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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

スペクタトゥールに贈る

最後まで、演じきって。

作者: Aster/蝦夷菊

 小説家の彼女がした愚行を、君たちは知っているだろうか。彼女は現実世界を塗り替えたが、それは元から数人を引き抜いて歴史を改変し、土地すらも違う異世界を作り出しただけだ。正確にいえば、今も君たちの居る世界が残っている、ということだ。

 しかし、この情報だけではどこが愚行であるかが理解できないものもいるだろう。

 鎖世、という別の世界が存在することを知っているか。世界から隔離された場所。血に染まり、死体は無造作に転がり、歴史はボロと化した地。彼女が抜け殻にした現実世界の本当の姿は、想像するのも恐ろしい忌地。それが鎖世だ。





 感情を復元する方法は簡単。何度もやり直すだけ。そう、死はやり直し。


 僕が感情を取り戻した経緯をかいつまんで話すと、ルークに何度も殺してもらったんですよね。彼女にとっても僕にとっても、これは長く辛い作業でした。何せ、親友は親友を殺さなければ、親友は親友に殺されなければならないのですから。

 誰も、僕を許してはくれないでしょう。


 百十一回目の殺しで、僕は感情の多くを取り戻せました。その代わり、僕から性別という概念が消え、過去の記憶は思い出せなくなりましたが。自身の運命に抗っても、結局は何かを失う事になる、ということでしょうね。



 僕が何度も殺され、しかし戻ってこられたのには皆さん疑問が浮かぶでしょう。理由は至って単純、作者の代弁者がいなければ小説は機能しないのです。そう言っていたのは作者自身でしたが、僕も感情が無くては言葉を紡ぐのに苦労してしまいますから。

 二度目の死に辿り着いた場合、普通は消滅するか強制的に転生するのが定めです。作者は僕とルークにだけ特別な魂石を授けましたから。


「どうか、彼女が健やかでありますよう」

 險ア縺輔↑ 險ア縺輔↑繧、





「死を何度も経験した彼女は、血まみれの状態で現れた。百十一回目、やっと成功した事を悟って俺は安堵した」


 死にそうなのはお互い様、俺も心から崩れていきそうだった。感謝するべきは、予想していたよりも短ったことだけ。


「優しすぎる、両者共にそうだった」


「だが今の彼女はどうだ。心の読めない演者、それは何よりも脅威になりえないだろうか」


 「どうか、彼女が幸せなままでありますよう」

 險ア縺輔↑ 險ア縺輔↑繧、


 演じきれ、責務を放棄せず、演じきれ。

 汗を浮かばせ、二人切りの空間で小説家は苦痛に顔を歪ませる。

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