勝ち星
「また会おうぞ。」
晴明がそう言ったような気がして勇太は球体の方へ振り向いた。
「勇太?」
海斗の目の前で勇太の姿が消えた。
「ゴメン…もう限界だ!」
海斗の足元の魔法陣が消えて、海斗と貴司は目を開けた。
貴司はドサッとその場に倒れてしまった。
「大林君!」
樹理奈は貴司に駆け寄った。
「そうだ…勇太は?」
海斗は晴明の立っている方を見た。
晴明の姿は透けていたが、晴明の足元に勇太が倒れていた。
「勇太!」
海斗は勇太に駆け寄り、抱き起こした。勇太は目をつぶっていたが息はあった。
「良かった…生きてる。」
「あぁ、そうだ。そのうちに目を開けるだろう。そなたたちの勝ちだ。」
晴明は海斗を見下ろして言った。
海斗は勇太の体を支えながら構えようとしたが、
「安心しろ。約束は守る。」
と晴明はニヤリと笑って言った。
「そんな…晴明様!どうして?!あなた様の力ならあの少年の体を乗っ取るなど容易いはず!それにあなた様が本気を出せばこんなガキどもに負けるはずがないのに!」
ジルコンは涙目になりながら言った。
「始めに申したろ、『生あるものには必ず死が訪れる、それが自然の摂理』だと。それにあの少年の体を乗っ取ってまで生に未練はない。」
晴明は言った。
「ではさらばだ。」
そう言って晴明は消えた。
ジルコンは泣き崩れた。
「またお会いできるのをどんなに待ち焦がれていたか…ダイヤは?!なぜまだ戻ってこない?!」
ジルコンは泣きながら怒りだした。
「どうやら、本物の呼び出しがかかったのかもな。」
モリオンが言った。
「『本物の』って…まさかあなた!?」
エメラルドが驚いた顔でモリオンを見た。モリオンは涼しげな顔をした。
「ダイヤがいないから私たちは何もできないわ。」
ルビーがジルコンの肩に手を当てたがジルコンは怒りで肩が震えていた。
「おっと、コイツらに八つ当たりをしようと思うなよ。」
オパールが海斗の前に立って、ジルコンを牽制した。
「マジでどうするの?!この千年の計画がパアじゃない?!」
アメジストがクォーツに言った。
「師匠の指示なしではどうしようもないな。でも…」
クォーツが腕を組みながら言った。
「とりあえず、お前たちを拘束する。」
クォーツが構えようとしたとき、クォーツの目の前に氷の壁が現れた。
「…ラピス。」
クォーツが突然現れたラピスラズリに向かって呟いた。ラピスラズリはバーのドレスのままの姿だった。
「…見損なったわ!若者の大事な時間を奪おうとしてただなんて!」
ラピスラズリが叫んだ。
「サファイア!どういうことかしら?」
ラピスラズリの怒りの矛先がサファイアに向いた。
「あの子はね、これから大人になっていくの!1分1秒があのことの成長の糧になるの!それなのに…」
氷の壁から湯気が吹き出した。
「あの人がラピスラズリ?」
樹理奈に体力を回復してもらった貴司が言った。
「水属性ではサファイアの次に強いってモリオンが言ってたよ。」
勇太たちの周りには次々と魔術師たちが現れた。
「さぁ、クォーツ。どうする?こっちにはお前ら以外のjewelsがついているんだぜ!」
オパールはクォーツに詰め寄った。
「あき、とりあえずあなたたちは勇太を連れて人間界に帰りなさい。」
ラピスラズリが言った。
「分かった。ありがとう。」
あきがそう言ったとたん、5人は海斗の部屋にいた。
勇太はまだ目を覚まさなかった。




