NEXT
「これが貴様を殺す、そのために生まれる龍だ。俺はデッキから《エヴォリューション・END・ドラゴン》を使用!」
エヴォリューションワームが遺した卵から、1匹の龍が生まれる。闇のように真っ黒な身体で、燃えるように真っ赤な瞳だけが光る。
「貴様の敗因を教えてやろう。勝利を焦るあまり、手札を使い切っておきながら、致命的弱点を放置してしまったことだ。」
「致命的…弱点…?」
「見ればわかる。ENDの効果発動!全て消し飛ばせ!」
龍が動いた。身体についた粘液を払うように大きな翼を広げ、飛び上がる。そして、大地が割れるほどの強烈な叫びを上げた。衝撃で地に落ちた天狗は、割れた地面に飲み込まれ落ちていった。
「ENDの産声は、世界を一度、終わらせる。」
《エヴォリューション・END・ドラゴン》
戦闘力:4
効果:このカードの使用成功時に発動する。このカード以外の全ての場のカードを墓地へ送る。
「貴様の残した致命的弱点、それは効果によって天狗が除去されてしまう可能性だ!」
「どんなカードも効果と特性は1つずつ…天狗に耐性が無いとわかったからENDを使ったのですか…!」
「カラスを焦らせる為の挑発だったのね!やるじゃない!これでカラスの場も手札もがら空きよ!やっちゃえアル!」
「…ターンエンドです。」
3ターン(少年のターン)
「俺のターン…っ…!ドロー!(手札0→1)」
「アル!大丈夫!?」
真っ青な顔でフラフラとしながらも、そのドローにふらつきはない。体が限界に近くとも、ドローを誤ってデッキを崩し反則負け、などというミスはしない。しかし…
「その体ではバトルの継続は困難でしょう。もってあと2ターンってところですかね。1ターンで私の3つのライフを削り切るのは難しいでしょう。」
ハンター程度に舐めた態度を取られ、しかもカッとなった所で手痛い反撃を受けてしまったカラスであったが、体力の限界に近い少年の様子を見て、落ち着きを取り戻したようだ。いくら追い詰められているとはいえ、相手はたかがハンター。ENDは切り札と考えて良い。そのENDも、効果を使ってしまえばたかが戦闘力4。鎌鼬レベルの下級で潰せる。それどころか体力という時間制限のある少年本体が先に潰れてしまうかもしれない。
このターンを耐えきれば勝てるという事に気付いたカラスは余裕を持ち始める。カガミもこの事実に気がついたようで、先程の勝てそうと安心していた表情とは打って変わって焦りが見えた。だが、当の本人、少年はこんな状況で尚、笑った。
「ふっ…勝つぜ。」
その言葉に反応したのか、ENDが翼を広げて攻撃態勢に入った。
「ENDで直接攻撃!ライフダメージを受けてもらう!」
「…掠り傷ですね。(ライフ3→2)」
「その掠り傷が致命傷になるんだがな。俺は攻撃を終えたENDを墓地へ送る!」
翼で全身を包むような体勢で固まったENDの体は崩れていく。
「龍っていうのは不思議な生物でな。子孫の為なら自殺すら平気でやってのけるんだ。自分がどう生きるか、なんて事よりも、如何に未来に繋ぐか、って事を考えているんだろうな。」
上を見上げる少年。崩れた天井から太陽の光が差し込む。ただ空を見上げて、足下には見向きもしない。この傲慢さが、少年の強さなのかもしれない。
「だから俺はこいつらを信じられるんだ。《エヴォリューション・NEXT・ドラゴン》を使用!(手札1→0)」
ENDの残骸から、真っ白な龍が飛び出した。太陽光を浴びてキラキラと7色に輝く綺麗な龍だ。
「NEXTはデッキのカードの効果をコピーする。あらゆる進化の先を目指す龍だ。」
《エヴォリューション・NEXT・ドラゴン》
戦闘力:7
条件:場のカード1枚を墓地へ送る。
効果:自分のターンに発動できる。自分のデッキから『エヴォリューション』カード1枚を墓地へ送る。その後このカードの名前と効果は、ターン終了時まで墓地へ送ったカードの名前と効果となる。
「《エヴォリューション・Ω・ドラゴン》の効果をコピーし、その効果を発動する。」
《エヴォリューション・Ω・ドラゴン》
効果:1ターンに1度、自分ターンにのみ発動できる。相手ライフが3以上の時、相手ライフを2にする。もしくは、相手ライフが2以下の時、相手に2のライフダメージを与える。上記の効果適用後、このカードを墓地へ送る。
上空に飛び上がったNEXTの体が燃え上がる。身を焦がしながら急降下するその姿に、迷いはない。燃え盛る白き龍は加速を続け、カラスに突っ込み、爆発した。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁ…!!!(ライフ2→0)」
炎に焼かれたカラスは、絶叫し気絶してしまった。半実体の炎であったため、人体への影響は無いが、痛みは存在し、精神的なダメージは大きい。
カガミが少年の勝利に安堵し、駆け寄ろうとしたところで、ガゴンッという嫌な音を立てて、地面が沈み始めた。
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