決断
「中島君!おはよう!」
勇太は朝、駅から大学に向かっている途中で貴司に声をかけられた。
「あっ、おはよう。」
2人は並んで歩いていた。
「大林君は決めたの?」
勇太は聞いた。
「うん。このまま関わっていくつもりだよ。パールやモリオンと別れるのも寂しいからね。それに…」
貴司は何か言いにくそうに途中で口ごもってしまった。
勇太は気になって貴司の顔を覗きこもうとしたら校舎に着いた。
エレベーターに乗って研究室まで行くとすでに海斗とあきがいて何か話していた様だった。
「おはよう。」
勇太が2人に声をかけた。
「おはよう。」
あきの笑顔にまた勇太はドキッとした。
『野上さん、最近表情が柔らかくなったよな…何かあったのかな…』
勇太はまだ少しドキドキしていたが、気づかれないように表情が変わらないように努めた。
「ふぅ…」
勇太は自分のデスクに鞄を置いてため息をついた。
ロッカーから白衣を取り、靴を履き替えていつも通り研究を始めた。
樹理奈も研究室に来て5人揃ったが、みな各々の研究に集中していた。
助手も入ってきたがあいさつだけして、みなそのまま研究を続けた。
10時30分のチャイムが鳴った。
勇太は『扉の空間』に1人召喚されていた。
目の前には教授とクォーツが立っていた。
「決まったかい?」
教授が勇太に聞いた。
「はい!」
勇太は大きく頷いた。
「俺、続けます!」
勇太は拳をぎゅっと握った。
「もう後には引けないから、だから俺もこのまま突っ走ろうと思います!みんなも父さんも母さんもこれ以上危険にさらしたくないし。俺に守れる力があるなら守りたい…日常を守りたいんです!」
勇太はまっすぐ教授を見た。
「だそうだ、晴明。いるんだろう?」
教授がニヤリと勇太の後方を見て言った。
「そうだな。我が主ならそう決断すると思ったわ。」
勇太は後ろを振り向くと晴明が立っていた。
「晴明!何でここに?!」
「この部屋を作ったのはわしでもあるからな。」
晴明がニヤリと笑って言った。
「メールはちゃんと見れたか?」
教授が晴明に言った。
「あぁ、パソコンとやらもかなり使えるようになったぞ。」
晴明が言った。
「これで全員の意志が確認できましたね。勇太、修行は明日から再開する。今日は研究に専念するんだ。」
クォーツが言った。
「はっ、はい!」
勇太が返事した直後、クォーツは勇太を人間界に帰した。
「似ておる。」
晴明がクォーツを見ていった。
「昔のそなたにな。」
その頃、『Bar 蒼い石』に派手なアロハシャツを着た男が入ってきた。
「うぃーっす。」
「あら、オパール。奥の部屋に入って。」
ラピスラズリはオパールを奥の部屋に連れていった。
「朝からお酒はダメよ。ウーロン茶で我慢して。」
着席したオパールにラピスラズリはウーロン茶を差し出した。
「せっかく久々に来たってのに。」
オパールはウーロン茶をゴクゴクと飲んだ。
「みんな、修行を続けるって決断したみたいよ。あきはjewelsになることを前向きに検討するって。条件付きだけど。」
「そうかい。」
オパールは他人事の様に返事した。
「本当はかなり気になってたクセに。」
ラピスラズリは自分の分のウーロン茶をテーブルに置いて着席した。
「ペリドットは一緒じゃなかったのね。」
ラピスラズリは真剣な顔でオパールを見ていった。
「最近どうも自分の空間に閉じこもって出てこないんだ。こないだの件で俺も久々に顔を合わせたからな。なんか、やつれた様な、病気か?勇太の師匠を外されたショックだと思ってたが、そうじゃなさそうだな。」
オパールが言った。
「もっと深刻な事態かも。この前の件で私も久々にペリドットと会ったけど、何か変だったわ。」
ラピスラズリも言った。
「そういえば何ヵ月か前ぐらいからおかしかったような…」
「どうな風に?」
「落ち込んだり、汗だくだったり、時々笑っていたり…」
「それはいつぐらいのとき?」
「勇太に修行をしてたあたりだな。」
ラピスラズリはしばらく黙っていた。
「なぁ、ラピス。何か心当たりあるのか?」
「…私の予想が正しければ…かなりマズイわ…あの少年とペリドットを接触させてはダメよ。」
「どういうことだ?!」
オパールは身を乗り出してラピスラズリに迫った。




