6章 第10話 会いたい
次回は7月16日投稿予定です。(週一くらいの投稿になります。すみません)
「……」
「ねえ、姉さま?」
アクイラが考え事をしているとウルラが話かけて来た。
「なんだよ?」
「あのコルムが言っていた銀髪の戦士ってさ、本当に姉さまの恋人になる人なんじゃあないかな?」
「な、なんでそうなるんだよ? ただの夢だろ……」
「でも、コルムが見た夢だよ」
「……コルムの予知夢だってのか?」
「うん。コルムはA級のエスパーだ。ただの人間じゃない」
「まあ、そうだがよ。だが、コルムの能力は千里眼のみのはず……」
「最近になって、予知夢の能力が覚醒したとか? コルムには、その素養もあると思うけど……」
「まあ、予知夢だとして、そんな出会った事も無い銀髪の男が恋人って言われてもピンとこねえよ……」
そう言ってアクイラは、頭を少し掻いた。
「そう……。それで話は変わるけど、あの紅鏡星辰と組んでコルムを助け出すって話、本気なの?」
「ああ。ドロースと戦って良く分かった……。やっぱり、あいつらは悪党なんだ。他人なんか、なんとも思っちゃいない。ましてや、約束を反故するなんて屁とも思わないだろうな」
「それは私も薄々思っていたけど……」
「今は星辰と敵対してるフリをして、逆に星辰と組んでコルムを取り返すんだ。そっちの方が、可能性はあると思ってる」
「あの子……。あの星辰は信用できるの?」
「クスカやドロースより、はるかにな」
「随分、あの子を信用……。いや、信頼してるんだね?」
「あいつとレグルスの力を目の前で見たからな」
「ふーん。それだけで、そんなに信頼できるものかな?」
ウルラがアクイラをジト目で見てる。多少、姉をからかっている雰囲気だ。
「なんだよ? 何が言いたいんだよ?」
ウルラの言葉にアクイラは怪訝な顔をした。
「信頼してるのは、あの子の力じゃだけじゃあないよね?」
「おい。だから、何が言いたいんだよ?」
「テーゲ星で、あの子と何があったの?」
「ああ? 何もねえよ」
「そうかな? テーゲ星から帰ってきてから変だよね? あの子が好きになったとか?」
「な、なんでそうなる!」
アクイラはウルラの疑いを否定した。だが、自分でも、顔が赤くなるのを感じた。
「図星なんだ……」
「ち、違う! あ、あんな、チンチクリンを好きになる訳ない!」
アクイラはさらに否定する様に横を向いた。しかし、言葉と表情が伴っていなかった。
「本当に? 何かあったんじゃないの?」
「な、何にもない! ある訳ない!」
さらに顔を真っ赤にして否定の言葉を口にするアクイラ。
「あ、そう。別にどっちでもいいんだけど」
ウルラはこの話題を意外とあっさりと打ち切った。
「じゃあ、聞くなよ……。全く……」
アクイラはどっと疲れた様にため息をついた。
「まあ、そこまで言うなら姉さまに従うよ。確かに、あの星辰とファミリアを捕まえるのは骨が折れそうだしね。だったら確かに、あの星辰と組んでコルムを助ける方針に転換した方が、可能性はあるかも知れない」
「ああ。なんとか時間を稼げばチャンスはきっとある」
「うん」
アクイラの言葉にうなずくウルラ。
「そう、チャンスはあるはずだ……。星辰と一緒なら……」
「星辰と一緒なら? やっぱり、そうなんだ……」
「ち、違う。これはあいつの力を利用すればって意味で……」
「まあ、そう言うことにしておくよ」
ウルラはそう言うとちょっといたずらっぽく微笑んだ。
「ちっ、違うってのに」
アクイラはそう言って、また一人考えごとに耽った。
(そう言えば星辰は今頃、どうしてるんだろうな……)
アクイラは気が付くと星辰の事を考えている。最近、特にそうだ。いつの間にか星辰のことを考える時間が多くなった。
(そう言えば、ニーナが言ってたな。アタシが星辰の事を好きだと……。ウルラの奴も、そう感じたらしいし……。傍目からだとそう見えるのか?)
相変わらずアクイラは自分の気持ちが何なのかつかみきれてなかった。
(分からない……。ただ、気が付くと星辰の事を考えてる……。これが好きってことなのか?)
「姉さま?」
アクイラが考え事をしていると、ウルラがアクイラの肩をつかんでほんの少しだけ体をゆすって来た。
「ん? また、どうした?」
それに気づいてウルラを見るアクイラ。
「どうしたって、ずっと話かけてるのに気づかないから……」
「あ、ああ、そうだったのか。悪い」
「もう、しっかりしてよ。ただ、クスカの最後の言葉も気になるって話」
「あ、ああ? あの面白いことが起きるって話か? まあ、ろくなことじゃないことは確かだろうな……」
「そうだね。油断しないで」
「分かってる」
(ウルラの言う通りだ……。本当は無償に星辰に会いたい。ただ、会えないだけなのに、不安な気持ちになる……。ちくしょう……。ずっとこうだ……。どうすれば、この不安な気持ちを消せるんだ?)
アクイラは考えたが結論は出ない。
結局どうすればいいのか分からないまま、アクイラはその苦しい様な切ない気持ちを抑え込んだ。
彼女には、それしか出来なかった。




