自由を求めて、
今、私は自由だろうか。
或いは、これから自由になるのだろうか。
下へと流れて行く景色を見ながら、ふとそんなことを思った。
ちょっとした遊びのつもりだった。見つかっても少し怒られるくらいの、イタズラがしたかった。
或いはそれは、私を見てくれる誰かがいることを確かめたかったのかもしれない。
だから私は進入禁止の文字を無視して、屋上へと足を踏み出した。
世界は、思っていたよりずっと、広かった。
眼下の街並みはどこまでも続いていて、上では無限の空がそれを覆っている。
きっとこの瞬間「私」は、初めて自由だった。
子供の内は自由だと、大人は言う。
大人になれば何でもできると、子供は言う。
自由と義務は表裏一体であると、大人は教える。
ならば「自由」は存在しないと、少年少女は反論する。
どうだってよかった。
目の前にはどこまでも広がる世界があって、屋上には私が居る。
私だけが居る。
何物にも、何者にも邪魔されない今、ここでなら。
私は何だってできる気がした。
フェンスを越え、恐る恐る両手を自由にし、口の前に持っていく。
大声で、叫んだ。
何を言ったのか、自分でも分からない。ただ、感情をぶちまけた。
そして、全てを出し切った私は足を滑らし──