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クリスマスデート

研究室に戻った勇太たちだったが、その後、勉強せずに話だけしていた。

「やっぱり晴明が出てきた夢はただの夢じゃなかったね。」

貴司が勇太に言った。

勇太は頷いた。

「でも、なんで晴明はこのことを俺に伝えたかったんだろう…」

「トパーズとルチルのことを知っておく必要があるってことなのかなぁ?」

樹理奈も首を傾げていた。

「そうかも。まだ何かが終わってないのね。」

あきが言った。結局、晴明の意図が分からず仕舞いだったので、みな解散して帰ることになった。

「国試の勉強に集中させて欲しいよ。」

あきとの帰り道に勇太が呟いた。

「ほんと、そうよね。帰ったら頑張らなくちゃ。」

『いやいや、あきは余裕だけど俺が…』

勇太はそう思っていたが、口にはしなかった。


「へぇ、安倍晴明が出てきたんだ。」

あきと別れて電車に乗った勇太をガーネットが遠くから見ていた。

『あれ、今、踏切の近くにガーネットがいたような…』

動く電車の中でワインレッドの装束姿のガーネットを一瞬だけ見えた。

『ダメだ!集中しなくては!勉強と…そうだ!クリスマスもあるんだ…』

勇太は人間界の日常に戻そうと思っていた。

「魔術界にずっと関わらせる気なのかしら、安倍晴明…いや、ダイヤが。」

ガーネットはそう呟いて姿を消した。


クリスマスイブの日。

勇太とあきはランチでフライドチキンを食べて、カフェでゆっくりコーヒーとデザートのケーキを楽しんでいた。

「なんかこう、ゆっくりできるなんて久々だな。」

勇太は腕を伸ばしながら言った。

「本当に。」

あきは微笑みながら紅茶を飲んでいた。

食べ終わって2人は手を繋いで歩き出した。

勇太はあきの手が温かく感じた。

「ねぇ、中島君。行きたい所あるんだけど。」

「ん?どこ?」

「こっち!」

あきは勇太の手を引っ張って歩きだした。

人混みの繁華街の中のゲーセンだった。

『あき、ゲーセンに行ったことなかったのか…?』

勇太の疑問そっちのけであきはゲーセンの奥に入っていった。

「あったあった!並ばなきゃいけないけど。」

「あぁ…プリクラね。」

「実は中島君と2人で撮ってみたかったの。私たちって中高の時からのプリクラ世代じゃん。」

あきは少し照れながら言った。

この日はクリスマスイブ。

5組のカップルたちもプリクラを撮るために並んでいた。

2人も手を繋いだまま並んだ。プリクラの機械は5台あったのであまり待たなくてすみそうだと勇太は思った。

前のカップルは人目を憚らずイチャイチャしていた。

その前のカップルが機械に入っていくのを見届けた後、あきがボソッと、

「あのカップル、すぐに別れるよ。」

と言った。

「えぇ?!」

勇太はあきが突然そんなことを言い出して驚いた。

「勘だけどね。」

あきはイタズラっぽく笑った。

『…あきも女だな。』

勇太はそう思いながらあきに合わせて笑った。

機械が空き、勇太たちの番がまわってきた。

「お金いくら?」

勇太は財布から硬貨を出そうとポケットに手をやる前にあきが機械にお金を入れていた。

「あっ、ありがとう。後で半分出すから。」

勇太の言葉を聞いているのか分からないまま、あきはタッチパネルで操作し始めた。

「よし、これでピースしよ。」

あきの言葉に2人はカメラに向かってピースした。

「えーっと次は…ちょっとしゃがんで。」

勇太は言われた通り少ししゃがむとあきがぎゅっと抱きついてきた。

パシャッ

あきに抱きつかれて驚いている勇太の横顔を撮られてしまった。

勇太はイヤな気持ちにはならなかった。

勇太はあきの腰に手をまわし、抱きしめた。

『…バカップルみたいだ。』

自分でもおかしかったが、2人はそのままキスをした。

パシャッ


「これ、他の人に見せれないね。」

「うん…」

ゲーセンを出て歩いている勇太とあきの手に先程撮ったプリクラがあった。

2人でカメラに向かってピースしているのが1ショットあるだけで、他は勇太にとって人には見せることのできない恥ずかしいものだった。

『なんでこんなの撮ってしまったんだ…』

勇太の心は少しだけ後悔があったが、あきと抱きしめあえた満足感の方が大きかった。

ディナーは中華料理店に行った。

勇太からあきに赤色の手袋をプレゼントした。

あきからのプレゼントは手編みの紺色のマフラーだった。

そして、食後はキレイなイルミネーションを見てまたキスをしてあきと別れた。

『クリスマスらしいデートって感じじゃなかったけど…』

帰りの電車で勇太はポケットからプリクラを出してまた見た。

『まぁ、こんなデートもありかな。』

他の乗客に見られまいとすぐにプリクラをポケットに入れた。

勇太の口元は少しニヤついていた。

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