4章 第10話 アクイラの過去
次回投稿は5月2日予定です。
「さて、戦力が増えて心強いが相手は腐っても『銀河の魔女』だ。油断はしないことだね」
「銀河の魔女?」
聞きなれない用語が語られて星辰は少し困惑した。
「科学が発展していなかった古来より銀河にいる、強力な女性の超能力者だ」
アクイラが星辰に簡単に説明する。
「昔の人間にしてみれば、そんな人間は魔女に見えたんだろうね。ドロースはその銀河の魔女だ。ピンキリで言ったらキリの方だが、それでも強敵だよ」
ルーラーが話を続ける。
「ドロースが、その『銀河の魔女』? 古来からいるって言うけど、ドロースって奴はそんな昔から生きてるの?」
星辰はアクイラを見て聞いた。
「いや、『魔女の力』は現在の魔女から次の魔女へと引き継がれる。魔女になる条件は、『魔女にたる才能』とその『魔女の力』との相性とのことだ。突然変異の一種って言われているな」
アクイラが、さらに説明を加えた。
「『銀河の魔女』は基本は不老不死だ。また頭や心臓を打ち抜いたり、首を切っても体が再生して死なない。それに魔女になった瞬間に知能、身体能力、超能力など全ての能力が向上するらしい。お前そんな奴と戦おうって言うんだぞ?」
ここでルベルが口を挟んできた。やっぱり納得が言ってなかったらしい。
「地球に帰るならやるんしかないんでしょ?」
星辰がユーラーを見た。
「そうだな」
ユーラーが答える。
「じゃあ、捕まえるしかないじゃないか? 僕たちは銀河警察の警察官なんだろ?」
「そんな簡単に捕まえられたら苦労しない」
「もしかして、ルベルは怖いの?」
「なんだと! 誰が怖いと言った!」
「じゃあ、いいじゃん」
「ち、分かった。やってやる!」
ルベルは腕を組んでまた明後日の方を向いた。
「くっくっく」
そのやり取りを見ていたユーラーが笑った。
「それにドロースを捕まえられたら、コルムさんの居場所が聞いて助けにいけるかも……」
星辰はアクイラを見ながら、そう言った。
「あ、ああ……」
不意に言われてアクイラは少し面食らった。
「『銀河の魔女』を捕まえられたら御の字だけどね。クスカってのは、随分用心深いようだ。クスカの片腕とは言えドロースも居場所は知らないかもしれないね」
「そうか、そうかも。でもまず今は、ドロースをやっつけることに集中しないといけないかな」
「そうだな。坊や」
星辰の言葉を聞いたユーラーが少しニヤリと笑った。
「お嬢ちゃんとルベルのファミリアは破損してるって言ってたな? まずはそれを修理しな。ニーナ、そいつらを案内はお前に任せる。それと、お嬢ちゃんの見張りもつけとけ」
「分かりました。頭領」
命令を受けたニーナがユーラーに頭を下げた。
「いつ戦争を仕掛けるかは追って知らせる。それまでは部屋で休んどきな。すぐと思っとけ」
「分かりました」
星辰がユーラーにペコリと頭を下げた。
「じゃあ、皆さんこちらに」
ニーナが部屋の扉の前へと向かう三人はそれに続いた。
扉が開いて四人は部屋を出て言った。
「……」
扉が閉まるとユーラーは閉まったと扉を見ながら少し考え事をしている様だった。
「いや、すごい迫力の人だなあ」
部屋を出ると星辰が感心した様に言った。
「ふふ、そうですね」
ニーナが星辰の言葉にうなずいだ。
「もう宇宙海賊と言うより国を治める女王だな……」
こちらはアクイラがつぶやく様に言った。
「ルベルが会いたがらない理由が分かったする」
星辰はそう言うとルベルを見た。
「……」
ルベルは星辰を無視している。謁見が終わりどうやらほっとした様だ。
「アクイラさんの見張りは私が務めます。一緒の部屋に寝泊まりします。アクイラさん、よろしいですか?」
ここで、ニーナが話を変えた。アクイラを見ながら聞いてくる。
「アタシは構わないけどよ。あとアクイラで良い」
「じゃあ、アクイラ。よろしくお願いいたします」
ニーナがアクイラを見ながら改めて挨拶した。
「ああ。アタシもニーナと呼ばせてもらうぜ」
アクイラもニーナを見た。
「話の腰を折ってすまないが、その女はブーステッドヒューマンだ。こう言ったら失礼かもしれんが君が、その女を見張ると言うのは……」
ここでルベルが少し心配そうにニーナを見ながら話に入ってきた。
「力不足かしら?」
「いや、すまないが……」
「私、こう見えて結構強いんですよ。大丈夫です」
「……そうか。俺も口出す権利もないし、これ以上は何も言うまい」
「あのさ」
星辰がまた口を開いた。
「どうしました?」
ニーナが星辰を見た。
「あの失礼だと思うのだけど、アクイラはどうしてそのブーステッドヒューマンになってしまったか聞いても良い?」
「……」
星辰の問いにアクイラは黙ってた。
「ごめん。やっぱり、言いたくなければ言わなくても良いんだ」
星辰は気まずそうに謝罪した。
「別に怒ってねえよ。まあ、秘密にするもんでもないから聞きたいなら話してやる」
「え、うん。ありがとう」
「……アタシの生まれた星ではしょっちゅう戦争をしててな、アタシは五歳くらいの時に戦争で両親が死んで孤児となった。その後、傭兵を養成する施設に入れられた」
「傭兵を養成する施設?」
星辰がアクイラに聞く。
「ああ、孤児を集めて傭兵に育てる施設だ。そこでブーステッドヒューマンに改造されたってだけだ。ウルラもな」
「そんな子供を改造するなんて……」
星辰は少し悲しい顔してアクイラを見た。
「銀河じゃあ、ザラにある話さ。地球でも少年兵とかあるんだろ?」
「まあ、それは……」
「どうやって、その施設から抜け出したのだ?」
話の途中でルベルが話に割って入ってきた。
「別に単純な話だよ。施設が戦闘に巻き込まれたドサクサに紛れてウルラとコルムの三人で逃げたのさ。アタシが十歳で、ウルラが八歳、コルムが五歳くらいだったかな? 逃げきれたのは運が良かっただけだろうがね」
「そこから三人ずっと一緒だったの?」
星辰が質問する。
「そうだな。逃げてからは泥棒稼業さ。生きていくにはそれしかなかった。まあ、いけ好かない金持ちを狙う様にはしたけどよ」
「子供だけで泥棒ですか?」
ニーナもアクイラに質問した。
「子供だけだからこそ怪しまれないってのもあったかな? まあ、ブーステッドヒューマンに改造されていたおかげで怪我が治るのが早いし、病気にもなりにくい。喧嘩沙汰になっても、相手が普通の奴なら大人にも負けなかった。銀河の魔女じゃあないが、知能、身体能力、超能力が強化されてるからな。生きていく上では改造されていて良かったとも言える。しゃくだが……」
「お前とウルラはブーステッドヒューマンに改造されたと言っていたな、人質になっている妹は改造されていないのか?」
また、ルベルが別の質問をした。
「コルムは改造される前に施設を逃げ出したんだ。千里眼は生まれもっての才能さ。ただ、生まれつき体が弱かった……。って、ん?」
アクイラはそこで星辰の様子が違うことに気づいた。
「お前泣いてるのか?」
アクイラは驚いて星辰に聞く。
「あれ、本当だ。ごめん、急に泣いたりして……」
星辰も自分が泣いていることに今気が付いた様だ。
「いや、別に謝る事ないだろ……。お前なんで泣いてるんだよ?」
「だって色々大変だったんだと思うと……。でも、ごめん……」
「だからなんで謝るんだよ?」
「お前を可哀そうな人扱いして泣いていることに気がとがめているんじゃなあないのか?」
ルベルが星辰の気持ちを代弁してくれた。
「そんなこと気にしてねえって」
「うん……」
「相変わらず人が良いと言うか、変な野郎だよ」
アクイラは照れた様な怒った様な複雑な表情をした。
「そうかな。そんなに変かな……」
星辰は涙を拭きながら答える。
「ちぇ。全く本当に調子くるうぜ……」
アクイラはそう言うとバツが悪そうに頭を少しだけかいたのだった。




