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エピローグ

卒業式後、有機化学研究室には誰も入ってこなかった。

むしろ、大学では存在すらしてない扱いだった。


そして、勇太たちが大学を卒業して2年が経った。

有機化学研究室の教授室でスーツ姿のクォーツが本や備品を段ボール箱に入れて片付けをしていた。

「やっと終わったわね。」

アメジストが教授室のドアにもたれかかって腕を組んで立っていた。

「あぁ。」

クォーツが段ボール箱に蓋をするときにバンと叩いた。

段ボール箱は一瞬で消えた。

「2年かかったわね。術使えば一瞬だったのに。」

アメジストが言った。

「師匠がこの研究室全体にも色々術をかけていたんだ。それが解けるのを待ってたが解けなかったな。」

「あの世でピンピンしてるんじゃない?だから死んでも解けないとか。」

「あり得るな。」

クォーツが教授室から出ようとアメジストに向かって歩き出した。

「で、出るの?結婚式に。」

アメジストはまだ腕を組んだまま聞いた。

「『河内清太』としてよ。招待されたんでしょ?メー太から。」

クォーツはアメジストの前で黙ったまま立ち止まった。

「メー太も律儀よね。全ての属性魔術を兄貴から教わって師匠に恩を感じてるのね。モリオンとフラーレンも呼ばれてるんでしょ?一緒に行けばイイじゃん。」

「もちろん出席するさ。弟子の頼みだからな。」

クォーツはまっすぐアメジストを見て言った。

「そう。よかった。」

クォーツは歩き出し、アメジストを通りすぎた。

「ねぇ、兄上も自分の気持ちに素直になりなよ。」

アメジストはいつもの高飛車な上から目線の言い方ではなく、声のトーンを少し落として言った。

「ダイヤも分かってたんだよ。兄上の気持ちを。それに向こうもきっと…だから!」

「そういうお前はどうするんだ、小春。」

クォーツは立ち止まってアメジストに背を向けたまま聞いた。

「大学に行こうと思うの。リシアと一緒に。大学生って楽しいんだって。勉強もしなくちゃいけないけど。私も青春してみたいし。実年齢は“おばあちゃん”だけどさ。」

「そうだな。」

「ちょっと!“おばあちゃん”ってとこだけ納得しないでよ!」

「俺もちゃんと決着をつけなくてはな。」

クォーツがアメジストの方に振り返って言った。

「師匠が残したものを片付け終わった。後は俺自身…」

「言ってるそばから来たわよ。ほら。」

研究室の扉が開き、助手が入ってきた。

「クォーツにアメジスト。終わったのですね。ありがとうございました。」

助手は頭を下げた。

「さてっ!私は魔術界に帰るわ。」

そう言ってアメジストは姿を消した。

「文子…俺と…」

クォーツが助手をじっと見て言った。


「フラーレンが義姉になるのか。まぁ、いいか。」

魔術界に戻ったアメジストがボソッと呟いた。

「いたいた、アメジスト。」

Barのドレス姿のラピスラズリがアメジストの後ろから歩いてきた。

「結婚パーティの段取りの打ち合わせしなきゃ。」

「えっ?どっちの?」

アメジストがラピスラズリの方に振り返って聞いた。

「メタモルフォシスとブルーサンドストーンのよ。まだいるの?結婚予定者?」

「こっちの話だから。」

「何となく予想はつくけど。」

「さすがラピス。」

「じゃあそちらも盛大にしなきゃね。まずは、メタモルフォシスたちのは確か1週間後ね。新婚旅行中の夜に魔術界(こっち)でするから。」


『いよいよだな。』

結婚式前夜、勇太はベッドに仰向けに寝転がっていた。

大学を卒業し、七里病院の薬剤部に入職した1年後、勇太は実家を出て一人暮らしを始めた。

就職直後はあきとの関係は良好だったが、慣れてきて仕事が増え、夜勤も入るようになり、あまり会えないことも増えたため、些細なことで破局寸前までいく大喧嘩まで発展した。

しかし、別れる可能性もあってもあきと直接会って話をして仲直りができた。

その時に勇太はあきと今後の人生を共に生きていきたいと思うようになり、あきとの結婚を意識しはじめた。

そして、将来、あきと一緒に住むことを念頭に賃貸マンションを契約し、一人暮らしを始めたのだった。

実家暮らしとは違い、家賃、光熱費はすべて自腹であきとのデート代もあったため、少しずつだが、貯金をした。

魔術界でご飯が食べれるのが幸いだった。

お陰で食費はほとんどかかっていなかった。

そして、結婚指輪を購入し、意を決してレストランでプロポーズした。

あきは涙を流して喜んでくれた。

明日、結婚式をして新婚旅行は北海道で観光しながらおいしいものを食べて、夜は魔術界のパーティに参加してそこでもおいしいものを食べて…

あきが喜んでくれそうな予定だった。

『その後、ここで一緒に暮らすんだ…』

あきとの同居は楽しみでもあり、どう暮らしが変わっていくのか予想がつかない不安もあった。

『それでも…後悔はないんだ…』

勇太は目をつぶった。

ようやく睡魔な襲ってきた。

『人生は魔法陣に似てるってペリドットが言ってたな…俺の魔法陣にまた新たな術式が増えるんだな…まだまだ完成じゃない、完成じゃないからどんどん増やしていかなきゃ…そして、あきの魔法陣にも新しい術式をどんどん増やしてあげよう…』

そう思いながら勇太はすーっと寝息をたてた。

『魔法陣』本編はこれでおしまいです。

読んでくださった方々、ありがとうございました。

文章を書くのが苦手ながらなんとか書き上げました。

この後、番外編2話(5回分)と続編を載せる予定です。

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