1話 不良になれない男たち
不良とは。
誰でも大体の想像はつくだろう。奇抜な髪型や服装でオラつく。仲間たちと喧嘩に明け暮れオラつく。タバコや酒を嗜みオラつく。
そんな感じだろう。
そんな不良に僕らはなろうとしている。
高校2年生が5日後に迫る春休みの終わり、友人達が自宅に泊まっていた。
春休みの宿題を写しに来ていた。別にウチじゃなくてもどこで良かった。きっと父の趣味で作った漫画部屋が目当てだろう。1時間もしないうちに、みんな漫画部屋にいた。
父の漫画部屋は、名作と呼ばれるものは完璧に押さえており、未来のヒット作になるであろう作品も取り揃えている。近所の漫画喫茶より、父の漫画部屋の方が居心地は良いと思う。
中学から一緒の北村が我が家の漫画部屋の噂を広げた。今ここには角刈りの北村、チビの東、物静かな玉田がいる。同じクラスの仲の良い友達だ。
彼らは何度かしかウチに来たことがないが、静かなこと以外いつも通りだった。
いつもは一冊読み終わるごとに無駄話が繰り広げられているのに、今日は一段と静かだった。
僕は既に漫画部屋を卒業している。自室でラノベを読んでいた。
僕はラノベを読み終え、一息ついた。その瞬間、ものすごい勢いでドアが開いた。北村と東が目を輝かせながら近づいてきた。ドアの隙間から、玉田はまだ漫画を読んでいるのが見えた。
北村と東が僕の肩を思い切り掴み、「今日から不良になる!」と叫んだ。
ここから僕らの不良ライフが始まった。