2017年3月末
>早苗のターン!
>舞を唆す
「なぁ陽輔ぇ」
「まだ言うんですか」
「だってよー」
都内のアパートの一室で、早苗が陽輔にまとわり付いている。
「もー、叔母さんたら~」
舞が困った顔で呆れ気味に溜め息を吐いた。
発端は、いつもの如く、早苗の我儘であった。
陽輔がアパートを契約した時は大人しくしていたのに、舞が下宿する予定である早苗の家から、電車で四駅と聞いて、気が変わったらしい。
そんなに近いなら、寧ろ一緒に住めば良いだろうと言い出した。
「いや、もう引っ越しましたから…」
「今からでも良いだろ」
「何言ってんのよ」
全く良くない。
陽輔も舞も呆れてしまった。
「なぁ舞」
「何?」
「陽輔と一緒に住めばさ、毎日楽しいぞ」
陽輔が作業をしている間に、早苗が舞に耳打ちして来た。
「えぇ~?」
「想像してみろって…同じ家に住んで、朝起きて挨拶交わして、行ってきますのチューして、夜帰って来たらただいまのチューして」
具体例を挙げて畳み掛ける。
「その気になったら、毎晩子作り出来るぜぇ?」
「ひぇっ!?」
思わず想像してしまったらしい。
舞が素っ頓狂な声を上げた。
「おめぇ、将来的に何人欲しいんだ?今から作ったら、十人でも二十人でも作れるぜぇ?」
「じゅ、じゅう、にん…!?」
舞の喉がゴクリと鳴った。
「良いか?男ってのはな、結構単純なんだぜ」
舞が興味を示したので、更に耳打ちをする。
「性癖と胃袋掴んでりゃあ、一生安泰だ」
「ふぇ、ふぇち!?」
「おうよ。体の部位とか服とか…」
「手!?太もも!?ナース!?」
早苗の言葉に、舞が顔を赤らめて聴き入る。
興味津々と言った風情だ。
「まだ有るぜ、他には…」
「はわわわわ…」
今度はスマホを取り出し、鞭やら蝋燭やら、キーワードを沢山検索し、舞に見せた。
何れも、十八歳以下はお断りの画像だ。
「もう十八だし、そもそもヤル事ヤッてんだろぅ?」
「そ、そ、それ、は、そう、だ、けど…」
舞がスマホの画像を見ながらゴクリと喉を鳴らした。
画像に有る様な濃厚なプレイはした事が無い。
「良いか?想像してみろ。こっちが舞でこっちが陽輔だぞぉ」
「っ…」
舞の視線が、スマホの画面に釘付けだ。
目を皿の様にして内容に見入った。
「早苗さん、何やってるんですか」
「…ちっ」
作業の終わった陽輔が、呆れた顔で早苗の肩を叩く。
「舌打ちしましたね」
「んだよう、舞に性教育してただけじゃねえかよう」
流石に限度が有るだろう。画面に映っていたのは調教物だった。
そして早苗は不貞腐れてしまった。
「舞ちゃん、大丈夫?」
「…あの、陽輔くん…」
「うん?何?」
舞が、モジモジしながら言った。
「わ、私、陽輔くんの趣味がどんなのでも、ずっと、付いてく、から!」
「ええっ!?」
効果は抜群だった様だ。
翌日
「ね、姉さん!?な、何で居るの!?」
早苗がビックリしているのは、愛子が来たからでは無い。
そもそも早苗が住んでいるこの家は、愛子にとっては実家である。
だから、愛子が来ていても、特に驚く事では無い。
早苗の恐怖は、愛子の笑みにあった。
「早苗、ちょっといらっしゃい」
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」
愛子に頭を鷲掴みにされた早苗が、仏間に吸い込まれて行った。頭蓋骨をミシミシ言わせながら…。
>効果は抜群だった!




