第2の刺客
「安倍晴明の復活。これが目的なんだって。」
有名な陰陽師である安倍晴明を勇太の魔力を使って復活させる―これが、クォーツたちが隠していたことだと雅子が言った。
「中島君のこと、『星』って呼んでたわ。安倍晴明と同じ性質の魔力の持ち主っていうことみたい。」
雅子が言った。
「さっき、野上さんが言ってたけど死者を蘇らせるのは魔術界では禁止されてるって…」
貴司が言った。
「うん。かなりレベルの高い闇属性魔術ならできるかもしれないけど、蘇らせるんじゃなくて中島君に憑依させる、これがつまり復活だって。」
「魔術界の掟スレスレのことまでして復活させるなんて、ダイヤは相当焦ってるのかしら。」
あきが言った。
「それだけじゃないみたい。この計画は何百年以上も前から存在してて、やっと『星』が現れたって言ってたわ。」
「じゃあ、まさか…扉を開ける本当の目的って…」
あきがそう言いかけたとき、前方に人影が見えた。
高校生ぐらいの幼い顔つきの小柄の天然パーマの男だった。
上下とも青色の装束を着ていた。
「カバンサイト…」
あきが男をそう呼んで、魔力蛍を掴んだ。
「あきさん、お久しぶりです。覚えていてくれて光栄です。そちらは元・リチウムの方ですね?」
カバンサイトは雅子を見た。
「サファイア先生の命令であなたたちを足止めするように言われました。あなたはアメジストさんの弟子では?師匠を裏切るのですか?」
カバンサイトは丁寧な口調だったが、険しい顔つきになった。
「確かに、中島君を助けに行くのはアメジストのやろうとしていることに反することよね。」
雅子がカバンサイトをまっすぐ見て言った。
「でも、そのアメジストがやろうとしていることが私には理解できないし、友達になってくれた中島君や闇魔力核を抜くまで私をずっと支えてくれた樹理奈を裏切る方がもっとイヤだし、後悔すると思ったわ!だから私はこちら側につくの!」
雅子も負けてなかった。
「雅子さん、気をつけて。カバンサイト1人ってのが引っかかるの。」
あきが雅子にコソッと言った。
「では、僕はあなたたちを動けなくします。」
カバンサイトはそう言うと両手を挙げた。
しかし、すかさず雅子がカバンサイトに電撃を浴びせた。
カバンサイトはその場でバタリと倒れた。
「あっけなかったわね。」
雅子が言った。
「…容赦ないな。」
海斗は雅子に感心していた。
「やっぱり…この辺り一体に罠が仕掛けられている。」
あきが言った。
「えっ?!どこに?!」
樹理奈が足元を見回した。
「見えるようになったら進みやすいんだけど…あっ、そうだ!」
貴司がポケットからマッチ箱ほどの小さな黒い箱をと取り出した。
箱には小さな電球がついていて、側面には“Morion”と白字で書かれていた。
「モリオンがくれたんだ。罠を可視化させるものだって。魔力を注いで…」
貴司が黒い箱に魔力を注ぐと電球が光り、辺りが明るくなったと同時に、地面にたくさんの魔法陣が浮かび上がってきた。
「こんなに仕掛けられていたの?!」
貴司自身が1番驚いていた。
「こうなることを予見して大林君に渡したのたのかしら?」
樹理奈が言った。
「かもね。」
「この計画を実行しているのは誰なんだ?」
海斗が聞いた。
「ダイヤ、クォーツ、アメジスト、ジルコン、ルビー、サファイア、エメラルドだけよ。」
雅子が答えた。
「そのメンバーって確か、魔術界ができた当初からいた人たち…」
あきが言いかけたが、突然カバンサイトが倒れている方を見た。
カバンサイトの周りにはたくさんのシャボン玉が浮かび上がっていた。
「何?あれ?」
シャボン玉がどんどん増えて5人の周りに壁を作った。
「これは…触っちゃダメなヤツね…魔力を吸いとって膨張していく泡…アイツから発生してるんだろうけど、こんな大量に発生させれるなんて。」
雅子が言った。
「カバンサイトに足止めにさせた本当の理由がこれなんだわ。気絶すると魔力を吸いとる泡を無意識に出すのがカバンサイトの特殊能力だとしたら、私たちの魔力をここで大幅に削るのが狙いなのよ。サファイア、本気だわ。」
あきが言った。
「じゃあ、どうすれば…」
貴司がもどかしそうに言った。
「これ以上膨張できないくらいの魔力を注げば良いのよ。」
雅子が言い、歩き出した。
「雅子さん…」
「野上さん。あなたは分かっているわよね?この後、A+クラス以上の魔術師と戦わなくちゃいけないかもしれないこと。あなたはSクラスぐらいあると思うけど、相手が複数だといくらあなたでも少しキツいわよね?だったら、少しでもこちらのダメージを抑えなきゃね。」
雅子は笑った。
「雅子、何を言ってるの?」
樹理奈には理解ができていなかった。
「私が囮になるからその間に先に進んで。」
雅子が言った。
「そんな…ダメよ!一緒に行こうよ!」
樹理奈は半泣きだったが、
「大丈夫。あの泡では殺されないと思うわ。それに、野上さんやあなたたちの魔力を少しでも温存するのが1番なの。モリオンだけじゃなくてオパールやアクアもクォーツの動向を気にしてたから助けてもらえる可能性だってあるわ。」
「でも…」
「時間がないの、樹理奈。私ができるのはここまで。中島君によろしくね。」
雅子は樹理奈を突き放した。あきは雅子に赤い粒を2粒渡して、手から魔力蛍を放した。
「魔ザクロの実のエキス…2粒も…ありがとう。」
魔力蛍が飛んでいった反対側に雅子が進んでいき、泡に手を触れた。
泡はどんどんと分裂し、膨らんでいった。
あきは魔力蛍が泡にくっつく前にまた魔力蛍を捕まえた。
泡が雅子の方へ吸い寄せられて行ったので泡の壁に隙間ができ、人が通れるくらいまで開いた。
「行こう…」
海斗が泡に包まれていく雅子を気にしている樹理奈に言った。
「雅子…ゴメン…ありがとう。」
樹理奈は涙目だった。
4人は地面の魔法陣に気をつけながらあきがまた放した魔力蛍について行った。




