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第三十三話:遊子と梓

奈緒が校舎内に突入したあと、梓は気絶している玲治と日向を昇降口まで運んでしゃがみこんでいた。玲治に絞められた首がまだヒリヒリと痛みを訴えてくる。それでも梓は玲治を嫌いになったり見損なったりすることができない。冷たい手を握り、奈緒が戻るのをただ待っている。だが、

「結局こうなったかあ」

という女の楽し気な声に静かな時間はあっさり終わりを迎えた。

「芦原、遊子…っ!」

艶のある黒髪を腰半ばまで伸ばした、黒いスーツ姿の女が、ん?と小首を傾げる。

「あたしを知ってるの?詩堂梓さん」

遊子は愉快げに梓を見下ろしている。

「……」

「そっちこそ、と言いたい顔ね。種明かしをしてあげる。玲治に聞いたのよ」

「!?」

玲治が遊子に私のことを?梓には信じられなかった。それが表情に出ていたのか、

「正確に言えば、…玲治の脳に、ね」

遊子が告げる。

「脳…に?」

「玲治は少し暗示にかかりやすい体質でね。朝晩決まった時間に検査するの」

「……」

頭が痛い。遊子の言葉を聞いてはいけない。何かが警鐘を鳴らすのに、聞きたがっている自分もいる。

「そう。何か洗脳されていないか、暗示にかかっていないか。玲治が見て聞いて感じたこと…あたしたちはそれら全てを共有することができるのよ」

「…っ!!」

梓は愕然とする。

「玲治の頭の中、どうなってると思う?ほとんど詩堂梓さんーあなたのことと、玲治の兄ー佳那汰のことで構成されてるのよ」

「!」

「だからこそ、玲治をどうやったら働かせることが出来るか、手にとるように分かるの。凄いでしょ」

にっこり笑う遊子を、梓は睨み付ける。怒りのあまりに体がぶるぶると震えて止まらない。

「お前…っ」

「今日は知り合いに貸し出してたけど、首尾はあまり良かったとは言えないみたいね」

遊子が玲治に触れようとしたので、梓はそれを阻止しようと玲治を庇おうとした。だが、

「邪魔だよ」

遊子に加減なく殴られ、頭が揺れた。

「っ」

「玲治はあたしたちの代替品なんだ。おいそれとくれてやる訳にはいかないんだよ」

遊子は睨み付けてくる少女の視線を受け流し、玲治を背負い日向に眼を遣った。興味深そうに、

「ふぅん、」

「遊子!?」

遊子は懐かしい声に、嬉しげな笑みを浮かべた。


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