6章 第2話 二人の仲
次回は6月14日投稿予定です。
「う、ううん……」
ドロースの戦いの後、アルゴルの塔の前で倒れた星辰が目を覚ました。場所はベットの上である。
「星辰!」
アクイラが星辰の顔を見て喜色を浮かべる。
「アクイラ? ここは……」
「深紅の秩序の砦の医務室さ」
「砦の医務室?」
星辰は状況が少しだけ呑み込めていない様だった。
「お前はあの後、アルゴルの塔の前で倒れたんだ。それで、いったん飛空艇に乗せて、ここまで運んだんだよ」
「そう」
「倒れた星辰君を飛空艇の医務室までアクイラを運んだんです」
アクイラの横にいたニーナが言った。
「そうなんだ。ありがとう」
星辰が上半身だけ体を起こしてアクイラに礼を言った。
「べ、別に、礼なんか……」
「あ、そうそう、飛空艇の医務室から、砦の医務室も、アクイラがずっと星辰君に付きっ切りだったんですよ。」
「そうなの?」
「ニーナ! よ、よけいなことを言うな!」
アクイラの顔が段々赤くなる。
「ふふ」
アクイラの様子を見て、ニーナがいたずらっぽく笑った。
「アクイラも疲れているはずなのにごめん。でも、本当にありがとう」
「別にいいよ……。寝ていたのは一日程度だしな」
「じゃあ、私は頭領に星辰君が目を覚ましたことを報告していきますね。二人の邪魔しちゃ悪いし」
「邪魔?」
星辰がニーナを不思議そうな顔で見る。
「おい、ニーナ本当によけいなこと言うな!」
アクイラが顔を真っ赤にして怒鳴る。
「ふふ。じゃあ……」
ニーナは怒鳴るアクイラを無視して医務室を出て行った。
「僕、丸一日も寝ていたんだ……。そう言えば、ルベルはどうしてるの?」
「あいつは星辰を医務室に運ぶなり、もういる必要は無いって言ってどっか行ったぜ。まあ、砦のどこかにいるだろ」
「なんかルベルらしいね。でも、元気そうなら良かった」
「こんな時も他人の心配かよ。なんだか、お前らしいな……」
「そうかな?」
「そうだ」
「そうかも。ふふ」
「何が可笑しいんだ?」
「ごめん。でも、アクイラとこんな風に仲良くなるって不思議だなと思って」
「え? まあ、そうか、そうだな」
また、アクイラの顔が赤くなっていく。
「? アクイラ顔が赤いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫だ。問題な……。あっ」
アクイラはそう言うと、その場で倒れた。
「あ、本当に、大丈夫?」
星辰がベットから降りてアクイラを抱き起した。
「だ、大丈夫だって……」
星辰に抱き起されるとアクイラの顔はさらに真っ赤になった。
「でも、ものすごい顔が赤いけど……」
「こ、これは、お前が……。うぅ」
アクイラは実際に眩暈を起こしており立つことは出来なかった。
「もしかして、ずっと僕を見てくれていたの?」
「それは……」
星辰に見つめられてアクイラの目が泳いだ。
「アクイラの方も、休まないと駄目だよ。ちょっと待って」
星辰はそう言うと、アクイラを抱えようとしたが……。
「ううん。結構重い……」
小柄な星辰には、アクイラは持ち上げられなかった。
次の瞬間。
「あいったあ!」
星辰はアクイラに思いっきり頭を殴られた。
「重いって言うな! 他の女とそんな変わらない体重だっての!」
「ご、ごめん。でも、君の方が体が大きいし……」
「おい、言い訳するな」
星辰が言い訳するとアクイラは星辰の胸倉をつかんで、ものすごい目で睨みつけてきた。
「ご、ごめんなさい……。はい」
アクイラにすごまれて星辰はさらに小さくなった。
「……。ふ、あははは」
「どうしたの? 急に?」
急に笑うアクイラを星辰はきょとんと見つめた。
「いや、なに、なんだか安心しただけだよ」
「?」
「まあ、いい。本当に大丈夫だって……。あ?」
アクイラは強がっていたが力が入らない様で、その場で起き上がろうとしても出来なかった。
「やっぱり、無理してたんだ……。あ、そうだ」
そう言うと星辰は右手をかざしサイコキネシスで、アクイラを空中に浮かせた。
「あ、お、おい」
急なことで少しだけ慌てるアクイラ。
次に星辰は左手をかざして、自分がさっきまで寝ていたベットの掛布団を浮かし、浮いているアクイラをサイコキネシスでベットに置き、さらにアクイラの上に掛布団をかけた。
「これで良し」
星辰はそう言うと、ふうと息を吐いた。
「な、なあ、これは……」
「交代だね。今度はアクイラが休む番だ」
「い、いや、本当にアタシは大丈夫だって」
「ダメだよ。休まないと」
星辰はそう言うと、アクイラの休んでいるベットの横に椅子を持ってきて座った。
星辰がアクイラの額を触る。
「な!な、なにをして……」
「うーん。やっぱり少し、熱があるんじゃない?」
アクイラの顔が赤くなっていく。
「これは別に、なんて言うか、熱があるんじゃない!」
「でも、顔がものすごく赤いよ」
「だ、だから、これは別のことが原因だ! もういい寝る!」
そう言ってアクイラは星辰の手を払って布団をかぶった。
「? どうして怒ってるの?」
星辰には、アクイラが怒っている理由が分からない。
「うるさい!」
「? どうなってるの?」
星辰は呆然と布団をかぶったアクイラを見ていた。
それから、ニーナは謁見の間でユーラーに会っていた。
「今、嬢ちゃんは星辰どのと二人っきりかい?」
「はい」
「……」
少し考え込むユーラー。
「まだアクイラの動向が気になりますか?」
「少しだけな」
「一応、ルベル君が医務室の前で、それとなく見張っている様です」
「ふーん、なるほど。だから二人にして、アタシに会いに来たのか?」
「はい」
「まあ、あの嬢ちゃん、星辰どのに惚れてるっぽいから無茶なことはしないだろうが……」
「あの……」
「なんだ?」
「いえ、やっぱり……。これを聞くのは……。今のは、忘れてください」
「報告にあった星辰殿の出生の件か?」
「その……。頭領は星辰君の出生の秘密は知ってらっしゃったんですか?」
「ある程度はな……。しかし、ドロースめ。デリカシーが無い奴だ」
「……」
「確かにアタシはドロースよりは星辰殿の事情を知っているかも知れんが……。この話ばっかりはな……」
「いえ、お話はしなくても大丈夫です。センシティブな内容ですし。その様なことを聞こうとした私が悪いです。申し訳ありません」
ニーナはそう言うと、頭を下げた。
「そうか」
「では、私はこれで……」
ニーナが再度、頭を下げる。
「ニーナ」
「はい」
「星辰どのの力になる機会がまたあれば、なってやれ」
「え? それはもう……」
「……星辰殿の体調が回復したら三人を地球に送り届ける。準備を急がせろ」
「は、はい、かしこまりました」
ニーナはそう言うとユーラーに会釈をして、くるっと踵を返して出口に向かって歩き始めた。
「……あとはエバンに任せるしかないか……」
ユーラーはニーナの後姿を見送ると、小さい声で呟いた。




