6章 第9話 少女の見た夢
次回は7月8日投稿予定です。
星辰が月影から自身の出生に関する話を聞いていた頃。
アクイラの宇宙船にて、アクイラとウルラは通信にてアルゴルのクスカに捕らわれている妹コルムと会話していた。
「そうか。体調は問題ないんだな?」
アクイラが心配そうにコルムに聞く。
「もう、会うたびにそればっかり。私は大丈夫だよ。アクイラお姉ちゃん」
コルムはアクイラに向かって子供らしく拗ねる様な表情で答えた。
「ならいいんだ……」
「コルム。今日は随分機嫌がいいね? 何かあったの?」
次にウルラがコルムに聞いた。
「うーん。最近、夢を見るからかな?」
「いい夢?」
機嫌の良さそうなコルムの問いにウルラも興味があるらしい。
「アクイラお姉ちゃんの夢」
「アタシの夢?」
今度は、アクイラが少し意外そうに聞いた。
「そう。今より大人になってる、アクイラお姉ちゃんが出てくるの」
「ふーん。大人になったアクイラ姉さまの夢ね。どんな内容なの?」
「えーと、大人になったアクイラお姉ちゃんと男の人が出てくる夢」
「お、男だと?」
「へえ、どんな男?」
ウルラが興味深そうにコルムにその夢に出てくる男の事を聞いた。
「おい、ウルラ」
照れくさそうにアクイラがウルラを止める。
「姉さま。いいから。興味ある。ねえ、コルム教えてよ?」
「お、おいってば!」
「そうだな……。 背は大人になったアクイラお姉ちゃんよりずっと大きくて、体格も結構ガッチリしてるかな? いかにも戦士って感じだよ。そうそう髪は長い銀髪なんだ」
「背は高くて体格も戦士タイプの長い銀髪の男ね……。ふーん」
コルムの話を聞いたウルラは少し面白そうにアクイラを見た。
「な、なんでアタシを見るんだよ。夢の話だろ」
「それで夢の中でねアクイラお姉ちゃんはすごい幸せそうに、その男の人と話をしてるんだよ」
「そ、そうなのか……」
アクイラの顔が少し赤くなる。
「へえ、それは確かにいい夢かもだね」
「うん。そうでしょ。最近、その夢をよく見るの。夢に出て来た人は、きっとアクイラお姉ちゃんの恋人になる人だよ」
コルムは本当に機嫌がよかった。
「こ、恋人? そ、そんな訳が……。ま、まあ、その話はとにかく元気そうで良かった……」
コルムの恋人と言う言葉にドギマギしながらもコルムの様子にほっとした様子を見せるアクイラ。ウルラもアクイラと同じ様にホッとしている。
「……せっかくの水入らずの話の最中に失礼するよ」
姉妹の会話の途中で回線が割り込んで画面に別の人物が表示された。
「クスカ……」
ウルラが唇をかむ。
「ふん。本当に野暮な野郎だ」
アクイラも呆れた様に画面越しのクスカを少し睨んだ。
「非礼は詫びよう。ただ聞きたいことがあってね」
クスカは紳士ぶった様に話をする。この男はそう言う芝居かかったところがある。紳士ぶっていて本性は悪党である。
「ふん、なんだよ?」
「アクイラ君、数日音信不通だったが、どこに行っていたのかね?」
「星辰を捕まえるための情報収集だよ。別に文句はないだろう?」
「そうかね……」
(あのラートルって女、やっぱりクスカにちゃんとした報告をしてないらしい。相変わらず何が目的か分からないが……。少し癪だが、ある意味助かったな)
「いやなにアルゴルが支配していた、テーゲ星が深紅の秩序の手に落ちた」
「それはお気の毒様。だけど、それと私たちに何の関係があるの?」
ウルラが少し機嫌が悪そうにクスカに質問する。
「ドロースが深紅の秩序の頭のユーラーに銀河の魔女の力を奪われて殺された。その深紅の秩序の砦にアクイラ君。君に似た少女がいたとの話だがね……」
「テーゲ星の人口は知らねえが、それこそ億単位でいるよな? 銀河単位でならアタシに似ている人間なんぞ山ほどいるだろ?」
「深紅の秩序に力を貸していたとか?」
クスカはアクイラの話を少々無視して話を進める。
「だ・か・ら、一つの星に五万と人間が住んでるんだ。アタシに似た奴がいたってだけで疑われたんじゃたまらないね」
「アルゴルの塔を落とす手助けをしていたのではないのかね?」
「わざわざ遠いテーゲ星にいって、なんで深紅の秩序に手助けするってんだよ?」
「さあね。ただ、セイシンと呼ばれる少年も深紅の秩序の砦にいたと言う情報があるが……。これは偶然かね?」
「何回も言わせるな。広い銀河じゃ、同じ背格好の似たやつは沢山いるのさ」
「ふむ」
そう言ってクスカは少し何かを考えこんだ。
「ふん。もう話は終わりで良いか?」
「そうだな。まあ、腑に落ちないところもあるが……。まあ、いいだろう」
クスカは、この話を打ち切った。
(こいつの弱点は詰めが甘いところだ。まあ、ドロースにそこまで情がなかったんだろうな)
「まあ、君たちの健闘を祈るよ。そうそう……」
「なんだよ?」
「数日中になるが、地球で面白いことが起きるかもしれない」
「地球で面白いこと?」
ウルラが怪訝そうに聞く。
「まあ、見ているがいい? 悪党稼業も順調で暇なのでね。ちょっとした暇つぶしだ」
「暇つぶし? ふん。ろくなことじゃあなさそうだな……」
アクイラが、吐き捨てる様に答えた。
「ふふふ。まあ、そう言わずに。じゃあ失礼する」
クスカがそう言うと通信は切れた。
「ふん。もう、出てくるな」
ウルラが切れた画面に少し怒鳴る様に言った。
(面白いこと? あの悪党が考える事だ。ろくなことじゃあねえな……)
アクイラは嫌な予感を感じていた。




