反撃
「あれ、大丈夫?」
勇太は海斗の周りの魔法陣を指差してあきに聞いた。光が強くなったので心配になった。
「あれは完全に相手を洗脳して服従させる魔法陣のつもりだと思うけど、不完全だから発動できないわ。ただの落書きね。」
「じゃあなんでアメジストやルビーは動かないの?」
貴司もあきに聞いた。勇太も同じことを思っていた。
「たぶんルビーはギリギリまで説得しようとしているのかも。だから友達だったロードクロサイトを連れてきたのね。」
「説得?馬鹿にしないで!」
玲夢が言った。
「私があなたたちに言い負かされるとでも?」
「リチウム。あなたは良いように利用されただけだって思わないの?よく考えてみなさい。」
ルビーが玲夢に説得を試みていると、あきが勇太と貴司に近づいてきた。
「やってみる?」
勇太と貴司は頷いた。
「じゃあこういう作戦はどう?」
あきが小声で話はじめた。勇太と貴司は息を飲んで聞いていた。
「分かった…けどもし、失敗したら…」
貴司が弱気でいると、
「私がサポートするわ。大丈夫よ。」
勇太はあきの言葉を信じることに決めた。
ルビーがチラッとあきを見た。
「今よ!」
あきの合図で勇太は縄3本を玲夢に向けて出した。縄はお互い絡まりながら玲夢に巻き付こうとしたが、玲夢に簡単にかわされてしまった。呆気なく縄が地面に落ちてしまった。
「こんなもので私を捕らえようとしているの?!」
玲夢は嘲笑ったが、勇太はまた玲夢に向けて縄を出したが、これも軽くかわされた。
「本当にあんたって平凡すぎて特に何にもできない男ね。海斗のお荷物もいいところだわ!」
玲夢が勇太に向けて電気攻撃を発した。勇太の前に大きな魔法陣が現れ、玲夢の攻撃を吸収した。
「チッ!」
また勇太が縄を向けてきたので、玲夢は避けながらあきをにらんで舌打ちした。玲夢の攻撃を防御したのはあきだった。
玲夢が地面に着地する直前、貴司が地面に落ちている縄をすべて浮かせ、玲夢にめがけて飛ばし、玲夢の腕と足に絡みついた。
「しまった…」
その縄を勇太が重りが付いた手枷と足枷に変え、玲夢を拘束した。
「このくらい、何てことないわよ!」
玲夢は手を後ろに拘束されてしまいながらもよろよろと浮き上がると、貴司が重りに魔力をこめた。
ズシーンと音がして重りが地面に落ち、重りに引きずられて玲夢も地面に落ちて倒れこんだ。貴司が手枷と足枷の重りをそれぞれ100㎏になるように術をかけたのだ。
「やった!」
勇太と貴司は手を叩いて喜んだ。
「やるじゃない!」
ルビーも2人を誉めた。
海斗の周りの魔法陣が消えた。勇太は海斗に駆け寄って体を起こした。
「海斗!」
海斗は目をつぶったままだった。
「気を失っているだけよ。」
あきが言った。勇太はホッとした。
「初級魔術師の割りには、なかなか良かったわ!」
アメジストが言った。
「さて、私は馬鹿弟子に引導を渡さないとね。」
アメジストが玲夢を指差して、
「ROOK!」
と叫んだ。
玲夢が体を起こそうとしていたが、玲夢がいる地面の周りに魔法陣がいくつも重なって現れ、強い光を放つと同時に爆発した。
「キャー!」
玲夢は悲鳴をあげてそのまま倒れた。外見的に傷などのダメージが見られなかったが、勇太が出した手枷と足枷が消えてしまっていた。
「ふぅ。」
ルビーが玲夢を指差すと、正方形の魔法陣が6つ現れて玲夢を取り囲み、立方体になった。玲夢は魔法陣の立方体の箱の中に閉じ込められた状態になった。
「『敵の魔術師は生きたまま捕捉する。』今回は成功ね。ありがとう。あなたたちのお陰よ。」
ルビーが勇太たちに笑いかけて言った。