銀白の騎士フィッダブヤド
「これで《大鎧の狂戦士》を手札に戻しつつ、デッキから戦闘力11の《大鎧の決闘者》を使用するぜ!」
狂戦士の全身から吹き出していた煙が白くなり、霧のようにその全身を包み隠す。その後赤い模様の光が消え、黒い影すらもぼやけて見えにくくなる。暫くして、バサッという音と共に煙が払われ、中から赤いマントを身に着けた大鎧が出現した。鎧の形状はスマートになっていて、色は赤と白。模様は金色に光っている。
《大鎧の決闘者》
メインカード
戦闘力:11
「戦闘力11!?強すぎませんか!?」
「だろ?魔力めっちゃ持ってかれるがな…」
カツラの様子はあまりよろしくない。戦闘力10を2連で出した直後の11だ。消費魔力は凄まじいだろう。
「だから、これで終わらせるぜ。」
「くっ…!」
カツラの手札は3枚、ただしそのうち1枚は今は使えない《大鎧の狂戦士》、更に1枚がこれまた使用できない《農民騎士》。実質手札1枚であるが、彼にはこのターンで勝つヴィジョンが見えているらしい。
全員がカツラの使う最後の手札に注目した。その時であった。
「危ない!」
最も早くそれに気づき反応したのはAであった。しかし、遅かった。
「あぐっ!!」
小さな針のようなものがボテンの背中に刺さる。全身が痺れたように動かなくなるボテンだが、まだどうにか喋る程度はできるようだ。
「だ…れ…?」
その言葉に反応したのか、針が飛んできた方向から殺気を感じたA。即座に抱えていた子ども達を下ろし、石を拾って投げようとする。しかし、次の針が飛んでくるのはAの動きより速かった。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!」
2発目の針もボテンを狙って飛ぶ。しかしその前に、庇うように飛び出したカツラの足に命中した。瞬間、半実体化していた決闘者が消える。
「魔力を吸い取っているのか!?」
この針の性質を理解したカツラは即座にボテンの背中の針を抜いた。妖精にとって魔力は血液のような物。枯渇すると生きていけなくなる。ボテンのダメージが異常に大きいのはこの為である。周囲をよく見ると子ども達が全員倒れているが、ボテンの魔力が切れたことで洗脳が解けたせいであろう。
「ぐあっ!」
針を飛ばしていた人物にAの投石が直撃した。直後、その茂みから一人の騎士が現れる。さらにその部下と思われる兵士が3人ほど後に続いて出てきた。兵士の一人がボテンに剣を突き刺そうとするが、カツラが庇う。
「いっ!!!だぁ…」
カツラの肩に剣が突き刺さる。
「カツラ!ボテン!」
剣を引き抜いた兵士は再度突き刺そうとするが、Aの飛び膝蹴りを顔面に受け、吹っ飛ばされて気絶する。
「大丈夫、ですか!?」
気絶していた子ども達を木の影に隠したベニテが、ボテンとカツラに駆け寄る。カツラは痛みのせいか気絶しているようで、ボテンも意識こそあるものの、動ける状態ではない。
「誰ですか!貴方達は!?」
剣を抜き、攻撃をしようとする2人の兵士を騎士が止めた。銀色の綺麗な兜を外し、ゆったりと礼をする。
「私はフィッダブヤド。シュブダウラ王国の銀白の騎士なり!」
「どうしてこんな事をするんですか!?」
「子ども攫いの悪妖精の討伐にね。ついでに、国宝のデッキを持ち逃げした異世界人からそれを取り返す命も受けている。」
ボテンとカツラを見ながら言う。
「異世界人…?」
「ああ、そうさ。魔王討伐の為に召喚した異世界人が国宝のデッキを持って逃げたのさ。厳つい顔の男でね。丁度そこに倒れているやつのような。」
カツラの事だろう。先程のバトルを見て、カツラが異世界人だと判断したのだろうか。
「異世界人は他人のデッキが使えるのさ。《大鎧の決闘者》を切り札としたデッキ…我が国の宝で間違いないね。」
そう言いながらカツラのデッキに手を伸ばすフィッダブヤド。しかし、その手を蹴り飛ばす者がいた。Aだ。
「何をするんだい?少年。」
「…バトルしようよ。」
「はっはっは。何を言い出すかと思えば。状況を理解しているのかね?私にはバトルをする必要性が感じられん。」
「その兵士、カードだろう?ベニテなら、消せるんじゃないかな。」
「…っ!」
フィッダブヤドの従える兵士達は全て、彼のカードが実体化したものであった。カードの実体化は魔力を使って行う。そのため、より強い魔力には無力となってしまう。そして、妖精は人間とは比べ物にならないほどの莫大な魔力を保有していた。戦闘能力の皆無なベニテでも、魔力の流れを乱して実体化を解除させる程度は可能だ。
「やっぱり。偽装しているみたいだけど、そのカードには見覚えがあったんだ。」
少年は言って、ふと気がつく。見覚えはあってもどこで見たのか全く思い出せない。まだ記憶は穴だらけのようだ。
(う〜ん、さっき色々思い出せた気がしたんだけどな…)
「というわけで、人数はこっちの方が有利なんだ。見たところ、君自身はそんなに強くないようだし、殴り合いだったら僕が勝つんじゃないかな。でも僕はこれで勝負したいんだ。」
デッキケースを見せつける少年。フィッダブヤドは暫く悩んでいたようだが、最終的に首を縦に振る。
「良いだろう。そのバトル、受けて立とう。」
「そうこなくちゃ。」
2人はボードにデッキをセットし、向かい合った。
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