5章 第1話 女王からの接触
次の投稿は5月7日予定です。
深紅の秩序の頭領ユーラーと星辰たち三人が出会った次の日。
「驚きましたね。あなたが連絡をよこしてくるとは……」
そこはロカとルベルが地球に来るために使用した宇宙船だった。
その中にあるモニターを使用して、月影とロカは一人の女性と話をしていた。
「ルベルに聞いたのさ。お前ら二人と話をするのはいつ以来かね?」
モニターに映し出された女性はユーラーであった。
「レイラの葬式以来でしょうか?」
レイラとはロカの亡くなった妻、ルベルの母である。
「そんなもんかね? そうそうルベルの奴もでかくなったね」
「おい、雑談はいいから話を進めろ」
ロカが業を煮やした様にユーラーをせっつく。
「相変わらず、せっかちな男だね。よく三等警視まで出世できたもんだ」
「うるせえぞ。まったく相変わらず無駄口が多いな……。それで二人は無事なんだな?」
「まあね。私が見た限りじゃ元気そうだよ。ここの星の医者の見立てでも健康だそうだ」
ユーラーがそう言うと少しほっとした様に月影とロカは顔を見会わせた。
「まあ、心配してると思ってね。親切心で連絡したのさ」
「まるでラートルの様なことを言う」
月影が眼鏡を上げながら言った。
「ラートル? あの三人をこの星に飛ばした奴だね?」
「お前と同じ様な事を言ってたよ」
ロカはラートルを思い出した様で苦々しげだった。
「ふうん。まあ推測の域を出ないが、そのラートルはこの星の状況を知っていて三人を意図して飛ばしたんだろうね。どういう目的があるかは知らんが……」
「全くだ。あの女は何が目的だ?」
「そいつの目的を、ここで話をしても埒があかないね」
「確かに。それで星辰君とルベルは、送ってもらえるとの認識でよろしいでしょうか?」
月影が話を変える。
「まあ、この星の用事が済んだら送ってやるさ」
「星の名前を、まだ聞いてませんでした。どこの星でしょうか?」
「それを言ったら、お前らワープできる宇宙船で迎えにくるだろう?」
月影の質問にユーラーが答える。
「そりゃそうだろう」
ロカが憮然とした表情で言った。
「せっかくの戦力だ。そう簡単に手放せないね」
「その星を支配するアルゴルとの争いに星辰君とルベルを駆り出すのか?」
少しだけ気色ばむ様にロカが聞いた。
「そうだよ。心配かい? 親だね」
「悪いか?」
ロカは文句があるかと言わんばかりだ。
「いいや。だが、戦いが人を成長させることもある。お前らも分かるだろう?」
「そうかも知れませんが……」
「もしかして、何の見返りもなしで地球に返してもらえるとか虫のいい事を思ってないだろうね?」
「おや、ダメですか?」
月影がとぼけた様に言った。
「アタシは、海賊だよ。なんの見返りもなしに動くとは思わんことだ」
「ちゃんと謝礼いたします。今すぐ送っていただくのはダメですか?」
月影が今度は真面目の顔で尋ねた。
「ダメだね。正直、今から送り届ける余裕もない。ラートルとやらが、お前らのことを過保護と言っていたそうだが、全くだね」
「お前に比べたら、みんな過保護になる」
「そんなに心配せずとも生かして帰してやるよ。なるべくな」
「全く、なるべくかよ……」
ロカが少しうんざりした様に顔に手を当てた。
「要は戦争なんだ。死んだらそれまでさ」
「そんな簡単に割り切れるかよ」
ロカが反論する。
「気持ちは分かるがね。ただ、あの小さい坊ちゃんはエバンが、ルベルはロカが鍛えたんだろ。今日、二人を訓練させてみたが、なかなかどうして、思ったより良い動きだったよ。あれだったら、そう簡単に死なんだろうよ」
「本当にそれなら、良いのですが……」
月影も心配そうに眼鏡をあげた。
「一人はティグリス警視とアリアさんの忘れ形見。もう一人はロカの息子だ。アタシだってみすみす見殺しにしたりしないさ」
「分かりました。ここはあなたを信じるしかない様ですね。正直、心配じゃないと言えばウソですが……。アクイラ嬢も一緒みたいですし」
「あの嬢ちゃんは坊ちゃんを狙ってるから不安要素ではあるが、ちゃんと見張りをつけてるから、とりあえずは大丈夫だろ。変な動きをしたら後ろから撃つとも脅してるしな。なんだい。アタシの方で、あのお嬢ちゃんを始末しろって言うんじゃないだろうね?」
「いや、そこまではさすがに……」
月影が否定する。
「だろうね。それを言ったらお前ららしくない。それに見張りをつけているとは言え、一応客人扱いだ。影で始末したらアタシの沽券に関わる。それにそんなことしたら坊ちゃんに恨まれるよ。あの坊ちゃんはお嬢ちゃんのことを、今は仲間だって言ってたらからね」
「そうですか。星辰君らしい」
月影は嬉しい様な悲しい様な複雑な表情をした。
「……。あの坊ちゃんだが、本当にティグリス警視とアリアさんの息子なんだね? あの性格だが、もしかして……」
少しの沈黙のあと、ユーラーは質問してきた。ただ本人もほんの少しだが、聞きにくい様だった。
「それは……」
ロカもユーラーの質問の返答に少し言いよどむ。
「フェミナ……。いやユーラーには話しても良いでしょう。あなたの推測通りです」
月影がロカの代わりに返答した。
「やっぱりそうか……。遺伝子的には両親の認識でも間違いないが……。そのことを、坊ちゃんは知ってるのか?」
「いや。彼には両親が地球人ではなく宇宙人とだけ……」
「ふうん。まあ、話をした感じでは知らない様だったし、確かにあの年齢で、この話はショックを受けるだろうしね……。だが、さっさと本人に知らせちまうのもアリだと思うがね。どうせいつかはバレるんだ」
「分かってます……。ただこのことはタイミングを見て、私の口から星辰君にお話しするつもりです。あなたから星辰君に話をすることは待っていただきたい」
「分かってるよ。あくまで私は部外者だ。時が来たらお前から話すのが筋だろう」
「ありがとうございます」
「聞きたいことも聞けた。これで失礼するよ。吉報を待ってな」
ユーラーがそう言うとモニターはプツンと切れた。
「……」
月影はその画面をじっと見つめている。
「……エバン。良かったのか? これで……」
ロカが心配そうに月影に話かけた。
「彼女結局、最後までどの星にいるのかを言ってくれませんでしたね」
「そうだな。星さえ分かれば迎えにいけたが……」
「星が分からなければ我々としては、どうしようもない。星辰君とルベル君が無事だと言うことを知らせてくれただけでもありがたいと言うべきかも知れません……」
月影も少し難しい顔して眼鏡を上げた。
「連絡をくれたのは、ユーラーなりの最低限の親切ってことか……」
「ですね」
「戦力として、組み込むってのは本気らしいな。戦場を知るってのは、そりゃ経験になるだろうが……。全く心配だぜ」
「同じ気持ちですが、ここはユーラーを信じるしかないですね。まあ、確かに無事を知らせてくれただけどもありがたい」
「まあな。だが、相変わらずだぜ。あの女は……」
ロカはそう言うと、呆れた様にため息をした。
「そこは同意ですね」
そう言うと月影は少しだけだが微笑んだ。




