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6章 第12話 ゲーム感覚の殺しあい

次回の投稿は7月31日前後の予定です。

「ちっ、この辺境の惑星までご苦労なこった」

 ロカが吐き捨てる様に言った。


「ロカ、援軍は?」


「微妙なラインだ。しかし、お前が数日前に連邦警察に頼んで援軍を要請したときは本当に数日中にそんな事態なるのかと思ったものだがな……」


「情報がありましてね」


「しかし、どこのどいつが地球に来た?」


「多分……」

 月影がロカにどの宇宙人が来たのか話をしようとした時。庭園に駆け込んでくる影があった。


「ねえ、先生!」

 影の一つは星辰だった。ルベルとニーナも星辰の後ろからついてきた。


「星辰君」

 呼ばれた月影が星辰の方を向く。ロカも月影に話しかけた星辰を見た後にルベルを確認した。


「ちょっとテレビ見て!」

 星辰はそう言って走っていく。月影たち四人もそれについて行った。

 テレビのある部屋に入ると、そのテレビに一人の男が映しだされている。


「こいつは、もしかして……」

 ロカが画面の男に見覚えがあるのかテレビに見入った。


「地球の諸君、初めまして。私はクスカと言う。君たちの概念で言うところの宇宙人だ」

 画面には、いかにも私は紳士です言わんばかりに気取った男が映し出されていた。


「やはり、この男か来たのか……」

 月影が呟いた。


「こいつがアクイラの妹のコルムをさらったクスカ……。これって、もしかして全世界に放映しているの?」

 星辰は周りの大人たちを見て聞いた。月影はコクっと頷いた。


「一見、紳士ぶっているが、なるほどいけ好かない顔をしているな」

 ルベルがテレビ画面を見ながら胸糞悪くなったのか、苦々しげに言った。


「さて私がこの地球に来た理由だが、地球には特別な鉱石があるとわかったのだ。なので、君たちと取引をしに来たんだ。はるばる銀河の向こうからね」

 テレビ画面の紳士ぶったいけ好かない男が話を続ける。ご親切に自分が地球に来た理由を説明してくれた。


「やはり……」


「こいつが言ってる特別な鉱石って、前に先生が言っていたオリハルコニウムとアダマンニウムのことだよね?」


「そうでしょうね。コルムの能力で分かったのか、それとも自力で調査して知ったのかどうかは分からないですが……」

 星辰の疑問に月影が答えた。


「しかし、こいつが自分でわざわざ来るとはな……。どちらかと言うと、人を使うタイプのやつだろ?」


「それだけ地球を傘下に収める利権は巨大と言うことでしょう。部下任せに出来ないほどの……。アルゴル内部での出世争いに焦れたと言う線もありそうですね」


「さっき言っていた情報か?」


「ええ、そんなところです。それと、星辰君」


「はい」

 呼ばれた星辰が月影を見る。


「この男が地球と一緒に狙ってくるのは君です」


「おとりだな」

 ルベルが星辰の横に来て話しに割り込んできた。


「うん。先生やルベルの言う通り、こいつ、このまま僕を狙ってくると思う。それに、ルベルが言った通り紳士ぶってるけど、僕もこいつがいけ好かない」


「ふん。めずらしく意見があったな」

 ルベルが星辰を見て、少しだけニヤッと笑った。


「待ってください。クスカがファミリアを……」

 その時、ニーナが画面を指さした。確かにクスカがファミリアを召喚している。


「なんだ、こいつ何をする気だ!?」

 ロカが画面を見ながら少し怒った様に怒鳴った。


「原始人の君たちが初めて見る機械かな? これはファミリアと言う機械だ。この機械は個体によって使用できる能力が違う。このファミリア、マニュピレイトは生物を操る能力」

 クスカはそう言うと、ファミリアを起動させた。


「この星には五十億、六十億とも言う人間が住んでいるらしいね。奴隷として管理するにはちょっと多すぎる。少し数を減らさせてもらうことにした。そこで、このマニュピレイトの出番だ。この星のギャングやマフィアなどの犯罪者や、今後犯罪を犯しそうな者を操る事にしたよ。このマニュピレイトで犯罪者どもに殺しあいをさせる。特に犯罪者っていうのはどこの星でも、反抗的で面倒でね」


「……」

 一同は汚いものを見る様に画面のクスカを見ている。


「犯罪者どもが殺しあって減ってくれたら君たちも住みやすくなるだろう? どうかね? 私からの友好のプレゼントだ。まあ、そいつらクズどもの殺し合いに巻き込まれて死ぬ善良なものもいるだろうが……。まあ、そこは運命だっと思って諦めてくらたまえ。では」

 クスカが、そう言うとテレビ画面から消えた。


「こいつ!! 自分のことは棚に上げて何を言ってる!」

 星辰が画面にいるクスカを怒気を含んだ目で睨みつけた。


「ドロースと同じ殺戮や闘争を楽しんでいる……」


「ゲーム感覚で虐殺を行うつもりの様だな。クソにもほどがある」

 ニーナはドロースの事を思い出した様につぶやき、ルベルが吐き捨てる様に言葉を吐いた。


「取引と言っておきながら、地球に住む人たちを奴隷として扱うつもりの様ですね……。卑劣な男だ」

 月影はおぞましい物を見たかのように眉間にしわを寄せている。


「ち、絵にかいたような悪党だな。胸糞が悪い。しかし、エバンここは……」


「皆さん!」

 ロカが月影に話かけようとした時、ソフィー、桜、シルビア、エレナの護衛メイド四人が星辰達のいる部屋に飛び込んできた。四人とも珍しく慌てている様子だった。


「どのチャンネルでも良いので、テレビをもう一度着けて見てください!」

 ソフィーの言葉に従い、一同は再度テレビを見た。どのチャンネルもニュース特番になっている。

 画面には殴り合う、殺し合う人々が映し出されていた。


「もうこんなことになってるなんて……」

 ニーナはそう言うと絶句した。


「確かにあの男が言っていた様に、暴れているのは元犯罪者や犯罪者予備軍と呼ばれてる人たちの様です」

 シルビアが月影に報告した。


「ねえ。先生」

 その様子を見ていた星辰が月影に話かけてきた。


「なんでしょう?」


「せめて紅鏡家の周辺にいる人たちだけでも助けに行こう」


「星辰君。しかし……」

 星辰の申し出に少しだけ躊躇する月影。


「星辰君。このパニックの中だと、万が一、君を守り切れない可能性もある」

 ロカが月影の気持ちを代弁する様に言った。


「先生やロカさんの言ってることも分かる。でも、あそこにはきっと巻き込まれて助けを求めてる人がいる。その助けを求めてる人を見捨てたら、それは警察官じゃないよ」

 星辰はそう言って、まっすぐ月影を見ている。


「それに、もう僕は一人でも大丈夫」

 その背の小さい少年は、そう言って少し胸を張った。


「……分かりました。君の言う通りです」


「そうだな。星辰君に気づかされたよ。俺達は銀河連邦の警察官だった」

 星辰の言葉は大人二人に何かを思い出させた様だ。


「じゃあ……」


「はい。ここは星辰君の言う通り、パニックに巻き込まれている人を救助しに出撃しましょう」


「はい!」

 月影の言葉に、星辰は敬礼で答えた。少年らしい元気な声だった。

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