とりあえず、飯
「うっ…あれ…?」
勇太は目が覚めるとベッドで寝ていた。
「勇太!」
「中島君!意識が戻ったんだね!」
海斗と貴司がテレビを見ながらお菓子を食べていた。
「ここは…?」
勇太はゆっくり体を起こした。まだ頭がボーッとしていた。
「俺の部屋。野上がみんなをここまで連れてきてくれた。」
「じゅ…原田さんたちにメールするよ!お弁当を買いに行ってくれているんだ。」
勇太は辺りを見回した。確かに海斗の部屋だった。
「あの…」
勇太はあまり状況が飲めず、色々尋ねようとした時、チャイムが鳴った。
「戻ってきたな。」
海斗が玄関の方へ歩いて行った。
「買ってきたよ。」
「勇太、目を覚ました。」
そう言いながら海斗と樹理奈とあきが部屋に入ってきた。
「中島君、良かった!」
樹理奈が勇太に言った。
「そうそう!雅子も無事だって!ロードからメールが来たの!ロードが助けに行ったとき、雅子はすでに泡を燃やしつくしてしまった後だったみたい。」
樹理奈は携帯電話を取り出して、
「『この後、ダイヤからjewels全員に今回の件についてすべて話してもらう予定』だって。」
と携帯電話のメールを読み上げた。
「お弁当、ここに置いておくね。」
あきがテーブルに買ってきたお弁当を置いた。
「サンキュー。あっ、勇太、勇太のカバン、テーブルの横にあるから。」
そう言いながら海斗はあきにお弁当代を渡した。
勇太はベッドから降りてカバンから財布を出した。
「えっと、いくら?」
「唐揚げ天津飯だから、350円。」
勇太はあきに350円渡した。ふと、腕時計を見ると時刻は4時すぎだった。
「大丈夫?」
あきが勇太の顔をのぞきこんだ。勇太はドキッとした。
「あっ…うん…何とか…」
本当はまだ頭がボーッとしていたが、慌ててそう答えた。
「まだ本調子じゃなさそうね。」
あきが微笑んだ。勇太はまたドキッとした。あきが笑っているのを見たのは初めてだった。
「よし、食べよう!お腹すいた!」
貴司がそう言ったのでみなテーブルを囲んで座った。
「あの…俺、まだ状況がよく分かってないんだけど。」
勇太が言った。
お弁当を食べながら勇太は4人からこれまでの経緯を説明してもらった。
「みんな魔力をかなり消費してて、だからとりあえず何か食べようってなったんだ。」
貴司が唐揚げをほお張りながら言った。
「野上さんが式神を使って研究室の私たちの荷物を取ってきてくれたの。」
樹理奈が言った。
勇太はようやく頭も冴えてきて、状況を理解することができた。
「実は俺、みんなに話してなかったことがあるんだ。」
勇太は父親が入院している病院で敵のボスと思われる人物と遭遇したこと、助手が自分の正体がフラーレンと明かしてきたこと、バーでラピスラズリに呪いを解いてもらったことを話した。
「敵のボス!?何か特徴とか覚えてないの?」
貴司が聞いた。
「それが、思い出せないんだ。」
敵のボスの顔だけはどうしても思い出せずにいた。
「『Bar 蒼い石』って大学の近くのビルにあるバーだと思う。美沙が元カレと行ったって言ってた。良い雰囲気のお店で、料理もお酒もおいしかったって。大学関係者とかサラリーマンとかが多かったって。」
樹理奈が言った。
「まさか、この近くで魔術師がバーで働いてるなんてな。」
海斗が言った。
「カイヤナイトって人もいた。」
「カイヤナイトってROOKを開発した1人じゃなかった?」
貴司がメモを見ながら言った。
「そうだ、野上さん、大丈夫?」
勇太があきに聞いた。
「あの攻撃、俺の魔力を使ったって、その…ゴメン。」
勇太はあきに当たった攻撃のことを気にしていた。
「中島君が攻撃したわけじゃないから謝らないで。」
あきが言った。
「それに、安倍晴明は本気じゃなかったから私も無事だったし。」
「そういえば、精神の中で安倍晴明と一緒にいたんだよね。何か話したの?」
貴司が聞いた。
勇太は晴明がまるで楽しんでいるかのようだったことを正直に話した。
「ダイヤたちが掟すれすれなことをしてまで安倍晴明を甦らせようとしたの、分かるわ。中島君の存在を消すのはダメだけど、確かに安倍晴明が本気出すと敵を一掃させるほどの魔力を持っていそうな気がしたわ。」
あきが言った。勇太は『中島君の存在を消すのはダメ』の言葉がうれしかったが、冷静な顔でいるよう努めていた。
「明日からどうすれば良いんだろう。」
貴司がポツリと呟いた。
「文子先生がフラーレンだったって解ったけど、何か…先生と話しづらくなってしまったなって。」
「そうよね…それにもう修行も終わりなのかな…?エメラルドとも顔合わせづらいな…」
樹理奈も言った。
「とりあえず、何事もなかったように生活した方が良いんじゃないか?研究も。修行のことは明日にまた召還されるかどうかで分かるだろ。」
海斗が言った。




