表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

どうやら私死んだらしいです

作者: 深水晶

 気付いたら私、死んでいたようです。でも、今、自分がどこにいるかさっぱりなのです。不思議です。もしやこれが記憶喪失? 初めての経験です。死んだのも初ですが。


「レイス?」


 なんか中世の騎士っぽい鎧とサーコート?着た変な人がじっと私を見つめてきます。そんなに見られたら照れちゃう。


「おかしなレイスだな」


 レースって私のこと? でもヒラヒラな服は着てないよ。お気に入りの白い手編みのセーターに○ニクロのネルシャツ&ジーンズ、モコモコなファーのついたフード付きのキャメルカラーのダッフルコート。クリーム色のカシミアのマフラーとニット帽と手袋。雪国仕様のちょっとごつめな茶色のブーツ。

 雪掻きしようと外に出たら運悪く屋根雪が落ちて来たんだよね。目の前にいる男の人や辺りの風景からして春または初夏ってとこ。私、厚着しすぎ。暑くはないから、問題ないけど。


「いや、お前、死霊(レイス)だろ?」


 そうなの? 私、レイスっていうの? 知らなかった。


「頭が痛くなるな……」


 彼は額を押さえて呻くように言う。えぇと、御愁傷様です?


「おい、お前、何故ここにいる。いったい何をしている?」


 そんなこと聞かれてもさっぱりです。私が聞きたいくらいなのです。幸い死んでるから、お腹空いたり喉が渇いたりしないし、風呂洗濯要らずなのです。エコだね。



「あのな、この土地の債権者は、ここにお前がいると迷惑なんだ。だから退治または浄化しに来たんだが、お前まだ悪霊になってないだろ?」


 悪霊とそうでない霊の違いってなんでしょう。


「思念に悪意や憎悪などの悪感情があったり、人に害をなすかどうか、あるいは死霊になって長い年月を経て元の記憶や人格を失って、それでいてこの世に執着があるかどうか、そういったところじゃないか?」


 なるほどなるほど、勉強になりますねぇ。私、記憶ないんですけど、もしかして悪霊、あるいはそれに近付きつつありますか?


「少なくともお前みたいに暢気な死霊を見たのは初めてだ。それより見掛けない姿だが、お前、故郷はどこだ?」


 どこって決まってますよ、日本国、日本海側の知名度低い某県の県庁所在地なのに山奥で、積雪時以外は庭で食料が採れちゃう超ど田舎ですよ。いや、雪を掘ればきのこでも山菜でも見つかるかもしれないですけど、面倒臭いですからね。地面に近いところはたぶん凍ってるし。


「なんだ、それは。聞いた事がない地名だな。雪が降るということはエリネア王国より北にあるのか?」


 エリ○ールだかネ○アだか知らないけど、そんな国は聞いたことないですね。


「お前、頭だけでなく耳も悪いのか? 察しも悪そうだし、生前は苦労したのだろうな、周りが」


 なんか良くわからないけど、けなされた! 謝罪と賠償、おっと、この場合は慰謝料か、とにかく心が傷付いたので相応の対価を要求するよ!


「死霊の癖に対価を要求してどうする。お前、触れるのか? 触れたとして使えるのか?

 死霊を視ることができるのは、神霊術の素養のある者だけだ。国に百人いるかどうかだ」


 心霊術? オカルトかなぁ。なんかあやしげだね。心霊とか言ってる人って詐欺っぽくて信用できないよね。


「お前が何を言っているのか良くわからないが、神霊術は神から賜りし御技だ。多くは先天的なものだが、後天的に授かることもある。

 後者の場合は同時に天啓を授かることが多く、後世に伝わる業績を残すことが多いため、聖神教会からは聖人認定を受けたり、国で重く扱われる者が多い。

 少なくとも詐欺呼ばわりする者はいない。お前は神霊術を目にしたことがないのか?」


 そんなものは知らないよ。っていうか、神様とか天啓とか聖人とか、ますますオカルトだね! そういえば、ここ、どこだろ? なんかおとぎ話か、ハ○ウッド映画か、アニメに出てきそうな感じの洋館だね!

 あ、ゲームにも出てきそう。謎解きとかホラー系とか脱出ものとか、あとはADV? やたらキレイな美少女とかイケメンとか渋い執事さんとか出てくるの。


「お前は何を言ってるんだ……」


 お兄さんも、乙女ゲーとかに出てきそうなイケメンさんだね! でも謎解きものとかホラー系だと、序盤で殺されそうな感じ。

 ほら、『こんなところにいられるか!』とか言って出て行ったら死体で発見される?的な。

 お兄さんイケメンだけど、そこそこプライド高そうで、人の言うこと聞かなさそうだし!


「何を言っているのか意味は良くわからないが、どうやらけなされているようだな。やはり、平常通り神霊術で浄化してしまうか」


 浄化って何?


「死霊や悪霊を神の御技と御力により浄化して、この世から消すのだ」


 浄化されると死霊は天国へ行くの?


「天国に行けるのは、敬虔な聖神教信者のみだ。死霊になるような現世に未練を残した存在は、この世にもあの世にも居場所はない。

 唯一天国に行ける方法があるとするなら、神の慈悲と奇蹟以外にはないだろう。諦めろ」


 えぇ~っ、それ、死んじゃうの? きれいさっぱり消えちゃうの?


「お前は元より死んでいるだろう。大丈夫だ、抵抗しなければ痛くない」


 なんかヒドイこと言われてる!? っていうかなんで私、消されるの?


「だから言っただろう。この家と土地の管理者がお前という死霊がここにいることを望まない。

 自分や身内が住むにも、他人に貸したり売ったりするにも、死霊付きの家など歓迎されるはずがないだろう。

 お前が悪さを働かず、人に害を及ばすことなくここを出て行くならよし、そうでないなら浄化する」


 え~、仕方ないなぁ。出て行けば良いの? でもここを出たらどこに行けば良いの?


「知るか。だいたいお前は何故ここにいる。お前はこの場所になにか縁があるのか、理由があるのか?」


 それがわからないんだよね。自分の死因も死んだ場所も覚えてるけど、ここじゃないのは確かだし、全然知らない場所なんだよね。

 どうして私、ここにいるのかな?


「そんなこと聞かれても、俺が知るはずがない。ここに未練がないなら去れ。迷惑だ」


 別に出るのは良いけど、どこに行けば良いの?


「それくらい自分で考えろ」


 お腹空かないし、眠くならないし、汚れないし、疲れないのは便利だけど、超暇なんだよね。

 本読めないし、ゲームできないし、そもそも物触れないから、一人しりとりくらいしかできないの。

 ねぇ、お兄さん、暇潰しに付き合ってくれる?


「は? お前、何を言っている!?」


 ものすごく暇で、何もすることないから、お兄さんの後をついて観察することにしました! だって自分では何もできないしね!!


「なっ、ふざけるな! 浄化してやる!!」


 お兄さん、何か変な厨二臭い呪文ぽいの唱えだしたよ。『唯一にして無二の、神聖なる天にまします父たる神よ』だって、ププッ。

 それにしても第一印象からだいぶ崩れてきたね。やっぱり見込み通り、二枚目半もしくはイケメン風脇役だね。本命やメインキャラには頑張っても勝てないの。


「……慈悲深き神の御力にて、この罪深き死霊を浄化したまえ!」


 おおっ、なんかピカッて光った。でも何も起こらないね!


「……何故だ……」


 イケメン騎士さんたら、ガックリ床に膝をついてプルプル震えてるね。イケメンが挫折に震える姿は絵になるね。

 これが私だとちっとも絵にならないの。世の中って理不尽だよね! 私ってば、か弱い乙女なのに!!


「……か弱いとか、言葉の意味間違えてるだろう……」


 このイケメンさん、打たれ弱そうだけど、なにげにタフだから消えそうで消えないモブかな?


「……神よ……」


 何をしたら良いか迷ってた私だけど、面白そうな観察対象(ターゲット)を見つけました。

 他にもっと面白そうな人見つけたら、そっちに移るかもしれないけど、できれば会話ができる人のが楽しいよね!


 私、死んじゃったけど寿命とかしがらみとか関係ないなら、好きに生きても良いよね!

 どうせ一部の人にしか見えないなら、覗き放題、観察し放題だよ!

 お姫様の生活眺めるのも面白そうだね。優雅で自堕落な生活とかしてるのかな。イケメンに跪かれて、モテモテうはうはなリア充生活満喫してる?


「やめろ! 不敬なことを言うな!!」


 ファンタジーな世界で人外とかケモミミさんとか美麗エルフとかいると良いな。

 老若男女問わず、キレイどころは目の保養、心の栄養だよね! 癒し系美人は性別問わず大好物です。

 聖人がいるなら聖女様もいるのかな? 清らかキラキラ癒し系美女で、なおかつ大きいお胸の方ならprprしたい。じっくりネットリ観察したい。名前呼んで貰えたら最高だよね。自分の名前覚えてないけど!

 腹黒ツンツン美女も大好きです。観察するだけなら実害ないしね! たまにデレっぽいの見られたら、ご褒美です!!


「あああぁああぁっ!! なんなんだ、こいつ! 頭おかしい!! 言葉が通じるのに会話が通じない!!」


 一人悶えるイケメンさんも面白いね! 本人はマジな辺りが特に。

 勝手に一人で歩き回っても良いけど、土地勘ないとこでは案内人(ガイド)がいた方が楽しいよね。案内&解説よろしく!


「……賢者様に相談しよう。どうにかしてこの死霊を浄化しないと」


 わぁ、賢者様だって! まるでファンタジーかおとぎ話みたいだよね。○ーリンとか○ンダルフとか○ンブルドアみたいな人が出て来るのかな。楽しみ!!


「……頭が痛い」


 ところで本当、私、なぜここにいたのかな? 世の中わからないことだらけだけど、記憶喪失ヤバイ。だって自分のことがわからないんだものね。

 でも、こわいとか、つらいとか、そういうの全くない。わくわくドキドキしてる。

 知らないことだらけって、何をしても新鮮で楽しいってことだよね!

 人間ってどんな環境も慣れるとドキドキわくわくしなくなっちゃうからね。

 つまらない退屈な人生より、山あり谷ありなエキサイティングでワンダフルな怒涛と波乱に満ちた人生のが、絶対楽しいよね! 結局は当人の気持ち、考え方次第だと思うけど。

 苦しむのも楽しむのも同じ時間の内なら、楽しむ方が良いよね。


 でも、どんなにおいしそうな食べ物があっても食べられなさそうなのが至極残念です。色気より食い気なタチなので。仕方ないけどね!

 なのでお兄さん、食レポよろしく!!

というわけで憑かれました。


一発ネタで出落ちなショート。


誤字衍字修正しました。

携帯で書く時は保存の二度押し注意しないとまずいですね(汗)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 浄化出来ないだけでなく、浄化しにきた人を暇潰しにしてしまうとは…レイス冒険の悪寒!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ