4話 四天王
「あのさ、四天王ってかっこよくね?」
キャシー北村の発言はいつも突拍子も無い。
放課後はいつも、近所の公園で無駄話をしている。
特に生産性のない会話をしている。
「おおかっけえ!まじ不良じゃねえか!」
東はなんでも乗るバカだ。
「俺らがこの学校の四天王になればいい。」
珍しく玉田が乗り気だ。
この不良ブームにはあんまり乗り気じゃないと思っていたが。
「よし、じゃあ俺らがこの学校の四天王ってことで決まりだな!」
そんな簡単に決まっていいものなのか。
「はぁ~!緊張するぜぇ~!」
キャシーがガッツポーズをしながら言った。
「頑張ろうな!」
東は拳と拳を合わせ、パチッと弱々しい音を立てた。
「名前を決めよう。」
またもや玉田が提案した。
四天王に名前ってあるのか。
あまり馴染みがない。
「お、おう。じ、じゃあ名前はどうしようか・・。」
キャシーが若干引き気味だ。
「魔界暗黒邪龍四天王で。」
「・・・・・。」
「お、おう。それいいんじゃないか。」
玉田の勢いに北村が圧倒されている。
えげつないほどダサい名前だ。
高校二年生とは思えないセンス。
玉田は結構拗らせているのか。
「魔界?あ、暗黒邪竜だっけ?四天王として頑張ろうな!」
東がこの話題を閉めようとした。
確かにもうお腹いっぱいだ。
「魔界暗黒邪竜四天王」
という名前は玉田以外納得していないのだろう。
正しい判断ではある。
「待て。四天王の中でも順位を決めるべき。」
玉田が止まらない、空気を読めていない。
かなりノリノリだ。
「おおぉ。そ、そうだな。」
キャシーは完全に引いている。
確かに玉田がここまでノリノリなのは珍しい。
昔から”魔界暗黒邪龍”願望でもあったのか。
「何で決めようか。」
四天王の順位を決める会議が始まった。
「・・・・」
だれも発言しない。
そう、この話題はもう終わりたいのだ。
玉田以外誰も興味がないのだ。
「身長順でいいんじゃない。」
北村は明らかに面倒なようだ。
言い出しっぺのくせに。
「他に意見ないなら、身長順ね。じゃあ東から身長言って。」
「190㎝です。」
面倒くさそうにしてる割には負けず嫌いか。
「嘘つくな。158㎝だろ。」
「はい。」
「俺は173㎝で、玉田が170㎝な。」
僕は168㎝と答えた。
「じゃあ、俺がNo.1ってことで。玉田がNo.2な。田中が3で、東が4。」
言い忘れていたが、僕は田中だ。
完全に言うタイミングを失っていた。僕は田中だ。
東が悔しそうにしている。
30㎝サバ読むほどだもんな。
相当No.1の座を狙っていたんろう。
「北村は黒龍か。」
「俺が青龍か。」
「田中は赤龍で、東は白龍か。」
「ククク、面白くなりそうだ。」
玉田が痛すぎる。
こんなに痛いやつだとは思ってなかった。
そして東よ、白龍で喜ぶな。
「よし、じゃあ帰ろうか。」
北村は無視している。
四天王まではよかったが、暗黒あたりから興味がなくなったらしい。
全員が遊具から降り、砂場近くにあるカバンを持ち帰路につこうとした。
玉田はカバンの中からなにか取り出している。
「みんなこれ。魔界の石だから。」
全員玉田から逃げるように走って去って言った。
魔界暗黒邪龍四天王は解散した。