水平線のある景色
生まれ変わった風が、頬を撫でる。雲を吸い込んでいく水平線が、薄ピンク色に染まる。波の音が、耳に流れ込んでくる。一面に広がる青い世界と、それを切り裂く新しい光。どこからか、鳥の囀りが聞こえてくる。世界と同時に自分まで生まれ変わった、そんな気がした。
海と、空と。それしかないこの場所では、あの頃と似たような孤独に襲われる。朝起きて食卓につくように、ふと、帰ろうと思った。ノスタルジー、とやらに取り憑かれたのだろう。
「俺も、甘ぇな」
ずいぶんと明るくなった空を見上げ、自分を嘲笑う。眠そうに、大きく口を開く太陽の光を背に受けて、家路についた。
この風を土産にでもしようか、なんて、な。