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第四十話:奈緒と玲治

一人の部屋に帰りついた奈緒は、はああっと盛大なため息をついてカーペットの上に大の字で寝転んだ。一気に色んなことがありすぎて、頭が痛い。少し重たい瞼をこじ開け壁掛け時計を見れば、十時半を回っていた。だが腹はすかず、風呂に入る気にもなれない。

(あたしは…よく平気だったな)

ぽっかりと体の中心に穴を開けられた御鶴城の死体。いくら臓物ごと綺麗さっぱり抜き取られていたとはいえ、常人ならば吐いたり発狂したりしそうなものだが奈緒は眉をしかめるだけにとどまった。やはりあたしはおかしいのだ、と自嘲する。

(それに、)

カラーコンタクトではないのに、血のように赤い眼をした少年の存在。“彼”は一体何なのだろう。影の裏の人格ーと考えれば良いのだろうか?(二重人格…ということか?)

心の…鎧…。

(かなり物騒な性格ではあったけど…)

奈緒に敵愾心はなかったようだから、やはり影がピンチになると現れるのか。だが、

(それだと、九連の言っていた“痣”について説明出来ていない)

通常紫色をした痣が、いきなり赤くなることなどあるのか。そしてまた紫色に戻ることなど…。

(それに、九連を襲ったっていう体の激痛…。“痣”と何か関係あるのだろうか)

奈緒はじいっ、と考え込んでいたがやがて気だるげなため息をついて思考を中断した。

(煙草でも吸おう…)

うんせ、と掛け声一つ奈緒は立ち上がると台所に行く。換気扇を回し、美味そうに一服する。(あたし一人だから、わざわざ換気扇の下まで行く必要はないんだけどね)

苦笑していると、放った携帯が着信音を奏でた。

(ん、)

液晶ディスプレイには、登録していない番号が表示されている。

(誰だ?)

普段なら知らない番号から着信があれば無視するのが常なのだが、この時は電話を取るべきだと何かが奈緒に告げていた。

「はい、もしもし…」

「奈緒さっ、奈緒さんっ…?」

「玲治?」

聞こえて来たのは、玲治の泣き声だった。どうして玲治が奈緒の番号を知っているのか不審に思ったが、玲治の様子にそれどころではないのだと感じる。

「玲治?何かあった?」

「にい、兄さんが遊子に連れて行かれたっ」

「え?」

「兄さんが俺を見て、久しぶりに笑ってくれて…。なのに、なのにっ」

「落ち着きなさい!」

以前“屋敷”で仲間とともに暮らしていたときのように、奈緒は玲治を一喝した。無意識だったが。

「な、奈緒さん…」

「ちゃんと聴いてるから。落ち着いて、何があったのか順序だてて説明して」

無理か、と奈緒は懸念したが意外にも玲治は声を抑えつけて話し出す。奈緒はただ黙って彼の話を聴いていた。




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