私が忘れていたこと
私の幸せってなんだろう、最近良く考える。
幸せになりたい、って心の中で唱えるけれど、そもそも幸せってなんなんだ。
どんなことに自分は幸せを感じるのか…
『自分が欲しいものを手に入れた時』?
そうかもしれない。その時はとても満たされるよね。でも…そんな気持ちは時間と共に薄れ慣れてしまう。
『テストで100点取った時』や、『人に褒められた時』?
そう、そうだよね。自分の努力が報われたようで、後ろに仰け反って、拳を高く高く押し上げたいくらい嬉しい!!
『美味しいものを口に運んだ時』?
一瞬驚いて無の顔になり、無意識に「おいしい…!!!」と声が出てしまう。次の瞬間笑顔が自然とこぼれてしまうくらい、心も身体も喜んでいるように感じるよ。
でも、最近何か足りないんだよ。
自分で欲しかった物も買ってる。それに褒められもするし、美味しいものも沢山食べている。
自分のやりたい事も、まあ、やれてるよね。
どうして心が満たされない、と思うのだろう…
足早に家路を急ぎたくなる程、空気の澄んだ寒い夕暮れ。
ふと東の空を見上げたら、白、青、赤、橙…と瞬き、交互に輝いて見える星々。
私は星に詳しくはないからよくわからないけれど、驚くほど我を主張してくる星々が見える。
「私、とってもきれいでしょ?」
「この空で一番輝いてるのは私よね?」
そんな声が聞こえてきそうだ。
「…あっ…!!!!」
私は小さく声をあげ、ふと立ち止まった。
山吹色にクリアな紺色のインクを混ぜた、あと数分で黒一色になりそうな西の空に目を下ろす。
誰かが絶妙な位置に描いたような、細く輝く月がなぜかニッコリと笑っているように見える。
「三日月…?」
ああ…そうか。私がもう少し幼かった頃、お月様は私に話しかけてくれていた。
「ユウ、今日はなんだか悲しそうだけど、何かあったの?」
「そんなこと気にすることないわよ!!ユウはとってもステキよ!笑顔を忘れないで!!」
「とっても素敵な人に出会えたみたいね!!私がユウをもっとキレイしてあげるね!」
お月様の表情はとても豊かで穏やかで…
時に励まされ、慰められ、そして沢山元気をもらった。
「なんか…、とっても幸せだったなぁ…」
あの時、あの瞬間を思い出すとなんだかお腹の辺りが温かくなる。そうか。私はお月様と繋がっていた、あの時間がとても愛おしくて、あの時に戻りたいと感じているんだ。
あの幸せな時間は私の宝物。いつか、皆に話せる時が来ればいいなぁ。