研究室配属2
4限目の講義終了のチャイムが鳴った。
勇太はテキストやノートを鞄に片付けながら横に座っていた海斗に声をかけた。
「今から研究室に行くか?」
「あぁ。」
勇太はふと昼休みのことを思い出した。
正樹が『イケメン君』と呼んでいる松下海斗は勇太が大学に入学して初めて仲良くなった友人で、講義も一緒に受けている。
少し焼けた肌にくっきりした2重、鼻筋はスッと通って整った顔立ちで、どんな服装でもかっこよく着こなしているのでテレビで観るアイドルや俳優よりもずっとずっとカッコいいと勇太は思っている。
『イケメン』なのは容姿だけでなく、高校までサッカーをしていたので運動神経もよく、成績も学年2位と非の打ち所のないイケメンだ。
入学当初から女子の間ではすぐに話題になり、告白してきた女子と次々と付き合ったり別れたりを繰り返していたが、ここ1年程はパッタリとなくなった。明るいブラウンに染めていた髪も今は真っ黒だ。
そんな海斗は今日の昼休みは用事があるからとどこかに消えてしまい、3限目の講義が始まるギリギリに戻ってきたのだ。
「なぁ、海斗。もしかして彼女できたのか?」
海斗はビックリした顔で勇太を見た。
「えっ、な…なんで?」
珍しく海斗が動揺しているのに勇太は少し驚いたが、
「最近、休憩時間にいなくなることがあるし、今日だってほら、昼休みいなかっただろ。しばらく付き合ってる話聞かなかったし、もしかしてって思ったんだけど。」
海斗はいつもの冷静さを取り戻して、
「今はいない。」
と答えた。
勇太は『今は』に少し引っ掛かったがさほど気にしないことにした。
「あっ、やっぱ俺トイレ行ってから行くわ!海斗、先行っといて!」
そう言って勇太は鞄を持って講義室を出て行った。
海斗が動揺したのを見て少しうれしかったのか気分が少し軽くなったように感じた。
『いつも鈍いって思われているんだろうけど、女関係でなんかあるんだろうな。好きな人でもいるのか?まぁいいか。』
後に残された海斗は短くため息ををついて、
「勇太はたまにもの凄く鋭い時があるんだよな。」
と呟いた。少し口元がにやけている。
トイレを済ませ、勇太は配属先の有機化学研究室の前に来た。
扉を2回ノックした。
「失礼します!」
扉を開けて研究室の中に入った。