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第二十九話:日向vs.玲治

バトルってほどではないです(笑)

肩で息をしながら、日向は自分の前に現れた見知らぬ少年を怪訝そうに眺める。少年は観察するかのようにじっと日向を見ている。

「誰、お前」

相手が動きそうにないので、日向から誰何の声を投げる。しかし少年は応えず、瞬き一つしない。

「用がないなら俺はいくぞ。急いでるんだ」

少年のすぐ横をすり抜けた瞬間、

「っ!?」

右腕を捻り上げられ、日向は膝をついた。

「いっ…!何すっ…」

「九連日向だな」

「誰だ、お前っ」

「訊いているのはこちらだ」

腕を掴む力が倍加し、日向は呻く。日向は顔を痛みにしかめながら、少年の顔を見る。ぼんやりとした覇気のない、何を考えているか掴めない眼。顔色は悪く、いつ倒れてもおかしくはなさそうなのに日向を押さえつける力は強かった。

「お…れが九連日向だ。何で俺の名前を知ってるんだよ…」

少し力が弱まる。

「お前が九連日向。なら尚更ここは通せないな…」

「な…んでっ…」

「絶対に通すな、と言われているから。だから、通さない…」

御鶴城の関係者か、と日向が推測する。

「お前、御鶴城の仲間か?」

「仲間…ではないな」

みしっ、という骨の軋む音がしたが、そんなことよりも、

「影は何処だっ!!」

恐らくは御鶴城と一緒にいるであろう影が心配でいてもたっても居られない。少年が喉の奥で陰鬱に笑う。嫌な感覚に襲われる。

「九連影なら、御鶴城先生とお楽しみ中だよ」

「っ…!!」怒りで頭が白くなる。手を振り払おうとするのを、少年が静かな口調で止める。

「無理に動かないほうが良い。腕…折れるよ」

「影が危ないのに…、何もしないでいられるかよっ…!」


「馬鹿な奴…」

ポツリ、と少年が言った瞬間、日向の左腕に言葉で表現できないほどの激痛が走った。

「……っ!?」

あまりの痛みに涙と鼻水がぶわっと溢れた。

「だから言ったろ、折れるって」

「っう……」

脂汗がわき出る。「お前を通すわけにはいかないんだ」

「…んでだよ。俺や影がお前に何かしたかよ」

痛みを堪えながら日向は問い質す。腕が折れたら話すのも困難な筈だが、日向は苦しげながらも言葉を紡いでいく。少年が眼を細める。

「言われたことを成し遂げたら、兄さんが喜ぶからだよ」

「…は?」

「正直君ら兄弟には毛ほども興味はないよーこれは兄さんのためだから」

兄さんって誰だよ、と心中で毒づく。どうせろくな兄貴ではないだろうと思う。「意味…分かんねぇ…」

日向が吐き捨てると、少年が首元に腕を巻き付けてきた。ぐっと圧迫され、日向は苦しさに喘いだ。

「……っ、はな…せ」

「君と喋るのも飽きた。…というより不愉快だから眠っててくれる?」

気管を絞め落とす気だ、と日向は悟る。気を失う訳にはいかない。だが少年を振り払う力は出ず、迫り来る暗闇に身を固くするしかできないでいる。

(くそっ、影を助けなきゃいけないのに…)

自分の力のなさに、日向はどうしようもない苛立ちに襲われる。回された腕に力が入り、気管に更なる負荷がかかる。

「ぐっ…」

「御鶴城先生の用事が済むまで寝てれば良いよ」

少年の冷たい声を聞くと同時に、日向の意識は途切れた。

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