もう1人の式神
「ごめんなさい。立ち聞きしていて。」
ラピスラズリがドリンクを配りながら言った。
「いいさ。だからここを選んだんだから。」
モリオンが言った。
「じゃあ、検討はついてるのね。」
ラピスラズリがモリオンに聞いた。
「この前の戦いでな。」
モリオンが運ばれてきたウーロン茶を飲みながら言った。
「ルチルクォーツだな。」
「えぇ。」
5人は驚いていた。
「ルチルって…jewelsで金を操れるっていう…」
貴司はメモを手に言った。
「そう。ダイヤは金属の力を奪われる前に金を操る力だけ創ったばかりの魔術界に保管していたらしいの。モンドに力を奪われた後にルチルを創ったの。そして、ルチルには魔術界の金銭を任した。だから、ルチルはほとんど姿を現さない。用事なある時は式神をよこしてくる。それが、ダイヤの命令でもあるから。金の力をモンドに奪われないようにするため。それを誤魔化すためにルチルの『銭ゲバ』の伝説を作ったの。」
ラピスラズリが言った。
「属性に特化した式神の特徴は主の命令に忠実なことだ。トパーズとルチルはまさにそうだ。亡き主であるダイヤとタイガーアイからの命令に未だに縛られているからな。」
モリオンが言った。
「えっ、ルチルクォーツも主はダイヤとタイガーアイなのか?」
海斗が聞いた。
「ルチルはダイヤが主でタイガーアイが師匠なのよね。」
ラピスラズリが言った。
「ルチルは…私も本人にあったことがないわ。それがダイヤの命令。」
「そういえば、教授もルチルは自分にも式神をよこしてくるって言ってた…」
貴司がぽつりと呟いた。
「それもダイヤからの命令なのかもね。」
あきが言った。
「ルチルクォーツ本人に会えるのかな…トパーズとは松下君だけが会ってるのよね?連絡取れる?」
樹理奈が海斗に聞いた。
「トパーズねぇ…ムリだな。連絡先が分からない。メールとかケータイとは縁がなさそうだったし。」
「そうでしょうね。」
海斗の言葉にラピスラズリは頷いていた。
勇太は黙って考えていた。
『晴明はこのことを俺に伝えようとした…でも、なんで?…それに『それだけではない』とも言っていた…まだあるのか、俺達の知らない魔術界のことが…』
「私も知ってることは大抵クォーツたちも知ってるわ。彼らに聞くのも良いかも。」
そう言ってラピスラズリは部屋から出ていった。
「以上だ。知りたいことが分かったか?」
モリオンが聞いた。
「うん。ありがとう、モリオン。」
貴司がお礼を言った。
そしてしばらく国家試験の話をした後、5人はBarを出た。
モリオンもその後、Barを出て研究室へ戻って行った。
「何で突然トパーズとルチルの話が出てきたの?」
Barの厨房の片隅から勇太たちがいる部屋から出てきて料理の準備をしているラピスラズリにアメジストが聞いた。
「さぁ…」
ラピスラズリは他の部屋へ料理を運ぼうとお皿を持ち上げた。
「あの子たちに誤魔化しや嘘は通用しないわ。賢いし、疑問をちゃんと解決させようとする…」
ラピスラズリは厨房を出ようとしながら言った。
「トパーズとルチルのことを気づいたきっかけって何?」
アメジストが聞いたが、ラピスラズリは分からないと首を横に振った。そして、料理をお客さんに運んでいった。