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宴が催されました。

「加代さんは外から来た嫁さんだから、“鬼”のイメージが混ざったんだろうな」

「そういうものじゃなかったの? あかねさんのところにいたときの白い犬のとき、けっこうな牙をもっていなかった? 私、犬はちょっと苦手で。鬼っぽいわーって思ったのだけど」

「鬼はちがうんじゃが、ワシらもようわかっとらんしなあ」

 いろんなものが雑に片付けられた。

 宴会と言っても、外に働きに出ている(この村では比較的若い)者は急に仕事を休むこともできず、集会場にいるのは慎の母である加代を含むそれ以上のお年を召した方々ばかりだ。

 それぞれご家庭の料理が持ち寄られ、秘蔵の酒が振る舞われたくらい。しばらくキラサマは囲まれていたが、そのうち世間話にそれていき、輪の中から抜けていた。すみの方でもそもそおにぎりを食べていた慎のとなりにどかり腰を下ろす。

「いいんですか? キラサマのための宴会でしょう」

「かまわん。我はただここにあるもの。やはり意識せんとすぐに意識から消えるものだな。慎はしばらく外に出ておったと聞いた。だから、我を無意識に意識できるのだろう」

「無意識に意識する……うーん。でも、ただここ“ある”っていうのはわかります。こんなに派手なトンチキ和装でも、そういうものって思えますから」

「それでよい。慎は我を見ていればよい。それが嫁の役割だ」

「なんで?」

「言ったであろう。そこにあることが当たり前の我だ。確実なのは、観測され続けること。我は人ではないゆえ、人の世に存在するには、人に認識され続けなければならん」

「うん? もっと易しく言ってください」

「妖精は『信じない』と否定すると一匹減る」

「あー、はいはい。キラサマ、案外曖昧なんですね」

「人ではないのに、人に迎合してしまったからな。忘れ去られたとしても我自身は消えはせん。しかし、人を愛しく思うようになってしまった」

 お年を召した方々の食事はのんびりと穏やかだ。その様子を、キラサマは目を細めて見つめている。慈愛だ。キラサマの“愛しい”だ。

「なれも愛しく思っておるぞ、慎」

「んなっ!」

 ぐい、と強い力で腰を引き寄せられた。慎の想像力を核にしているということは、つまりその姿は慎の想像の産物であるはずなのだが、力強く温かく、柔らかく硬い。デッサン力が成せた技だと思いたい。

「その声の設定まで僕だけど、直で聞くと効くから待って」

「慣れろ。毎日聞くことになるのだぞ」

「いやホント待ってください直あんげんは脳に効きすぎる!」

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