第六話:第一の犠牲者
買い物を終えて家に帰り着いたのは、午後七時に近かった。
「影、風呂洗っといて」
「うん」
影が洗面所に消え、日向はテレビをつけた。ニュースを少しでも良いから観ようと思ったのだが。
「ーっ!?」
画面に映っている場所とテロップを見て、思わず息を詰めた。
「ここは、」
アナウンサーが早口で概要を告げる。
「…亡くなっていたのは、近所の団地に住む乃村正人くん七歳です。正人くんは今日一度学校から帰宅したあとで遊びに出掛けました。しかし、正人くんはこの公園に散歩に来ていた男性によって変わり果てた姿で発見されました」
首から下の男性が画面に映る。恐らく遺体の第一発見者なのだろう。
「ほんとにびっくりしました。しかも知ってる子だったから尚更ねー目を疑いましたよ。腰を抜かしながら必死で救急車を呼びました。まさか自分のまわりでこんなことが起こるなんて、未だに信じられません」
乃村正人。知っている。一度中学生に絡まれているのを助けたことがある。それ以来ひどく懐かれ、時々家に遊びに来ることもあった。その正人が、死んだ。殺された?
「嘘だろ、」
しかも正人がよく遊んでいた近所の公園で。
「!」
背後で突然ドンッと鈍い音がして、日向はハッと我に返った。
「影!」
影がダイニングの入口で踞っていた。顔面は蒼白で、息が荒い。胸を掻き抱くような体勢。
「おい、大丈夫かっ!?影!」
「…い、さん?」
「苦しいのか?救急車呼ぶか?」
影がふるふると力なく首を横に振る。支えた体が嘘のように熱い。
「…本当?今ニュースで言ってたこと、本当?」
正人は影にも懐いていた。日向を抜いて二人で遊ぶこともあった。
「…影、」
「また、いなくなるんだね…」
ギクッ、と日向の体が強張る。
「影、」
「…みんな、いなくなるんだよね。僕の前から」
そう虚無的に呟きー影は意識を失なった。