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その4

 五日目の朝、掃除婦であるクーニャは仕事場に来た途端まるでまちかまえていたように上司に捕まった。

 その顔はあきらかに、青ざめていて覇気がなかった。いつものうるさい威圧感ある縦横無尽な態度が本日はない。上司は体調があまりよろしくないようだ、早退すればいいのに。クーニャは内心思った。


 「お前やってくれたな……」

 ぼそりつぶやかれたが 思い当たる節など一切見つからない。

「 お前は建国記念日の日に 持ち場ではないところを掃除しただろう?」

 上司の眉があがった。鈍いカンがピンとはった。

 「はい。私の持ち場は全て終えましたので。普段は手の届かないところに気を配りました。離れにある鉄扉の奥を清掃いたしました。」

 掃除婦は自分の行いを褒めてもらえているのだろうと思っているので平然と答えた…

 何故、上司がため息を深く吐いたのかクーニャには わからなかった。

 そんなに重いため息を吐くくらいに体調が悪いなら早退すればいいのに……。

 ため息の原因が自分であるとは露知らず彼は上司の早退を内心で推奨した。


 「このまま私に続きなさい」

 少し小太りの上司のあとを ついていけば先日、持ち場以外のあの重い鉄の扉前に連れて行かれた。


 その前には、竜騎士団所属の騎士が着る碧い軍服と白の制服を着た候補生がいた

空の中の雲 二人を表すならそれだな、クーニャの脳内で好きに想像し遊んでいた。

 悪い癖である。


 優しそうな雰囲気をもつ竜騎士団の騎士とは正反対に候補生の顔は青ざめていた。

 「あなたがクーニャですか」

 竜騎士団の騎士が柔らかい声色で声をクーニャにかけた。

 「キューレイト殿。お待たせして申し訳ありませんでした。このものは時間に正確でして 早くに出社することをしないもので…」

 クーニャの返事をまつまえに上司が間に割って入った。

 「はは。それは、それは。遅刻することもないのですね」

 「まぁ。今のところは……」

 「クーニャとは いつかお会いしたいと思っていたのですが こんなところでお初披露になるとは思いませんでした」

竜 騎士団であるキューレイトはクーニャに手を差し出した。


 クーニャは人肌が苦手なので内心握手するのが嫌だなと思った。

 候補生は何故、偉大なる竜騎士団であるキューレイト将校が一介の下働きなる掃除婦に敬意を示すのかと驚いた。

 上司は面倒ごとになりうる自体になりそうな予感にキリキリ 胃を痛めていた。


 握手を終えたところでキューレイトが候補生に「開場せよ。」と言った。

 候補生は「了!」

と、すぐさま返事と同時に敬礼し、すぐさま南京錠に鍵をかけ開場した。

キューレイトはにこやかな微笑みで

「ここは普段 施錠されており我々 竜騎士団か直接管理しているところです。」

 開場された重い鉄扉を開けながら言った。

 掃除婦は、ここだけではなく この大きな建物自体が竜騎士団所有のものなのに何を言っているのだと意味が理解できていなかった。

上 司はおそらく、この馬鹿は意味を把握できていないだろうと悟り すぐさま言葉をつないだ

 「ここはばんとなった竜神様のご様子を伺うための神聖なるお休み所である。つまりは竜騎士団に関わるものしかはいってはならない秘所である」


「………」

 クーニャはここに来てようやく やらかしてしまったことに気がついたのである。

 まさしく鈍感。

 言い得て妙。

 もっと はやく そのことに触れて欲しい。

「 申し訳ありませんでした」

 クーニャはすぐさま謝罪した。

 やらかしたら、ともかく謝れ。すぐさま謝れ。即効で謝罪しろ。

 お父上に、ひいては家族に、職に就く際に散々言われた言葉を すぐに実行する。


 「いいえ。本来ならば施錠されているのですが 候補生であるイランザが施錠するのを忘れてしまったことに非はあります」

 「申し訳ありませんでした」

 候補生であるイランザは大変大きな声でしかと謝罪した。

 クーニャとは違い本当に後悔している潔い謝罪だった。

 あれ?なら俺は無罪放免?お咎めなしということでいいのだろうか?

 クーニャがお気楽に考えている中、ここまで来てその展開はないということが彼には理解できていなかった。

 まさに残念すぎる子である

 「それでですね、クーニャ。ここまでは私たちの非であるのですが」


 キューレイトがクーニャを困った子を見るような優しい眼差しを送った。

 そう同情心あふれる瞳。


「ここから先は君の非です」





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