研究テーマ
金剛教授がホワイトボードに黒いペンで研究テーマを書き始めていた。
『さっきのは何だったんだ?!まさか夢でもみてたのか…』
海斗の顔を見ると海斗も困惑した顔で勇太を見た。樹理奈も貴司も同じ様に状況が分かっていない様子だった。あきは相変わらず無表情だった。
『さっきのは夢じゃなかったんだな…でもどうして俺たちが…?魔術って何なんだ?』
勇太はまだ頭が混乱している。教授が書き出している5つの研究テーマが頭に入ってこないのでぼーっと眺めている状態だ。
「それぞれ研究テーマを選んでね。話し合いでもよし、早い者勝ちでもいいわよ。」
教授の横に立っていた助手が言った。
『この状況で選べるかよ…』という雰囲気の中、あきが立ち上がり、テーマのうちの1つの横に自分の名前を書いた。
「みんなの名前も書いてね。」
助手がみなを促したので立ち上がり、名前を書きに行った。
勇太は、『キラル活性の…』っと書かれたテーマを選んだが、全く頭に入っていなかった。
着席後、
「研究は明日からね。それぞれの研究資料配るから目を通しておいて下さい。」
助手が研究資料を配りながら言った。教授の横に戻って、
「明日からよろしくお願いします。」
と軽く頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
海斗が先導して言い始めたので、勇太たちも慌てて頭を下げて言った。
「では、また明日。今日は解散してもいい。」
そう言うと教授と助手は部屋を出て教授室に入っていった。
勇太たちも研究資料をかばんに入れて研究室を出た。
まだ頭の中は混乱した。
「失礼しました。」
みな声を揃えて言い、廊下を歩き始めた。
突然、樹理奈だけが足を止めて大きな声で、
「野上さん!」
と叫んだ。
みなビックリして振り向いたと同時にあきを見た。
「…ちゃんと説明して欲しいの。…魔術のことも…あなたが知っていること教えて欲しいの。」
誰もが思っていたことを樹理奈が代弁してくれた。
「…分かった。でもここじゃダメ。場所を変えましょ。」
あきはそう言って歩き出した。
みなあきについて行った。
これから魔術師たちの想像以上の出来事に巻き込まれていくことを、勇太たちはまだ知らなかった。