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時の代償

作者: 鳴瀬 斉

長編が進まず短編に逃げた。

すみません笑


誤字脱字すみません。


彼女が居ない。


何処にもいない。



彼女のお気に入り


庭の泉の隣に置いてあるロッキングチェア。



彼はそこに呆然と立ち尽くしていた。



────────────────────





「ルイス?ルイスー?」



彼女が呼ぶ声がする。




「カミラ、ここだよ」



彼女が振り向く。


「もっとわかりやすい所にいてよ?」



頬をふくらませながら彼女は睨んでくる。



「ロイ様が呼んでるわ」


「何故?」


「さぁ?私にはわからないけど…ほら、早くいってらっしゃい!」



ロイ様が俺に用など無いはずだ。


ロイ様とは先程の彼女カミラの直属の上司。

俺の直属ではない。


でもまぁ直属の上司では無いにしろ上司は上司。

敬うべき存在であることには違いなし断る理由もない。



ここは神が住まう場所、国、世界と言うべきか。


人間は異常に神に願ったり敬ったりするが基本的に人間と大差ない。仕事、遊びなどをして生活している。違う点といえば姿形が違うこと、人間側からは基本的には見えないこと、生きる年月が違うことだ。だが生きる年月については個人差があるので一概には言えない。人間の神に祈ったから叶ったなどなんだのはこちらから言えば仕事の1部に過ぎない。人間にも伝統などの類はその一族が代々受け継ぐように神にとってもそういうものがある。もちろんそういう神だけではない。


俺や彼女、カミラは代々受け継いできた一族の者だ。


俺は罪を犯したものを罰したりその罪によって生まれた歪みを正す役目を彼女は時を司り、時の歪や時を守る役目を担っている。



「どういうことですか?」


俺は敬うべきだと思っているにも関わらず完全に凄む勢いだった。


「詳細はわからないんだ。」


ロイ様の補佐管を務めているディランが言う。


「はい?」


「落ち着きなさい。ルイス。」


「ですがっ…」


「今までにも前例がない。我々の域のことでは無いかもしれん。」



我々の域ではない。それは人間に関係のあるということだが俺のように人間に対して罰を与えたり関わることがないカミラになぜそんなことが有り得る?


「わしもディランも調べてみる。カミラの1番近くに居るのはお主じゃ。気を付けてやってくれ。」


「…分かりました。なにか分かったらすぐにっ」


「分かっておる。」



──────────



広い庭に白い花が咲き乱れる。その奥地にある泉。


多数の白い花と多数の緑の植物


そして透き通る天色の泉。


その横にあるロッキングチェアに座り瞳を閉じている彼女を見つめる。


彼女の膝上にはバーマン


足元の両側にはメイクーンとシェパードが居座っている。


いつ見ても少々厳つい…。


音を立てないように近寄る。


彼女まであと少しという所でシェパードの耳がピクリとさせ起き上がる。


メイクーンは瞳を開けたが動かない。


視線を彼女に戻すとゆっくりと瞼を持ち上げ


常磐色の瞳が顕になる。



「ルイス、ロイ様なんだったの?」


「いや、特に何でもないよ。仕事の話だ。」


「…そう、ロイ様がルイスに仕事の話ねぇ…」


疑わしそうにカミラがルイスを見る。


「それよりカミラ変わったことはないか?」


「え?何突然何も無いけど?」


「そうか」


俺はカミラが座るロッキングチェアの傍に腰を下ろす。


そこに狼が寄ってきて上空には鷹が円を描いている。


神には懐かれやすい生き物がいる。


それが彼らだ。


こうして彼らと彼女とゆっくりすることはよくある。


仕事で忙しい時期もあるが大抵空いた時間はここにいる。


いつも大体一緒だった。


ロイ様とディランに言われた。不穏な予兆。


そんなものないと思っているのに…


ディランの感じた予兆が


外したことの無い実績があって今の地位に着いた事も相まって


否定できずにいる自分に苛立ちを感じながら


いつもの穏やかな空気の中にいた。




──────────


「ルイス!お疲れ様〜」


「お疲れ」


「そこ私のお気に入りなのに!変わって!」


「…はいはい」


「ふぅー…。」


彼女は座ると同時にいた気を吐く。


「…なんか顔色悪くないか?」


「ん?そんな事ないよ?確かに少し忙しくて疲れてるけど」


「忙しいだけならいいけど」


「なになに?心配してくれるの?」


「うるさい」


「ふふ…」



──────────


それから半年後───…


その半年はカミラの身体に少しづつ変化をもたらした。


少しづつ弱っていくカミラに先ず俺は仕事…


時の管理を辞めるように言った。



「嫌よ。認めて全て任せてもらえるようになって1年よ? 」


「だが確実に体が弱ってる。そのうち力もっ…いや、力だけじゃない命を失うかも…」


「ん、もう!やめて!大丈夫だから!ね?」



否定する彼女。だが明らかに弱っており


今もいつものロッキングチェアに背を持たれ顔が白く赤みがなかった。




───────────



それから一年後───…。


彼女は力のほとんどを失い時の管理権は彼女にあるものの彼女の人類たちに任せていた。

ロッキングチェアに座りじっとしている彼女は何時消えてもおかしくないほど儚く見えた。


「まだ…見つからないのか…。」


掌に爪がくい込む。握り込み過ぎて爪が刺さり液体が滲む。すると彼女がふっ──と瞼を持ち上げ「──ルイス?」消えそうな声で俺の名を呼ぶ。


「あぁ、こんなところにいて大丈夫なのか?」


「ここが1番落ち着くの。」


「そうか。」


「ねぇ、ルイス?」


「ん?」


「ルイスもここが好き?」


「あぁ、好きだよ。」


「そっか。」と言ってふっと頬を染めて微笑む。


俺はその彼女の表情に見惚れてた。




「ルイス、カミラ」


「ディラン…ロイ様」


「やはりここに居たんじゃの。カミラや、少しルイスを借りてもいいかの?」


「ふふ、ロイ様。借りるも何も私のものじゃないわ?」


「そうかのぉ?では少し借りてゆくぞ。」


「えぇ、いってらっしゃい。ルイス」



「あぁ…。」




ディランとロイ様の後をついていく。


ふっと風が前から後ろへ吹いた…ような気がして。


彼女の方へ振り向いた。



するとさっきまで居なかった膝の上にバーマン、足元の両側にメイクーンとシェパードがいつもの定位置にいた。いつも守るかのように。



「ルイス…早く来い」


「あぁ」



俺は何故かもう一度振り返り彼女がいるのを確認してディランとロイ様を追いかける。



着いた場所はロイ様の執務室


年代物のソファに座るよう促される。


「それで?わかったんですか?」


「一応はの…ディラン」


「はい、カミラの身体に異常をきたしているのは時の歪みによる代償だ。」


「は?時の歪みの代償?カミラは時の移動などしていたい。」


「確かにカミラ自身はな。」


「どういう意味だ。」


「人間界でタイミマンシというものができたようだ。それは私たちが知るタイムトンネルのようなものだ。」


「だから?」


「ただしタイムトンネル自体代償を払うもの。元々タイムトンネルというものが存在しなかった人間界でのタイムトンネル。ある程度は人間界で本人が払うことになるがその程度の代償で時の歪みは収まらない。そして人間界に時の管理者はいない。人間界も我々の世界も含めて時を管理しているのも責任をおうのも我々神。そしてその責任者がカミラだった。」


「は?だからその代償がカミラにと?は?」


「落ち着け、ルイス」


「だがっ…」


ロイ様の方へ振り返るといつも穏やかに頬笑みを浮かべるロイ様が見たことない険しい顔をしていた。


「人間への直接の関わりは禁忌だ。どうにか救う方法を見つける。ルイスはカミラの傍にいろ。」


「……っ──はい…。」



──────………




どうにか救う方法はないのか。


頭の中がぐるぐるとまわる。


どこを歩いている所がどこかもわからずはっきりしない。


どうしたらいい。どうする。どうしたらカミラを助けられる?


いくら考えても答えなど見つからない。


目線が下に落ち考えながら歩いていると白い花が視界に入る。


ふと顔を上げるといつもの庭の入口まで来ていた。


「カミラ……」


何故か呼んでしまった名前。



道沿いを歩き泉がある奥地に向かう。


なんという感情も思っていないのに寧ろカミラを不安にさせないように落ち着いてからカミラの元へ向かうべきだと思っているのに…行かなければいけないのに足は早足になり徐々に早くなる。




最後の垣根を曲がったところ。


バーマンもメイクーンもシェパードもいつもの定位置にいる。







のに──…







彼女が居ない。


何処にもいない。



彼女のお気に入り


庭の泉の隣に置いてあるロッキングチェア。



俺はそこに呆然と立ちつくす。



「カミラ?カミラ……は?」


メイクーンとシェパードが寄り添ってくる。


ロッキングチェアの上に座っていたバーマンが立ち上がり俺の前にくわえていたものをぽとっと落とす。


それは常磐色の宝石だった。


「カっミラぁっっ───……」



─────────







神の死というものは形がなくなり存在していたことを示すための力の結晶、宝石が残る。


カミラが死んだ。


何故カミラが死ななければならないのか…。


何故。









「ルイス、そろそろちゃんと休まないと今度はお前が死ぬぞ。」


「うるさい。まだ…死なない。」


「おい」




ロッキングチェアの傍を離れずずっと考え込んでいた。




許さない。


仕事とはいえ人間を守ってきたカミラが


何故人間に殺されねばならない。


許さない。タイムマシンを作った人間も


考えた奴も使った奴もまとめて潰してやる。




許さない。絶対に。


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