対闇魔術研究所
「じゃあ、行きましょうか。」
ロードクロサイトは奥の準備室へ入るように促した。みな準備室に入ったところでロードクロサイトは鍵をかけた。
「誰かに見られたりしないようにね。 」
そう言って、ニコリと笑って手を軽く振った。
周りの景色が急に真っ白な空間に変わった。
『扉の空間』にも似ているが大きな違いが1つあった。
“対闇魔術研究所”
と書かれた扉があった。
「ここは魔術界の一部なの。闇魔術対策を研究している空間なの。」
ロードクロサイトが言って扉を開けた。
『ここが魔術界…なんかイメージと違うなぁ。』
勇太はそう思って入ると、
「樹理奈。来てくれたの。」
部屋の奥から声が聞こえた。
部屋の中も真っ白で何も置いていなくてガランとしていた。
奥の方に丸い白い大きな玉と人が立っていた。
よく見ると玉の中に女の人が入っていた。
「雅子、ゴメンね。やっと試験が終わったわ。」
樹理奈が玉の中の女の人に言った。
「えっ、もしかして紅さん?」
貴司は驚いた表情で聞いた。雅子は頷いた。
貴司が驚くのも無理はなかった。
『クォーツが『化粧で化けた』って言ってたの間違いじゃなかったな…』
勇太もそう思っていた。
“紅玲夢”はいつも派手な服装で厚化粧だったが今、玉の中にいる“吉村雅子”はスッピンなので勇太たち男にとったら顔の印象が薄く、全く別人のように感じるからだ。
雅子は白いワンピースを来ていたが左胸の当たりが黒く浮き上がっていた。
「その黒いのは?」
貴司がまた聞いた。
「これが闇魔力核よ。今、光の中にいるからよく分かるわね。」
雅子が黒い部分を指差して答えた。
「あなたたちに、謝りたかったの。海斗、中島君、大林君、野上さん、ごめんなさい。完全に敵視してて、悪口とかも色々言ってたわよね…本当にごめんなさい。」
雅子は頭を下げた。
「もういいわよ。」
あきが言った。勇太と貴司も頷いた。海斗は黙ったままだった。
「いつから私のこと気づいてたの?」
雅子があきに聞いた。
「入学式から。」
あきが答えた。
「…あなたはマーキュリーをボコボコにしただけあるわね。」
雅子が笑って言った。
「そうそう。自己紹介が遅れたけど。」
雅子が入っている玉の横に立っている女の人が言った。眼鏡をかけて、長い髪を三つ編みに1つに束ねていて白衣を着ていた。白衣の裾から水色のロングスカートをのぞかせている。
「ラリマーです。あき、お久しぶりね。」
あきは無表情のままだった。
「ロードと樹理奈のおかげで正の感情を取り戻したのよ。もう少し闇魔力核の魔力を弱めることができたら、闇魔力核を取り出す儀式をするって。」
ラリマーが言った。
「儀式…?」
樹理奈が聞いた。樹理奈も儀式のことは初耳のようだった。
「えぇ。ダイヤ、クォーツ、アメジスト、ロード、ラピス、トパーズ、エメラルド、ムーン、と私で闇魔力核を取り出す儀式をするんだけど…」
「儀式、いつするの?私もいさせて!」
樹理奈がラリマーの話を割って入ってきた。
「ごめんなさいね。魔術界の別の場所で行うんだけどあなたたちは参加できないし、見ることも出来ないの。」
ラリマーの言葉に樹理奈は悔しそうな顔で黙ってしまった。
『ダイヤって言ったよな…魔術師たちのボスが参加するなんて…見れないのは残念だな。』
勇太はそう思って雅子を改めて見た。
『スッピンだからっていうだけじゃないな。紅さん、正の感情を取り戻したから前よりずっと表情が柔らかくなった…気がする。』