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蒼き星の子と機械仕掛けの獅子王レグルス  作者: 常聖大
高校1年生編 1章
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高校1年生編 1章 第17話 覚悟

「な、なんだと!」


 星辰に首を噛みつかれたサエウムも、これには流石に想定外だったのか、いささかろ狼狽(ろうばい)の色を隠せなかった。噛む力も人間を超えている。


「ぐうぅ……。おのれ!」


 サエウムは星辰を左の裏拳で殴りつけ無理矢理引き剥がした。


「くうっ!」


 しかし、引き剥がす瞬間、星辰に首の筋肉をいくらか噛みちぎられた。ちぎられた傷からは血が勢いよく吹き出した。

 殴られ吹き飛ばされた星辰はクルッと縦に一回転して地面に両の足で立つと引きちぎった肉をぺっと地面に吐き捨てた。


(まさか、あの場面で噛みついてくるとは……。何という精神力。この私とした方が、彼を石にすることを忘れて殴ってしましいました。おそらく私が慌てて石にする能力を発動せずに殴りつける事も計算して噛みついてきた)


 サエウムは自身の傷に左手をあてヒーリングで治療し始めた。


「お前もヒーリングが使えたのか?」


「まあ……。応急処置程度のものですが……」


(この傷では長居はしない方が良いですかね。ここでは、完全な治療は出来ない。しかし、何という少年か……。甘く見てましたね。まだ、こちらが圧倒的優位なのに、冷汗が出てしまいましたよ。くっくっ、冷汗とは何年ぶりでしょうか?)


 首の傷に手を当てながらサエウムは星辰を見つめた。観察したと言った方が良いかもしれない。星辰は鬼気迫る表情でサエウムを見ている。


(この表情……。地球にいる、そうライオンでしたっけ。あの肉食獣の様……)


「全く何度も驚かせてくれる……。この傷、普通の人間なら出血多量で死ぬかも知れない傷ですよ。貴方は殺しは嫌いだと聞いていましたが?」


「……。殺人は嫌いだ。だが僕が躊躇(ちゅうちょ)した事で犯罪者を取り逃すくらいなら手段として選択肢の一つには入れている。最終手段だが……」


「なるほど」


「それにお前は、これくらいで死ぬのか?」


「いえ」


 サエウムは短く答えるとフッと少し笑った。


「思った以上に楽しい時間でしたよ。だが、これで終わりにしましょう。両腕を失っても犯罪者に立ち向かう貴方の覚悟には、多少の敬意の感情がわいてきますが、貴方は危険だと再認識しました。ここで石にして再生出来ない様に粉々に砕いて差し上げましょう」


「そんな簡単にやられると思うな」


「ここまできて、ラピス!」


「イエス、マスター」


 サエウムの命令を受けたラピスが星辰に襲いかかる。しかし、星辰に近づいた刹那、何者かがラピスを吹き飛ばした。


「な、何!」


 サエウムは驚き目を見開いた。人型のレグルスがラピスを殴り飛ばしたのだ。


「なんだと。確かに石にしたはず」


 レグルスの胸には『覚悟』の文字が浮かんでいる。


「文字が……。そうか。感情を学んで進化したのか……。しかし石化の能力まで解除できるとは……」


 その時、サエウムがさらに驚く事が起きた。


「む? これは結界が消えていく。な、なぜ」


「決まっている。僕の仲間たちが結界を発生させている機械を破壊したんだ」


「なんだと。あの赤髪の少年やエバンが……。もう少し時間がかかると思っていましたが……。これは想定外ですね」


 少し狼狽(うろた)えるサエウムを見た星辰が少し笑った。


「そうか。今までの君の行動は時間稼ぎですか?」


「必ずやってくれると思っていたからね」


 そう言うと星辰は少しだけ笑った。


(この少年だけでも殺しておくか……。いや、その間に仲間がきてしまう。致し方ありませんね)


「情けなく尻尾巻いて逃げるのか? お前ほどの戦士が?」


「挑発しても無駄ですよ。貴方の仲間全員と戦って逃げられると思うほど私は自惚(うぬぼ)れていない。貴方も、そのファミリアも、仲間も私の想定以上でした。今日はそれが分かっただけ良しとしましょう」


 サエウムは、そう言うた逃げる態勢(たいせい)を取り始めた。


(まずい。奴を逃せばベロニカや皆を元に戻せない……)


 星辰はサエウムを逃したくは無いが、両腕が無い状態では、この指名手配犯を止めるのは難しかった。


「では、さらばです」


 サエウムがそう言った瞬間、それは起こった。


「なんだと! 次から次へと」


 サエウムのファミリア、ラピスが破壊されたのだ。


「炎? まさか」


 ラピスを破壊したのは高温の炎の玉だった。最早炎の玉と言うより、高熱の光線である。

 それを見た星辰は目を見張った。見覚えがある。


「これは、まさか……。はっ!」


 サエウムはいつの間にか背後に人がいる事に気がついた。だが、すでに遅かった。


「てめえ。よぐも星辰をやってくれたな」


 サエウムの背後に立っていたのは、二つのいわゆるお団子ヘアーに黒い髪の少女だ。

 彼女は右手に持っていた金属の棒でサエウムの顔面を殴りつけた。


「ぐう!」


 殴られた衝撃で吹き飛ぶサエウム。


「君は……」


 星辰が少女に話しかけると少女は振り返った。


「やっと会えたな星辰」


 少女は星辰の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。


「アクイラ……」


 星辰とアクイラ、約二年ぶりの再会であった。

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