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師走

12月に入った。

「ねぇ、忘年会しない?」

研究室で樹理奈がみなに呼びかけた。教授と助手は講義に行っていたのでいなかった。

「文子先生にも声かけてみたんだけど、教授も忙しいみたいで無理だって言われちゃって。私たちだけでやろうよ。」

「いいね。」

貴司はうれしそうに言った。

「場所は決めてるのか?」

海斗が聞いた。

「ううん。まだ。大学周辺の方がいい?」

樹理奈はみなに聞いた。

「だったら、俺の部屋でやろう。話するのに周りに気を使わなくてもいいし、原田も一緒のマンションだから泊まりになっても野上は原田の部屋に泊まれば問題ないだろ。」

海斗が言った。

「なるほど!」

勇太と貴司は納得した。

『さすが、海斗だな!…でも、もしかしてまだ学園祭の時のこと気にしてるのかな?だから自分の部屋でやろうって言ったのかも…』

「私はいいけど野上さんはどう?」

樹理奈はあきに聞いた。

「うん。原田さんのお世話になってもいいかしら?」

あきが言った。

「もちろんよ!」

樹理奈の顔がパアッと明るくなった。

「それと、修行は1月はないってエメラルドが言ってたわ。期末試験があるから良かったんだけど。」

勇太は前から疑問に感じていた。

『授業や試験には支障のないように修行しているような気がしていたんだよな…こっちのスケジュールを魔術界(あっち)は把握しているってことなのか…こっちの生活を優先にしてくれているのはありがたいんだけど。』

勇太は海斗と目があった。

海斗も同じことを思っていたようだった。

「野上、ルビーか誰かと連絡とっているのか?」

海斗があきに聞いた。あきは首を横に振って、

「とってない。」

と言った。

「私。ロードとたまにメールしているけど試験のこととか話したことないわ。」

樹理奈が言った。

「メール?!」

貴司は驚いて言った。

『魔術師とメールって…何かおかしいよな。』

勇太も貴司に共感した。

「あっ、そういえば雅子さんどうなったの?」

勇太が樹理奈に聞いた。

「近々、儀式をするって。でも詳しいことは雅子も知らないみたい。」

樹理奈が言った。ロードクロサイトと連絡をとって、雅子に会いに行っているようだ。

「じゃあ、予定合わせていかなきゃ。松下君の就活がない日にしなきゃね。」


「勇太、これをお前に預ける。」

『扉の空間』に来た勇太にペリドットは小さな巾着を渡した。黄緑色のちりめん生地に何かが入っているのが分かった。

「あっ、ありがとう。」

勇太は巾着を受け取った。

「これをお前が持っていることを誰にも言うな。それと肌身離さず持っておいてくれ。」

ペリドットは汗をかきながら言った。勇太には焦っているか、苦しそうに見えた。

「分かった。」

勇太は頷いて、ポケットに入っていた携帯電話のストラップホールに紐を通した。

「これでいい?」

勇太はペリドットに聞いた。

「毎日持っているのか?」

ペリドットが勇太に聞き返した。ペリドットは携帯電話を知らないようだった。

「うん。毎日ポケットに入れてる。」

勇太が答えた。

「そっか。じゃあ頼んだぞ。」

ペリドットはずっと汗をかいていた。

『12月なのに…』

勇太は心配だった。

「具合悪いの?」

勇太はペリドットに聞いた。

「大丈夫だ。よし、始めるか。」

ペリドットが言った。

『何だろう…何か…胸騒ぎがする…』

勇太はずっとペリドットの様子が気になっていた。

ペリドットは時々、ニタッと薄気味悪くにやけていた。

しかし、次の日の修行ではペリドットは何事もなかったかのようにいつも通りの様子だった。

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