祭りの後
次の日から授業再開だった。
勇太は早めに講義室に着いて海斗を待っていた。
海斗が講義室に入ってきた。
「海斗!おはよう!」
勇太は安心してしまって大声で言った。勇太の声にビックリしながらも海斗が勇太の横の席に着いた。
「おはよう。昨日は悪かったな…その、俺のせいで食事会なくなってしまってさ。」
海斗が申し訳なさそうに言った。
「また企画したらいいだろ。」
勇太が言った。
昨晩は結局、食事会をせずに解散した。
樹理奈は同じマンションなので海斗の部屋の前で別れた。別れ際にあきが、
「原田さん、あなたには忘却術は効かないのね。」
と言ったときに樹理奈が気まずそうな顔をしたのが勇太は気になった。
あきとはマンションの前で別れ、勇太と貴司は空腹だったので学園祭の屋台を回ってから帰宅した。
「店じまいだから半額でラッキーだね。」
「この焼きそばなんか50円って…もう1つ買えばよかった。」
2人とも術が成功したのがうれしかったので口数が多かった。
帰宅後、勇太はベッドの上で今日の出来事を振り返っていた。
術が成功したのはうれしかった。そして、海斗が無事だったことにも安心した。けれど、何かもやもやしたものが心の奥に残っているのを感じていた。
『…野上さんがサポートしてくれて大林君と2人だったから成功したんだ。でも、今後また敵…金属中毒だっけ?とまた戦うのかな…1人で戦ったりもするのかな…』
「おい!聞いたか?!」
突然、後ろの席に座っていた同級生の赤星彬が勇太たちに声をかけてきた。
「紅のやつ、中退するって!成績は確かに悪かったけどな。松下、何か聞いてるか?」
「知るわけないだろ。初耳だ。」
海斗はぶっきらぼうに答えた。
『昨日の戦いからこんなすぐに中退の噂が回るなんて…』
勇太がそう思っていると彬は続けて、
「そっかぁ。そういえば、お前らの研究室、みんな仲良いよな。よく屋台一緒に回ってたよな。」
と言った。
「まぁそうだけど。」
今度は勇太も答えた。
「原田といい、松下といい、助手といい美男美女揃いだよな。もちろん、勇太。お前もだ。」
彬は意地悪っぽく笑って言った。
「ははは…どうも。」
勇太たち有機化学研究室は仲が良いように思われているようだ。
1限目の講義が終わった。勇太たちは『扉の空間』に召喚された。
ルビー、サファイア、エメラルド、アメジスト、クォーツ、オパール、パール、ペリドットが待っていた。
「おい、バカ弟子!元気そうだな。」
オパールが嫌みっぽく海斗に言った。
「どうも。」
海斗が答えた。
「あの…玲夢はどうなったの?」
樹理奈が恐る恐る聞いた。
ルビーが樹理奈をじっと見つめて、勇太たちを見回して、
「あなたたちにちゃんと話するわ。これまでのこと、それとリチウムの記憶を分析した結果も。後、金属中毒のこともね。」
と言った。そして話始めた。