玲夢の正体
アメジストがパチンと指を鳴らした。すると、一瞬で校舎の屋上についた。勇太たちが所属する有機化学研究室のある校舎のようだ。
「見ぃつけた。何か結界っぽいものが張られてたけど全然大したこたなかったわね。」
アメジストが腰に手を当てて言った。視線の先には玲夢が悔しそうな顔で立っていた。その側で海斗が横たわっていた。
「海斗!」
勇太が海斗に駆け寄ろうとした。
「近づかないで!」
玲夢が海斗に手を向けて言った。すると、海斗が横たわっている周りに文字や記号の様なものが描かれた円陣が青白い光を放って現れた。
「これ以上近づくとこの魔法陣をすぐに発動させるわよ!」
玲夢がキッと勇太をにらんだ。勇太はその場で固まってしまった。
「やれるならどうぞ。」
あきが無表情で冷たく言い放った。
「野上さん!」
貴司が叫んだ。勇太も樹理奈も信じられない顔であきを見た。
「あら、あきも分かっていたのね。」
アメジストがニヤリとして言った。
「この魔法陣、不完全じゃない。術はうろ覚えじゃ発動できないって教えたはずよ、雅子。」
勇太たちは理解できないでいると、
「吉村雅子、それがアイツの本名なのよ。ちなみに私の元弟子。やっぱり堕ちてたのね。」
アメジストが玲夢をにらんで、
「昔は地味だったのにえらく派手になったわね。ビックリしたわ。」
と言った。
「あなたこそ、相変わらずね、アメジスト。」
玲夢は海斗に手を向けたまま言った。
「玲夢、松下君をどうするつもりなの?」
樹理奈が聞いた。
「海斗はね。私のものになるのよ。」
玲夢はそう言った途端、樹理奈の方をまっすぐ見てハッとした。
「樹理奈?!何で?!忘却術をかけたはずなのに?!」
と慌てていた。
「雅子。」
ルビーと天然パーマがかったセミロングでピンクのロリータファッションの女が現れた。
『…あの人、見覚えが…』
勇太はルビーと現れた女が誰なのか思い出そうとしていると、
「馨子なの?」
と玲夢が女に言った。
「馨子、まさかjewels入りしてたの?!」
玲夢は驚いた様子だった。馨子と呼ばれた女は頷いた。
「雅子、いえ、リチウム。ここにはjewelsクラスの魔術師が4人いるのよ。諦めなさい。」
ルビーが言った。今日は赤いシャツにスキニージーンズとラフな格好をしている。
「4人?そっか、野上あきも入れてか…」
玲夢は冷静だった。
「絶対、海斗を私のものにするの。樹理奈にとられてたまるもんか。」
玲夢は樹理奈をにらんで言った。
「玲夢…」
樹理奈はもうどうしていいか分からないようだった。
「彼、そういえばあの人に似てるわ。」
馨子と呼ばれた女が横たわっている海斗を見て言った。
「だから余計に固執しているのかも。」
玲夢は馨子をにらんで海斗に向けている手とは反対の手を馨子に向けた。
電気のようなものがバチバチ言いながら玲夢の手から出て馨子に向けて放たれた。
馨子は前に手を出すと馨子の前に大きな魔法陣が現れて玲夢の攻撃を吸い込んだ。
『これが…魔術師同士の戦いなのか…』
勇太は息を飲んで見ていた。
「フラーレンの調べでは海斗はリチウムの元恋人らしいわ。」
ルビーが言うと、
「嘘?!やるじゃん、雅子。」
アメジストが少し悔しそうに言った。