6章 第17話 小さな太陽
次は9月5日に投稿予定です。
「さあさあ、鬼さんこちら……」
ラートルの声がどこからともなく聞こえてくる。
アクイラは周辺を見渡す。しかし、ラートルがどこにいるのか分からなかった。
「ちっ」
ラートルは視覚にはいない。アクイラは悔しそうに舌打ちした。
「ふふ。探してる、探してる。さあ、どこかしら?」
「こいつ……。なめやがって!」
頭に血管を浮きだたせながらアクイラは血走った目で周りを見ながらラートルを探し始めた。
「ふふ。それだけの力があるのに、なぜ今まで使わなかったのかしら? 使ってたら、もっと事は簡単だったはず?」
「ふん。それはお前もだろ?」
「あら、一本取られたかしら? でもあなたが今まで変身しなかった理由。変身した姿が醜いと思っているから? それもあるけど最大の理由はシンプル。その姿になれるのは何分くらい? 5分、10分?」
「……」
「沈黙すると言う事は図星かしら? さあ、タイムリミットが近づいてるわよ」
(ちっ、影に隠れて持久戦に持ち込む気だな。癪だが、こいつの言う通りこの姿は燃費が悪い。ガス欠になる前にケリをつけないとな)
「ただ、隠れているだけでやり過ごせると思ってるなら大間違いだ」
アクイラは、そう言って一つの木陰に近づいた。
そして、その木陰で暗くなっている地面を掴んだ。そして、そのままラートルを引き抜いた。
「な!? こ、これは……」
動揺するラートル。今度はアクイラがラートルの首を掴んでいる。
「見っけ……。じゃあな!」
ラートルを離すと、アクイラは振りかぶって持っているバットでラートルを殴った。
「あ、あが、あああああ!!」
頭を殴られラートルは痛みで絶叫した。後ろに吹っ飛ばされる。並の人間だと致命傷だろう。
「そ、そうか……。半分、鳥……。鳥類と同じで、目が良くなっているのね。それで……。本当に過小評価しすぎていた……。素晴らしいわ……」
「ち、浅かった」
「ふふ……」
また、ラートルの周りを影が包み込み消えた。
「ち、またそれか……。ワンパターンだな」
「そう言わないで、他に能がないものでね……」
また、どこからか聞こえてくるラートルの声がした。だが……。
「!!」
アクイラの影からラートルが現れアクイラを襲った。手には片手用の剣が握られている。形状は曲刀である。
しかし、その斬撃をアクイラは持っているバットで受けた。
「おしいわね……」
「もう、持久戦はやめか?」
鍔迫り合いの中、アクイラはラートル聞いた。
「あなたのガス欠を待つ前に私が殺されそうだからね」
そう言うとラートルは一度、アクイラから距離を取り、そして、影の中へと消えた。
「影に隠れながらヒットアンドアウェイね。つくづく厄介な能力だな……」
周りを見渡しながらアクイラは少し呆れた様に言った。
「今の貴方に、身をさらすのは危険だけれども、隠れているのはもっと危険だと判断したわ」
ラートルの声は聞こえても、相変わらず姿は見えない。
「そうかい。でもよ。お前の姿をさらす方法はまだあるんだぜ」
「え?」
「アルタイル。太陽を産み出せ」
「イエス。マスター」
アルタイルがひとつの炎を作り出す。だが、今までの炎とは何か違う。創り出された太陽がアルタイルの頭上に上り周りを照らす。
「なんですって?」
ラートルの驚愕の声が聞こえた。
「そら、影が消えて来たぞ」
小さい太陽に照らされてアクイラの近くの影は消えていく。
「そんな、小さいとは言え太陽を……」
影が消えてラートルが姿を現した。ラートルが驚くのは何回目か。
「アタシの奥の手の奥の手だ」
アクイラの姿が消えた。一瞬でラートルの後ろに立っている。
「な、しまった……」
アクイラに気が付いたラートルが後ろを振り向いた。だが、もう遅かった。
「じゃあな、ラートルさんよ。あばよ」
アクイラはそう言ってバットをフルスイングした。
「ぐ、あああああ!」
バットはラートルの腰のあたりに当たって、ラートルはふっ飛ばされた。
「おい、アルタイル。そいつに太陽をぶつけろ」
「イエス。マスター」
いつの間にか吹っ飛んだラートルの対角線上にいるアルタイルが、生み出した太陽をラートルへと発射した。
「そ、それは……」
「ふん。終わりだな。ただの炎じゃあねえ。わかるよな」
「う、あ、あああああ!!!!!!!!!!!!!」
小さい太陽は吹っ飛んでいるラートルへと直撃した。ラートルが太陽の炎で燃える。
「こ、こんな。すごいわ……。油断したつもりは無かったのに」
自身を燃やす炎の中、ラートルは言った。
「そうかな? アタシの事をよく調べてなかっただろ?」
「そうね。情報収集を怠った報いと言う事ね。ふふ。そう、甘くみた私の負けね。ああ、あああああ……」
ラートルは激しく燃えて、消し炭となって消えていった。
「はあ、はあ……。なんとかなったな……。随分、体力を消耗しちまったが……」
アクイラは変身を解除して、つらそうにその場に膝をついた。




