6章 第25話 格好悪い
次回は10月31日前後に投稿予定です。
「こいつの話なんぞ聞かずに、最初からそうすれば良かったんだ」
星辰の逮捕の宣言を聞いたルベルは、そう言うと短槍を構えた。
「……ごめん」
「ふん。まあ良いがな」
星辰の謝罪を聞いたルベルは、そう言うとほんの少しだが微笑んだ様に見えた。
(星辰君は同じ実験体として話を聞きたかったみたいね)
そのやりとりを見たニーナが推測した。星辰からすれば、それはどうしても聞きたかったことなのかも知れない。
「少し良いかな」
星辰とルベルのやりとりにクスカが割って入ってきた。相変わらず紳士ぶった態度ではあるが、星辰の言葉が不快だったらしく、顔に多少不機嫌さが出ていた。
「私が格好悪いとかくだらないとか、言われた様な気がするんだが、聞き間違いかな?」
「なんだ貴様、耳が遠いのか?」
ルベルが星辰の代わりに答えた。
「君には聞いてないよ。ルベル君」
クスカはルベルを睨みつけたが、ルベルは意に介して無い。
「お前が格好悪いくだらない奴だと言ったんだ」
星辰がクスカを真っ直ぐ見つめながら、ハッキリとした口調で言った。
「ふふふ。聞き間違いでは無かった様だね。一応、理由を聞いても良いかな?」
「お前は本来なら道を踏み外さずに正しく生きれたはず。だけどお前は自分から犯罪者になった。そんな奴、見っともない。くだらない奴だ」
「なんだと。何も知らない小僧が! 私は優しさで、お前を仲間に誘っているんだ。いずれ銀河連邦警察はお前を物として扱うだろう。だから私は……」
「たとえそうだとしても僕はお前の様にならない」
クスカの話を遮る様に星辰はキッパリと言った。
「それにお前も星辰を物として見てる様に俺には見えるがな」
「ルベル……」
クスカに反論するルベルを星辰は、ほんの少しだけだが驚いた様に見た。
「おい。もう本当にここら辺で良いだろう」
今度はルベルが星辰を見ながら言った。
「そうだね。さっきも言ったけど、クスカお前を逮捕する」
「下手に出ていたらつけ上がりおって……」
「おっと、紳士ヅラはもう終わりかなクスカさん?」
ルベルが揶揄する様に言った。
「ガキどもが……。やはり、お前らは当初の予定通り嬲り殺しにしてくれる」
そう言うとクスカは身構える。
「来るぞ。星辰」
「分かってる。来い。レグルス! サモン・ファミリア」
星辰の声に反応してレグルスが現れた。同時にルベルも自身のファミリアであるデネブを呼んでいる。
「行けレグルス! クスカのファミリアを破壊しろ!」
人型のレグルスがクスカのファミリア、マニュピレイトに襲いかかった。
「ふん。マニュピレイト」
「イエス。マスター」
クスカの命令を受けたマニュピレイトから管の様な物が伸びてレグルスに差し込まれた。途端にレグルスの動きが鈍くなる。
「マニュピレイトは操る能力。人も動物もファミリアもだ!」
「くう……。レグルスの動きが鈍くなった?」
レグルスは明らかに動きが鈍くなっている。
「他のファミリアなら、既にマニュピレイトによって操られている。動きが鈍いくらいですんでいるのは驚嘆に値する事だよ」
「デネブ。シャボンカッター!」
マニュピレイトから伸びている管はデネブのシャボンカッターで切り裂かれた。レグルスが自由になる。
「ルベル!」
「戦い方が直線的すぎる。今のは、レグルスでも危うかったぞ」
「ごめん。ありがとう」
(やはり、こいつのファミリアは迂闊近づくのは危険だったな)
「ふふ。しかし、どうするかね。レグルスは強力だが、近接戦闘タイプ。君のデネブは色々出来る様だがパワー不足の様だ。小娘共のファミリアも当てになるかどうか?」
ルベルの思考を読んだ様にクスカが話しかけてきた。
「……」
「はは。それにまこまごしているとこうだ!」
クスカが得意げな眼差しを星辰とルベルの二人に向ける。いつの間にか大勢の人間が星辰達を取り囲んでいた。
「これは操られてる人たち……」
「ち、ワンパターン野郎め……」
ニーナは呟き、ウルラは苦々しげに吐き捨てた。
「確かにワンパターンだが……」
「この地球人共にお前たちを嬲り殺しにさせよう。クク、なかなか面白そうな余興じゃあないか。まさか犯罪者とは言えファミリアで殺したりしないだろうね。銀河連邦の警察官が」
クスカはそう言うと右手を上げた。右手を下げた時に、この人間達に襲われるだろう。
(ち、なんてムカつく野郎だ)
(アクイラやウルラちゃんが毛嫌いしてたのも良く分かるわね)
クスカの言い様にルベルもニーナも怒りが込み上げてきていた。
「そう言うお前のファミリアも動物と犯罪者しか操れないらしいね」
「なんだと」
星辰の言葉にクスカの動きが止まる。
「お前はファミリアを完璧に使いこなせていない。お前が操れるのは犯罪者だけだ。他の人は操れないんだ」
(そうか。星辰君のおじいさんもお姉さんも無事なのは、そう言う事……)
ニーナが星辰の言葉を聞いて腑に落ちた。
「だから、どうした充分な力じゃあないか。私は地球中にいる犯罪者共を操っている」
クスカが右手を下げようとする。
「いや、もうそれも終わりだ!」
「何、負け惜しみかね。いや、なんだ?」
その時、クスカは何か妙な気配を感じた。
「アルタイル。ファイア!」
「イエス。マスター」
何処ならともなく声が聞こえてきた。
「何!」
クスカが気がついた時には、すでにケリはついていた。マニュピレイトに炎の玉が直撃し、マニュピレイトだった物は地面に落ちた。
「残念だったなあ。クスカさんよ。アンタの自慢のファミリアは私が破壊させてもらったぜ」
空中に一人の少女が浮いている。アクイラであった。




