帰路
「他に何か聞きたいことは?」
あきがみなに聞いた。
「ないわけではないんだけど…分からないことがあったらその都度教えてくれる?」
樹理奈が言った。あきは頷いた。
「私はあんたに聞きたいことがあるわ。」
アメジストがあきを睨みつけて言った。
「あんたは今回扉を開けること事前に知ってたの?」
「昨日、監視がなくなったこと以外分からなかったわ。」
アメジストはそれを聞いて少し安心した顔で、
「だったらいいわ。」
と言った。
勇太は重大なことに気づいてしまった。
「修行って明日からだよね?…研究も明日からだけど…」
海斗もハッとして、
「キツそうだな…」
と言った。樹理奈も貴司も難しい顔になってしまった。
あきはアメジストをチラッと見たが、アメジストは我関せずというような顔だったので、
「明日、ルビーに言ってみるけど、2重生活になるのは変わりないと思う。」
と言った。
アメジストがテーブルのフライドポテトやオニオンフライを勝手に食べながら、
「そういえば、あんた見覚えあるんだけど!」
と樹理奈の顔を覗きこんだ。突然自分に声をかけられたので樹理奈はビックリして固まってしまっている。
「アイドルグループ『こすもおーら』の…」
とあきが言いかけると、アメジストも何かに気づいたのかハッとして、
「ますます今回の人選が分からないわ。ダイヤのヤツ…何考えてんだろ…」
と呟いた。2人にしか分からないことがあるのか…勇太はそう感じていた。樹理奈は黙っていた。
みなで店を出て、店の前で解散することにした。海斗と樹理奈は下宿先へ自転車で、あきも自転車通学だったので3人とはここで別れた。同じ電車で通学している貴司と乗り換え駅まで一緒に帰ることにした。
「大林くん、明日さっきメモしてたの見せてくれる?」
勇太は貴司に声をかけた。
「今でもいいよ。」
貴司がカバンからメモを取り出そうとしたので勇太は慌てて、
「ここじゃまずいだろ!…ほら、誰かに見られたりでもしたら…」
と周りをキョロキョロしながら言った。自分たち以外に駅まで歩いている学生が何人かいた。
「大丈夫。さっき野上さんが…ね。僕ら以外は別の内容に見える様にしてくれてる。」
そう言って貴司は勇太にメモを渡した。
「ありがとう。」
メモを受け取り、歩きながら目を通していると、
「ちゃんと研究もできるのかな…」
と貴司が呟いた。
「そうだな…」
勇太も不安だった。
電車に乗り、始めの乗り換え駅で貴司と別れて、さらに乗り換えて、勇太は帰宅した。
「ただいま。」
そう言って真っ先に2階自分の部屋に向かい、ベッドに倒れこんだ。
『今日は色々ありすぎだ…』
そう思い、目を閉じた。