始まり ※三人称
何となく思い立って投稿してみました。
*⑅︎୨୧┈︎┈︎〇〇視点┈︎┈︎୨୧⑅︎*
数ある世界の一つ、ソートニア。
その世界の五大国の一つであるアルメラ王国のルクナティア公爵家のタウンハウスは賑やかな話し声で溢れている。
「ねぇ、もうすぐよね。公爵様の出産。」
「もうあんなに大きなお腹だものねぇ。マリンの子供も生まれたのだし。」
「ついこの前の春に王女殿下がお生まれになったでしょう?王宮の友人に自慢されちゃったのよね。早くこちらもお生まれにならないかしら?」
楽しくお喋りをしているのはルクナティア公爵家に努める侍女達だ。彼女達は職務に忠実で今お喋りをしているのは単に休憩時間だから。そうでなければ、怖い侍女長に怒られてしまうだろう。
「父上、母上。もうすぐですよね。僕が兄になるのは。僕は妹がいいです。」
「まぁまぁ。妹か弟かは分かりませんわよ?すべては神からの授かりものですもの。」
「そうだね。でも僕は娘だろうが息子だろうが愛せる自信があるよ。なんて言ったって僕とエリーの子供だからね。」
「ふふっ。それは嬉しいですわ。ですがレオンだけでなく私だって娘でも息子でも愛しますわよ?レイと同じように、」
「父上と母上は相変わらずですね…」
こちらはルクナティア公爵のエリザベスとその旦那の王弟レオンハルト、そして八歳の息子レイモンドだ。家族仲が良く(レイモンドは両親が仲良すぎだとは思っているが)、穏やかに話している最中に急にエリザベスが苦しみ始めた。
「うっ、うぅぅ。」
「母上ッ。どうなさったのですかっ?まさか、死……」
「エリー。大丈夫かい?取り合えず部屋に行こうか。もうこの時期だ。準備はされているよ。」
横抱きにされながらレオンハルトに運ばれていくエリザベス。そんな中レイモンドは自身の母が死ぬのではないかとオロオロとしている。レオンハルトはそんなレイモンドに構う余裕がなく放っておいてしまっている。
そんな中、レイモンド付きの執事見習いがレイモンドに説明しようと声をかけた。
「坊ちゃま。公爵様は産気づけられただけです。ですので大丈夫ですよ。」
「どこが大丈夫だっ。母上はあんなにも苦しそうにしているのだぞっ。」
「出産とはそのようなものなのです。命懸けで行うようなものなのです。」
「そうなのか?母上は大丈夫なのか?」
「えぇ。きっと大丈夫でしょう。
…ただ、私は女性ではありませんので詳しいことは分かりませぬが。」
最後のは小声で言っており安堵の気持ちでいっぱいだったレイモンドには幸いにも聞こえることはなかった。
そんなこんなで無事ルクナティア公爵家に第二子の長女が生まれた。
彼女の名前はルルシーナ。ルルシーナ・メラ・ルクナティア。銀髪に紫の瞳をしたとても綺麗な赤子だ。そう赤子だというのに綺麗なのだ。ルルシーナにはそのような雰囲気がある。
そしてルルシーナの魔力測定の時。ルルシーナの手を鑑定機能がある石板の上に置くと一部の者の頭に直接声が響いてきた。これは念話に似ている。
『彼女、ルルシーナは闇属性を持っておる。ただそれを公にするのはいけないぞ。』
このような声がその場にいたエリザベスとレオンハルト、そして王宮にて執務をしていた国王フィリップの頭に響いた。そしてフィリップには次の言葉も続けられた。
『ルルシーナは××の名を別に持つ〇〇の後継者だ。そなたの尽力には礼を言う。そなたが真実を告げるまで彼女の記憶の一部と瞳を封印しておこう。』
そうして○○はフィリップに感謝を告げ重大な役目を与えた。
ルルシーナが生まれえてから二年の月日が流れた。現在もルクナティア公爵家のタウンハウスは賑やかな溢れている。
「ねぇ、ルルシーナお嬢様ってなんだか不気味よね。ほとんど泣かないし。」
「そうかしら?とても可愛らしい方よ。」
「あ、でもさ私この前見たんだよね。お嬢様が何もないところに向かって話しかけているところ。」
ルクナティア公爵家に努める侍女達は職務に忠実である。だからこのように陰口を言おうとも外部の者たちにはそのような事は言わない。それでも一緒に働いている仲間には伝えるのだ。
「レイおにいさま。このごほんよんでください。」
「もちろんだよ、ルル。僕の可愛い妖精さん。」
「ルル様は本当にこの絵本がお好きですねぇ。」
「はい!とってもすきです。そうだっ。ヴィンスもいっしょによみましょう。」
「そうだね。ヴィンセントもおいで。」
「はーい。レイさん。」
さてさてこちらはレイモンドにルルシーナ。そしてルルシーナの乳母のマリンと乳兄弟のヴィンセントがいる。彼女たちは仲が良くてほとんど一緒にいるのだ。レイモンドにも乳兄弟はいるのだが彼の役に立とうと別の場所で勉強を頑張っており、今ここにはいない。
「ルルも明日で二歳だね。」
「はいっ。レイおにいさまにもっとちかづけるようにかんばります。」
「それは嬉しいよ。僕の妖精さん。あぁ、ルルが可愛い過ぎる。」
最後のレイモンドの言葉に首をかしげるルルシーナ。そんなルルシーナも明日で二歳になる。
さてさてこれからルルシーナはどんな人生を歩んでいくのだろうか?〇〇はそれが楽しみでならない。