5章 第13話 実験体
次は6月6日に投稿予定です。
「性格が書き換えられている? そんなことが……」
星辰が驚愕のあまり声を詰まらせた。
「その実験体の設定の内容は父親の高い身体能力、母親の高い知能、そして二人の超能力の全てを必ず受け継ぐこと」
「……」
星辰は黙っている。
「そして性格は、善良で素直かつ他人に親切で、悪を憎む様に設定された。まさに理想の警官だね」
「それが、星辰だってのかよ!」
アクイラがドロースに怒鳴る。
「そうだ。まあ、あくまで可能性の話だが」
ドロースがアクイラの質問に答えた。
「遺伝子を操作して能力と容姿を理想通りに設定すると言うのは聞いたことがありますが……」
ニーナが、おぞましく感じているのか青ざめた顔をしている。
「性格を設定するだと……。法律だけじゃない、倫理観からも外れている!」
ルベルも少し激昂する様に言った。
「結局、人間は言っていることと、やっていることは違うんだねえ。強力な兵士を造るためには、倫理はどうでもいいんだろ」
「僕が作られた人間……」
星辰の顔が青い。
「星辰。もう耳を傾けるな! お前を動揺させるためのデタラメだ!」
「アクイラ……」
ニーナが怒鳴るアクイラを見た。
「どう思うか個人の勝手だが、お前たちも私の話を聞いて、腑に落ちたんじゃあないか? その坊やの性格に。それに超能力も随分と使える様じゃないか? まあ体格と知能は想定と違うようだが」
「……」
そうドロースに言われて四人は黙った。
(そうか……。父さんや月影さんが星辰のことで何か隠していると思っていたが、これか……)
「でも、それが仮に事実として、どうして銀河連邦警察は僕の性格を変える様な事を……」
「……実験体はお前が最初じゃない」
「え?」
「遺伝子操作された兵士はお前が最初じゃあない。今まで何人もいる」
「なんだと?」
ルベルがドロースの言葉に反応する。
「そう。実験体の戦士は何人もいるんだ。銀河連邦警察は、実験を繰り返している。その実験体の中には、銀河連邦警察に反逆し宇宙犯罪者になった者が何人かいる」
「実験体が犯罪者に……」
星辰がつぶやく。
「遺伝子をいじった実験体の中から一定の割合で、なぜか銀河連邦警察に反逆するものが現れる。奴らにしてみれば飼い犬に手を嚙まれた同然だろう。だから考えたんだろうさ、最初から善良な性格に書き換えてしまえば良いと。単純だが、坊やを見てるとある程度は成功の様だ。強力な戦士が、生まれついての悪人じゃあ、目も当てられない」
「そんな……。それが性格を設定した理由……」
ニーナが星辰を見た。
「その話も随分、詳しいな」
ここはルベルがドロースに質問をする。
「それは、そうだろう。私も銀河連邦警察が造った実験体だから……」
アクイラの質問にドロースは答えた。
「! な、お前も実験体?」
星辰が驚いてドロースに聞く。
「そうだ。銀河連邦警察が銀河の魔女を配下に置くために作った実験体が私だ」
「どういうことだ?」
「銀河連邦警察は、『銀河の魔女』の力を持った配下が欲しかったようだ。だが、現役の『銀河の魔女』で警官になる者はいないだろうし、魔女の力を継承できる女もそうはいない」
「だから、銀河連邦警察はお前を造ったのか?」
「素質がないと、どう頑張っても『銀河の魔女』になれない。だったら造ってしまえことなんだろう。『銀河の魔女』を継承できる能力、才能を与えられた人造人間」
「その人造人間が、お前だというのか?」
ルベルが続けて聞く。
「そうだ。私も最初は猫かぶって警察上層部に従順だったよ。『銀河の魔女』になるまでね」
「なんで、そこまで『銀河の魔女』になりたんだよ?」
アクイラが口を挟む。
「決まってるだろ? 力だよ。『銀河の魔女』になれば強力な力が手に入るんだ」
アクイラの質問を愚問と言わんばかりにドロースは言い切った。
「銀河連邦警察は『銀河の魔女』の一人を捕えて来た。私は、その魔女の力を継承した。魔女の継承は本人同士の同意は必要ない。素養と相性が合えば継承できる」
「で、めでたく魔女の力を継承できたというわけか?」
汚らわしいものを見る様な目でドロースを見るアクイラ。
「そうだ。素晴らしい力だよ。その才能を与えて生み出してくれたことだけは銀河連邦警察には感謝しているくらいだ」
「ふん。くだらねぇ」
アクイラは吐き捨てる様に言った。
「で、どうだい? 本当の自分の出生の秘密を聞いた気分は? 銀河の秩序を守るはずの警察が禁忌に手を出している。坊やがお人よしでもさすがに愛想がつきただろう……。どうだい? 私たちの仲間になるのは?」
(こいつ、星辰を誘うためにこの話をしたのか……)
「断る!」
「な……」
星辰がきっぱり断ったことにさすがに驚くドロース。
「ふふ。連邦警察の設定も強固だね……」
「設定とか言うな。なんて言うか、すごい不愉快というか気持ち悪い!」
「それは、そうだろう。だがら、それを行った銀河連邦警察なんか見限って……」
「お前、少し考え違いをしてる。僕は銀河連邦警察に義理立てしてるんじゃない。お前ら悪党が嫌いだ! だから仲間になんてならない」
「く、こいつ」
ドロースが唇を少し噛む。
「く、は、あははははは」
その時、アクイラが突然笑った。
「はは、星辰を説得するために、長々と話したが無理だったみたいだな。正直、それくらいで説得できるならアタシも苦労しない」
アクイラがドロースに向かって言った。
「そいつは異常なほど頑固だ。残念だったな」
ルベルはその様子を見て、ニヤッと笑った。
「……ちっ」
ドロースが不愉快そうに舌打ちをする。
「ドロース。お前を改めて捕まえる!」
「このガキめがあ! 優しくしてればつけあがりやがって!」
「くうう」
ドロースの激昂と共に、星辰以外の三人をスライムが覆い始める。
「まず、後ろの三人を殺してやるよ!」
「やらせるか!」
星辰が三人の方に振り向いて両手を目の前に掲げる。
サイコキネシスで、三人のスライムを吹き飛ばした。
「な、なんだと!」
「もう一度言う。お前を捕まえる!」
「この! マーテリア!」
マーテリアからさらに多量のスライムが現れて星辰達を襲った。さらに硬質化して身動きが取れなくなった。
(サイコキネシスでファミリアは破壊できない。 こいつのファミリアが動けない状態なら。私が勝つ)
「ちくしょう。動けねえ!」
アクイラも抜け出そうとしたが、思った以上に強固に絡みついてくる。
「マーテリア。剣をつくれ」
「イエス。マスター」
マーテリアの腕にスライムが絡みつき硬質化していく。あっという間に右手に巨大な剣が出来上がった。
「これは……」
「不愉快なガキだ。殺すことにしたよ。ファミリアさえあれば後はなんとかなるだろう」
「星辰!」
アクイラが叫んだ。
「死ね!」
マーテリアがその剣を星辰に振り下ろした。
巨大な剣は、切ると言うより押しつぶす質量だ。
それが星辰の頭上に凄まじい勢いで降りてくる。
「くううう……」
だが、星辰はその巨大な剣を右手でに受け止めた。
「な、なんだと、こ、こいつ!」
「体が堅固になってる? あれはプロテクションの能力……」
ニーナがマーテリアの剣を受けた星辰を見て驚いた様に言った。
「全くなんでもありだな。呆れてくる」
ルベルが本当に呆れた様に言った。
「ぐううう。はあああ!」
星辰が、その剣を両手でつかみ無造作にふって投げた。マーテリアが後ろに投げ飛ばされる。
「僕がなんだろうと関係ない。悪い奴の仲間にはならない!」
星辰が叫んだ。




