてことを……」
その惨状にウルラは顔を背け、ニーナは口を抑えながら呆然とその様子を見ていた。ニーナだけでなく、その場の全員が呆気に取られていた。
その間、クスカは左手で別の男性を掴もうとしていた。
「やめろーー!」
星辰が右手を伸ばすと男性は吹き飛んでいく。すんででクスカの左手からすり抜けた。
「サイコキネシスか」
竜が星辰をジロリと睨む。
「貴様何をしている!」
ルベルがクスカに向かって怒鳴った。
「何って食事だよ。君たちだって空腹になったら牛や豚を食べるだろう。ファミリアを使ったせいか腹が減ったんでね」
「さっきの人は人間だ!」
星辰も声を荒げた。
「別にいいじゃあないか?」
「なんだと!」
「私はこの姿になると触れた人間の記憶が読める。今の男は人を車で轢き殺して数年の罪だけで出所してきたが、特になんの反省もしてない見たいだったぞ。そんな奴、死んだってどうだっていいじゃあないかね?」
「だったらお前はどうなんだ!」
「私? 私は違うよ。こんな下等生物とは」
クスカはそう言って周りにいる気を失っている人間の何人かを無造作に踏み潰した。
「おい、この、やめろと言っている!」
星辰がクスカを鬼の形相で睨むと、その瞬間サイコキネシスを発動した。
「紅鏡星辰のサイコキネシス。なんて力だ」
星辰のサイコキネシスの威力にウルラは
「ふ」
だが、しかし竜になったクスカは微動だにしなかった。
「サイコキネシスが効かない!?」
「今の私自身にはサイコキネシスは効かないよ。そう言う生物も銀河にはいると言うことだ。一つ利口になったね」
(今の星辰君のサイコキネシスは並の威力じゃなかった……。これがドラゴニールの力の一端……)
ニーナは自分が恐れ慄いていることを感じた。
「それにしても、人間を踏み潰しすぎたかな? いや、すまないね。この姿になると少し抑制が効かなくなるんだ。許してくれたまえ」
クスカの周辺は踏み潰された人間だった物が転がっていた。
「全員、ファミリアで攻撃しろ! デネブ! シャボンアタック!」
「アルタイル! エクスプロージョン!」
「グラキエース! フリージングブレイド!」
「レグルス! 熱血モード!」
弱っているウルラ以外の四人が己のファミリアに攻撃を命令した。
デネブのシャボン玉の渦が、アルタイルの巨大な炎が、グラキエースの冷気の刃がクスカに向かっていく。
レグルスもまた熱血モードに変形しクスカに突撃していった。レグルスの手には日本刀型の剣が握られていた。
レグルス以外のファミリアが放った攻撃がクスカに直撃し爆音と共に、あたりが見えなくなるほどの煙が舞った。
レグルスは煙の中に突入し斬撃を繰り出した。刀がクスカに当たったのだろうか。金属音が鳴り響いた。
だが次の瞬間。
煙から光線が放たれた。
「デネブ!」
光線はデネブに直撃しデネブは大破した。
「今のはルベル君のファミリアかな?」
煙が消えクスカが姿を表す。レグルスはクスカの首のあたりに刃で斬りつけていたが、クスカは意に介して無いようだった。
「ふん」
クスカはつまらなそうにレグルスを右腕で突き飛ばした。
「レグルス!」
星辰がレグルスの元へと向かう。動けるがダメージは思ったより深い。
「君たちのファミリアの攻撃なかなかのものだったよ。だが私を倒すには至らない様だね」
「効いてない?」
ニーナが驚愕の声をあげた。
「フフフ」
クスカは不敵に笑うと両手からそれぞれ光線を放った。二つの光はそれぞれアルタイル、グラキエースに直撃した。
「アルタイル!」
「あ、グラキエース……」
破壊の光により、アルタイルとグラキエースは破壊された。
「ドロースとの戦いで、君たちは何も学ばなかったのかな? アッハッハッ!」
勝ち誇った様に高笑いするクスカ。
「みんな……」
流石のこれには弱った様に仲間を見渡した。
「もう終わりだよ」
クスカは一歩、星辰へと近づいた。
(サイコキネシスは効かない……。レグルスで攻撃する? いや、さっきの攻撃が効かないなら意味は無い。だったら、みんなを連れて逃げるか……。でも、こいつが、それを見逃すか?)
星辰が考えをめぐらすが、しかし妙案が、浮かぶことは無い。
「クックックッ。無駄だよ。打開できる手などあるまい……。なんだ?」
嫌味な笑いを浮かべたクスカだが、何を感じた。妙な音がするのだ。
「空から音が? あれは?」
星辰たちも空からの音に上を見上げた。何か黒い物体が空から近づいてくる。
「何だと!」
驚愕するクスカが気がついた時には遅かった。その黒い物体は恐ろしい勢いでクスカへとぶつかり、周辺に衝撃音が鳴り響いた。
「ぐっあああああ!!」
衝撃音と共にクスカは吹っ飛ばされ近くの建物に追突する。瓦礫となった建物がクスカに降りかかる。
クスカを吹き飛ばした黒い物体が立ち上がる。人間。と言うより人型と言った方がしっくりくるかも知れない。
「お前は……」
その人型を見た星辰は流石に驚いた。
「久しいと言うべきか? 星辰」
それはかつてテーゲ星で星辰と戦った、古強者のサイボーグの傭兵シルウァーだった。




