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Origin〜最強のデッキと神のカードで無双する〜  作者: 山科独名(やましなひな)
第一章 墓場に眠る神のカード
8/23

崩壊、そして始まり

 沈む地面。この部屋の下に巨大な空洞が存在し、床が崩れていっているのだ。

 真っ先に崩落したのは、カラスが倒れている場所だった。彼女は気絶しているため、このままでは落下してしまうが、崩落しかけている不安定な足場の上で、彼女のもとまでたどり着ける人間はこの場にいなかった。


「エディン!」


 しかし、部屋の中にいなかった彼は別だった。少年の声が聞こえた瞬間、その巨体に似合わぬ軽やかなフットワークで参上した彼は、落ちかけていたカラスの腕を掴み、軽々と引っ張り上げた。


「ふいー。危ねえ危ねえ。」


 こんな事を言っている彼だが、その表情には余裕が見える。


「エディン!?さっきまで何やってたのよ!」


「すまんすまん。寝てた。」


 笑いながら言うエディン。笑い事ではないと怒ろうとしたカガミであったが、彼女の足下も崩れ始めた為、それどころではなくなる。


「カガミ、これを持っていけ。」


 少年がポケットの中から1枚のカードを取り出した。このカードのみ、彼の他のカードとは異なるイラストのスリーブに入っている。何も書かれていない、真っ白なカードだ。


「これがあれば、エディンは言う事を聞いてくれる。お前の旅の助けになる筈だ。」


 少年がカガミにカードを渡した瞬間、彼女の足下が崩れる。落ちそうになる彼女を掴んだのは、エディンの長い腕だった。

 崩落は進む。エディンの腕にぶら下がりながら、カガミは叫んだ。


「アル!早くこっちに!」


「残念だがそれはできない。」


 少年が目を向けた先には、緑色の目の巨像がいた。巨像は、少年が脱出するのを拒むかのように、その手を握っている。


「きっとこの下なんだ。カードがあるのは。」


 少年は下というが、カガミが下を覗いても、底無しの闇があるだけ。落ちてしまえば死は不可避だろう。もし、落ちても死なないようになっているのだとしても、少年の体力はすでに限界。帰ってくることができるとは限らない。


「駄目よ!今は一度帰るの!傷を癒やして、また来たら良いわ!」


 少年を呼び止めるカガミだったが、彼女に背を向けた少年から返事はない。全てがもう、遅すぎた。


「アル!アルー!!」


 少年の足下が一気に崩れ、彼は巨像と共に闇の中へ消えた。彼の血塗れの、だが頼れる背中はもう見えない。




 この日、崩落した古代の墓の下に、巨大な迷宮が確認された。この迷宮には多数の強力な魔獣が巣くっており、その調査は難航。魔獣討伐のプロフェッショナルたるハンター無しに調査は不可能とされ、迷宮の調査を望む学者達によってハンターの需要が高まる。これによってハンターの懐事情は大きく改善され、世間からのハンターへの評価は改められる事となる。といっても、街などの一部に限ってだが。

 これには北方のとある国が、この迷宮の調査を全面的に支援したことも大きく影響している。王女の命令により、何かを探しているらしいのだが、それに関する手掛かりは今の所見つかっていない。




 少年アルカード、カガミ、そしてエディンの神のカードを探す短い冒険から1年。ある辺境の村を訪れていた一団があった。


「ちょっと。エディン、いい加減にしなさいよ。」


 赤い髪の少女が、真っ赤な顔をして寝ている一人の大男をズリズリと引きずって歩いている。かなり雑な運び方だが、この男、全く起きる気配が無い。


「あんたも見てないで手を貸しなさいよ。」


「嫌です。酔っ払いに触れるなんて…気持ち悪い。」


「あんた…従僕のくせに、良いご身分ね。」


「あら、今すぐにでも城にお連れしたほうがよろしいでしょうか?お嬢様。」


「もう!」


 息を荒げて男を運ぶ少女を見ているこの女は、少女同様に赤い髪をしていた。


「ほんっと、どうしてこんな所に神のカードがあるのかしら!」


 この3人は神のカードを探していた。しかし、この3人の目的は神のカードだけではなかった。


「ここにも居ませんでしたね…あの少年。」


「まだ言ってるの!?ここはまだ最初よ!?神のカードはあと7枚も残ってるの!アルとこんな所で会える確率なんて低い事ぐらい、最初から分かってたじゃないの!」


「ですが…」


「何度も言ってるでしょ!アルは私の手助けをする為に、神のカードを探している筈なの!だから私達も神のカードを探していれば、いつか出会えるに決まってる!そして神のカードはあと7枚もある!まだ不安がる時じゃないの!…どうしてあんたはアルの事になるとこうも馬鹿になるのかしら。」


「当然でしょう?あの少年は私を負かしたんですよ。勝ち逃げなんて許せる筈がありません。」


 言いながら腰の刀に手を添える女。この後に続く言葉を予想した少女は、慌てて女を止める。


「わー!待ちなさい!切腹はだめよ!」


「しかし…」


「いくら恥だからって、こんな所で切腹されても私が困るの!さっさとその刀を仕舞いなさい!」


 カガミ、エディン、そしてカラスの3人は、神のカードを探しつつ、行方不明の少年を探していた。しかし、彼女らが少年と再会するのはずっと後の事である。

第一章はこれで終わりです。次はカードまとめとなっており、第10部分からは第二章となります。

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