扉が開かれる
あきが初めて言葉を発したのでみなビックリした顔であきの方を見た。
「野上、扉って?」
海斗が立ち上がって聞いた。
樹理奈と貴司も立ち上がり、じっとあきの方を見つめた。
「ここは何なんだよ?研究室は?先生たちは?」
貴司も聞いた
「野上さん、何か知っているの?」
ようやく勇太も立ち上がりあきの顔を見て聞いたが、ずっと表情は変わらないままだ。
「久しぶりだな、あき」
サファイアがあきに近づいてきた。長身で一重の目で他のメンバーもチラッと見ながら、
「元気だったか?」
と聞いた。
「よく言うわね。」
あきがサファイアを睨みつけた。
「あれからずっと監視つけてたでしょ。」
「あら、昨日で監視なくなったの気づいてたかしら?」
2重の切れ長の目にロングヘアーをなびかせながら、ルビーもあきに近づいてきた。
「約束ちゃんと守ってくれていて良かったよ。」
サファイアがあきに笑いかけた。
「知り合いなのか?!」
海斗があきに聞いた。
「あーぁ、いい加減ちゃんと説明した方がいいんじゃない?」
アメジストがクォーツにめんどくさそうに言った。
「分かっている。まぁ、あきがいるとなると色々手間が省けそうだな。」
そう言ってメンバーに近づいてきた。
「ここはさっきまでお前たちがいた場所と全く違う場所、いや空間だ。お前たちだけをここに連れてきた。理由は…」
あき以外のメンバーみなじっと真剣な顔をしてクォーツを見つめた。
「我々のもとで魔術を学んでもらうためだ。」
一瞬、間が開いてみな訳が分からないと言いたげな顔になった。
「あはは、はじめはみんなこんな感じになるよね。」
アメジストがおかしそうに笑いながら言った。
「クォーツ、ダイヤから聞いていることを全部話せ。」
しっかりワックスでスタイリングされた髪のオパールが険しい顔で言った。
「まず、今回扉を開けた理由だ。いつもは事前に教えてくれていたのに今回唐突だっただろ。オニキスの穴埋めっていう理由だけじゃないだろ。それと、あきがいるのは偶然なのか?それともあきもグルか?」
「俺も知りたい。」
ターコイズもクォーツに近づいて言った。
小柄で華奢な体つきで見た目ではこの中で1番若い印象だ。
「師匠からは『扉を開ける。ガーネットの代わりをロードがするように、自分の代わりは俺がするように。』としか聞いていない。あきがいたのに俺も正直驚いている。」
「また座標がずれてたってことはないよね?5年前みたいに。」
ウェーブのかかったセミロングのエメラルドが聞いた。
「それはないね。今回はバッチリ成功よ。」
アメジストが答えた。
勇太たちはキョトンとした顔でクォーツたちのやり取りを眺めていた。
「あき、見ての通りこちらも少し混乱してるの。だからみんなにはあなたから説明しておいてくれる?特別にjewelsと同じ権限をあなたに与えるわ。また明日のこの時間に会いましょ。」
ルビーがあきに言ったが、あきは黙っている。
「ダイヤに確認とらなくてもいいの?」
ショートカットのアクアマリンがルビーに聞いた。
「それくらいは俺たちにも権限がある。それに俺たちがこんな状態じゃなにも始められないだろ。」
サファイアが言った。
「じゃあまた明日ね。」
ルビーが手を振った後、パチンと指を鳴らした。
すると勇太たちを囲むように立っていた装束を着た男女が消え、真っ白だった周りの景色が先ほどまでいた研究室の一室に変わった。
勇太たちはいつのまにか先ほどと同じ椅子に座っていた。




