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その2

神の化身とも言われながらも拘束されている竜は大変、憤慨していた。

 そもそも竜という生き物は知能が大変高く魔力も高い。

 人に使役される立場でもない。

 なのに龍騎のいうことを聞くのは、竜と龍騎の間には特別な交わりがあるからだ。

 彼らは互いのことを『番』という。 

 自分の伴侶である龍騎の言うことを聞くことが守ることが番である私の役目だとあるように…。


 竜は番に対してのみ情にあつく優しかった。


 故に他者の言うことを聞くのを大変、嫌うプライドの高い生き物でもある。


 自分の寝床にわけがわからない男がいきなり来て朝方キレイに掃除していった龍騎候補生がいるにもかかわらずに、知らない男が自分の寝床を掃除している。


 竜は怒りを目に宿ませ、鎖を引きちぎる勢いで暴れていた。

 常人であれば、その荒れ狂う姿に驚き畏怖し腰を抜かす光景であるにもかかわらず…彼は自分の仕事を行っていた。

 なぜなら掃除婦は自分の世界にいってしまっているので暴れている竜のことなど微塵に気にかけていなかった。KYだから…。視界に写っていないというのが正しいのかもしれない…。

 ますます憤慨した竜は、口輪の隙間から男に人語で話しかけた。

 しかし掃除婦は、ノリノリな音楽を聞いて自分の世界にトリップしているので、竜の言葉など耳に入ってきていなかった。KYだから…。


 一方 そのころ

城外では、この国の誇れる『竜騎士団』によっての空中パフォーマンスが行われていた。


 誇り高い竜の背に乗り空中で横に4体もの竜が列を連なり同じ速度同じ幅でキレイに調和を保って飛んでいる。その乱れぬ姿は竜を制御できているからこそなせる技。美しい連携プレーだった。



 その4隊が城下町を通り過ぎれば、別の竜騎士が空中でくるり派手に旋回して回ってみせた。


 観衆が絶え間無い歓声を上げる声が街中に響き渡っている。



 一方、掃除を終えた掃除婦は鉄扉から出るとウォークマンを外し懐にしまい、時計を見た。

 時期にタイムカードが切れるな。

 そう思うと掃除カートをコロコロ引いて用具室へ向かっていった。

 怒る竜の咆哮に気がついたのはこの時だ。

 掃除婦は、いいことをした気分で満足していたので近くで聞こえる大きな音にビリビリ体が振動し驚いたが、気にせずに掃除道具を片しに行った。 本日の仕事を無事に(?)終えたのだった。 


 その頃城下町ではパフォーマンスが終わり式典も終盤にむかっていた。

 竜騎士団である団長が最後に 魔獣討伐で命を落とした殉職者の名前を次々と読み上げた。


最後に

「アーノルド・イェーガに黙祷を」

 静かさとは無縁の力強い声がマイクを通して街に響いた……。


 鉄扉の中に拘束されている竜は、その名前を聞いて我にかえったのだった…。


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