その3
幽閉されている竜は、大変腹の機嫌が悪かった。
それは、あの日以来 掃除婦が来てから腹の虫がひどくなる一方だった。
凱旋パレードから1日が過ぎ2日が過ぎ3日が過ぎた。
その間に『龍騎候補生』達が人をかえて毎日、龍の寝どころをチリ一つ残さずにキレイに掃除していった。あの掃除婦のような無礼な態度など 未来の『竜騎士団』の一員になる可能性のある候補生達は一切しなかった。
竜が問えば、畏敬の念をこめてそれは丁寧に答えたものだった。
あの掃除婦のような 無視を決め込む愚かなものなどここには 誰一人存在しなかった。
それもそのはずである。竜は神の化身として崇められ崇拝されている郷土。
しかも 龍騎候補生は未来の竜騎士団の卵である。
孵化する可能性の低い卵。
どんなに候補生達が優秀であろうと才があるものであろうと、竜の『番』に選ばれなければ竜騎士団になれることはない。25才。それが候補生たちのタイムリミットである。以降は 後進育成の為 強制的に王国騎士団へと配置替えされる。
候補生達にとって毎日が『番』になるための試練である。
4日目、昨日とは違う龍騎候補生が現れ竜は暴れた。
何故 奴は来ないのか。私を馬鹿にしたままのつもりか。
いきなり暴れだした神の化身に候補生は 自身が何か失態を起こしてしまったのだと勘違いし怯え すぐさま許しを請うように謝罪した。その姿を見て竜はさらに激怒した。
「私が見たいのは貴様の謝罪などではない!あの無礼な男を今すぐここに連れてこい!」
候補生は 怒れる竜の怒気に飲まれ頭は白く青ざめていた。
「は・・・・・はい!」
それしか言えなかった。
あまりの恐ろしさに、逃げるように竜のもとから飛び出していった。
そして こう思った。
「俺・・・終わった・・・・。竜騎士団の道は閉ざされた」・・・・と。
龍騎候補生はそのまま上官のもとへ、 すがりつくように駆けていったのだった。