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Origin〜最強のデッキと神のカードで無双する〜  作者: 山科独名(やましなひな)
第一章 墓場に眠る神のカード
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乱入者

『力ある者よ…我にその資格を見せよ。』


 青い目の巨像が、2人に語りかける。


「資格…カードバトルの腕を示せばいいのね!」


 そう言って少女カガミはデッキを取り出すが…


『否。示すは汝に非ず。』


「…俺か。」


『然り。』


「…まずいわね。計画が狂ったわ。」


 カガミの計画では先程の通路のようなカードの力の通用しない部分をハンターである少年アルカードの身体能力で突破し、カードの必要な場面はカガミが担当する形で進める予定であった。しかしこの石像は少年アルカードを指定している。その内容は当然、カードバトルの強さを測るものだろう。


「私の経験からすると、あの石像は神のカードを使うわ。ハンターの錆び付いたデッキじゃ、勝てないわよ。」


「なら、どうする?」


 悩みだすカガミ。彼女は焦っていた。少年アルカードの出血は、本人はかすり傷などと言ってはいたものの、明らかに大丈夫な量ではない。早々に帰りたいところだが、この部屋からの脱出は極めて困難と言ってもいい。何故なら、入ってきたはずの天井の穴がいつの間にか閉じられているからだ。


「…何をしている?」


 悩み抜いた末に、カガミは1枚のカードを少年に差し出す。そのカードは裏向きだったので、彼にはその詳細はわからなかったが、そのカードが何のカードかは予想できた。


「これが私の神のカードよ。これがあれば、貴方のデッキでもあれに勝てるかもしれない。」


「俺に他人のカードは使えないぞ。」


 他人のカードを使うことはできない。白紙になってしまうからだ。しかし…


「神のカードは例外よ。封印直後は誰が持っても使用条件のみが記載された特殊な白紙状態で、バトルで使用して初めてその内容が判明する…神のカードは持ち主にあわせて変化するの。」


「…それを俺が使ってしまえば、所持者が俺に固定され、お前は使えなくなる。わかって言っているのか?」


「勿論よ。」


「…」


 カガミが差し出すカードを、しかし少年は拒絶した。カガミが少年アルカードに対し文句を言おうとしたその時、彼はカガミに急接近し、彼女を押し倒した。


「ちょ、何す…!」


 何すんのよ!とでも言いたかったのだろうが、それはできなかった。強烈な爆発音と共に壁と天井が吹き飛んだからだ。瓦礫が2人を襲う。


「…ゲホッ!ゴホッ!…はぁっ…!ちょっと、アル!大丈夫!?」


「…」


「アル!アル…!」


 少年アルカードは血まみれだ。彼が庇ったので、カガミは無事だったが、彼の背中には鉄製の棒が幾つも突き刺さっている。恐らく石壁を支えていた骨組みだろう。


「…すまん、意識が飛んでいた。」


「アル…!」


 少年アルカードの意識が戻った事に安堵したカガミは、爆心地を見て目を見開く。そこには一人の女が立っていた。


「見つけましたよ()()()。」


「…カラス…!」


 カガミがカラスと呼んだその女は、カガミ同様の真っ赤な髪が特徴的で、腰に一本の太刀を下げている。


「へえ…あれが神のカードを守る番人ってやつですか。お嬢様を連れ帰るついでに、神のカードを貰っていくのも、ありですね。」


「やめなさい、カラス。番人は()()が嫌いなの。」


「おお、怖い怖い。と言っても、私はただ地面を爆破しただけですよ。その程度でズルなどと言われるのは…」


 この墓所は歴史的な遺産でもある。それを破壊して、悪びれる様子のないカラスに、カガミはイライラする。それに、今はこの女にかまっている場合ではないのだ。


「アル。私がカラスの相手をしている間に、神のカードを入手して。」


 小声で少年アルカードに話しかけるカガミ。しかし、その言葉を彼は無視した。


「おい、お前。俺とバトルしな。」


 そう言ってカラスにバトルを申し込む少年。しかし呂律が回っていない。明らかに、様子がおかしい。実はこの時彼は、大量の出血のせいで思考力が大幅に低下していた。


「へえ、少年。勇気がありますね。ですが、君はハンターなのでしょう?この私に太刀打ちできるとは思えませんがね。」


 カラスはカガミを連れ帰る為に放たれた刺客。カードバトルの強さはかなりのもの。神のカードを持つカガミでも、神のカードを使わなければ絶対に勝てないと考える相手であり、一般的なハンターでは歯が立たない。しかし…


「お前そんなに強いのか。なら、お前を倒す事で神のカードを手にする資格とやらを証明しようじゃないか。良いだろう?」


『否。』


 少年はカラスを退ける事と神のカードを手にする事を同時に行おうとしている。


「ならば、ハンデをつけよう。俺の初期手札は1枚、ライフは1。これで勝ったら認めてくれるか?」


「ちょっと!?」


『…よかろう。』


「だとよ。」


「少年…私を舐めているのか!」


 カラスは激怒している。当然だ。だが少年はそれを気にも留めていない。


「アル!?何考えてるの!?」


「俺はカード()()()をしたいんだ。」


 彼はカードケースから丁寧にデッキを取り出す。綺麗なスリーブに入ったカードは、大切に扱われていた事がよく分かる。バトルを行う為の魔導具、バトルボードの上にデッキをセットし、カラスを挑発する少年。売られたバトルは買う、とでも言うかのように、カラスもまたデッキをバトルボードにセットした。


 しかしその直後の事だった。


「アル!?」


 少年は倒れた。駆け寄るカガミ。カラスは話にならん、とデッキをボードから外そうとする。が、それは一つの音に遮られる。


『続けよ。』


 少年のデッキを見つめる番人の目は、赤かった。

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